環境共生型都市デザインの世界
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もうひとつの自然観 ――― 過剰なロマンシズムを排して

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写真15 花に囲まれたベンチ
 さきほどの季節感の美意識は、 ややもするとこのような場所のように、 ロマンチックな美しさで終わりがちです。 そこには人間が人工的に選んだ装飾としての花があります。 それは美しいのですが、 大地の自然が生み出すドラマや発見とは無縁の表面的な自然表現ではないでしょうか。 このような過剰なロマンチシズムとは異なるもう一つの自然観として、 人間と自然とのかかわりというものを、 以下のスライドで見ていきたいと思います。

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写真16 ある住宅地開発プロジェクト
 これは鳴海先生や江川さん達と一緒に計画した関西のある住宅地開発のプロジェクトです。 まったく緑もなく禿げ山だった平地に水路をつくり、 住宅街区の公園や街路に流し、 さらに河川を作るというプロジェクトです。

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写真17 天水を生かして川をつくりだすためのシステム
 まず、 水をつくるためにはどうするかから出発しました。 それは天水を生かすことです。 小学校のグランド下に砕石貯留槽を作り、 グランドに降った雨を全部貯め、 それを一定流量として地下に流していきます。 それを表面に排出させながら、 天水を生かして川をつくりだしていくという、 土木や生態系を考慮した総合的な技術で住宅街区の基盤をつくっていくことを提案したものです。

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写真18 天水を生かしたまちづくり
 この住宅地開発は天水を生かしたまちづくりという計画例ですが、 近代の都市づくりやまちづくりにおいても、 このような目に見えない技術力を生かしながら、 自然を軸としたまちにもう一度戻していこうという努力はさまざまになされています。

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写真19 石畳からにじみ出す花(イメージ)

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写真20 石畳からにじみ出す花(そのための仕組み)
 写真19、 20はこの街での街区公園計画です。 石畳からにじみ出すタンポポやレンゲをいれることで、 先の写真のような花に囲まれたベンチのロマンチックさではなく、 目に見えない大地の自然感を発見できる空間をつくっていくことに力を入れたものです。

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写真21 ポツダム広場地区
 写真21はベルリンのポツダム広場地区の再開発ですが、 そこでは先にお見せした天水を生かした都市づくりが積極的に行われています。 ビルの屋上からの天水を集め、 この池に流しているのですが、 それを浄化するためにヨシ群落を密生させています。

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写真22 天水を生かすためのシステム(ポツダム広場地区)
 写真22のような形で天水を生かしています。 天水をピットに入れ、 湧き出させて川に流しているのです。

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写真23 曝気により浄化するための葦系の植物
 この足もとから水が湧き出しています。 それがこのヨシの根を通り、 生物浄化されて池に流れていきます。 生物曝気を生かしながら、 環境を維持していくということを積極的に都市の住民に見せているところがいかにもドイツらしいです。

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写真24 金魚
 池には金魚がたくさんいるのですが、 彼らが夏のにボウフラを食べてくれます。 それがひとつの生物生態系を、 この池のなかにつくっていこうという目印のようなものになっています。

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写真25 ポツダム広場のライトポール
 写真25はポツダム広場のライトポールです。 日中ここで太陽光を集め、 夜に太陽電池による発光体となります。 地下に駐車場や地下鉄の入口があるのですが、 地下までこの柱が貫いています。 できるだけ太陽光のエネルギーを活用していこうという姿勢がよくわかります。

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