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写真6は事例集で紹介した京都市の「観月橋団地」です。 40年くらい前にできました。 交通量が多い国道24号線に面しています。 手前の道路がその国道で、 なかなかシャッターチャンスがないくらい車が行き来しています。 右側に中途半端な植え込みがありますが、 ここを平らに均して歩道を作りました。 40年前ですから、 団地内にはそれほど車が入ってこないという前提でした。 リニューアルしたのは18年位前で、 当時けっこう車が入り込んできていましたので、 歩道がつけることになり、 あわせて並木を植える計画をたてました。
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右側が歩道に変わりました。 道の両側に、 低予算にあわせ、 1本3万〜4万円の直径7cmくらいのケヤキを7.5m間隔で植えています。
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それから15年くらい経って、 写真のような立派な樹になりました。 よく管理者がこれを切らなかったな、 落ち葉はどうするのかと、 設計した私の方が心配するぐらいです。 この団地内道路は、 国道を通るトラックが方向転換するのに進入したり、 国道工事の車が入ってきたりと、 生活空間の中に大きな交通の流れが入ってくる大変なところです。 それに対してこういう緑があることが役に立っているのか、 そういう意味で切られずに残っているのかと思います。
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ケヤキを植えた当初の風景です。
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樹が5階くらいの高さに茂ってきたところです。 こういった緑と共生するとなると、 いろいろご迷惑をかけているかもしれません。
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秋の紅葉のシーンです。 こういった生命の営みに、 愛着を感じてもらえればと思います。
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夏には涼しい「緑のトンネル」になっています。
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設計した時には予想しなかったことですが、 ケヤキはもともと幹が7cmくらいの直径だったのが、 こんなに太くなってきて、 それに従い根も太くなってきました。 コンクリートの舗装が5cmくらい持ち上がっています。 これは根が水を求めて四方八方にのび、 その根自体が太くなって“くさび”のように舗装を持ち上げているのです。 私の未熟なところでもありますが、 樹の生命力を考えていなかったということです。 都市の中でもこれだけの樹が育つのは、 土地がそれだけの生命や物質の循環を支える潜在力を持っているということであり、 樹を植える事によって、 それを顕在化したわけです。
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団地の中でちょっとした趣のある眺めです。 集会所の閉鎖的な和風の庭でしたが、 オープンな広場にして道につなげてました。 真中に「月」をモチーフにした石を置いて「観月石」と名づけています。
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写真016は京都市のメインストリート「御池通」で、 つい最近シンボルロード事業による改修が終わったところです。 昔は車道が2車線で、 脇に1本づつ大八車を通す側道がありました。 この通りは、 戦争の時に建物を疎開させて広げたものです。 ケヤキ2列、 プラタナス2列、 合計4列の並木がありました。 最近の改修によって車線が3車線に増え、 並木が2列に減りました。
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写真017が工事未着工部分のケヤキ並木です。 京都の町は結構、 水に関係する名前のついた地名が多いのですが、 御池通の「御池」とは、 平安時代の「神泉苑」という庭園の池からきた名前なのです。 そうした水のイメージをケヤキはよく伝えていると思います。 地中の水を吸い取って大気中の炭素と結びついて、 細い幹がこれほど大きくなるのです。 大地と大気の物質循環がこういう風景になっており、 この樹の存在は水の存在を示しているわけです。 そういう風に、 まち中の自然を味わったり、 共生していく方法を考えたいわけですが、 なかなか難しいのが現実です。
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写真018は祇園祭ですが、 先ほどの御池シンボルロードを抜けて、 ケヤキが豊かに残っている部分に山鉾が帰ってきます。 町屋の町並みから出発してビルの谷間を抜けて、 最後にこの森の中に帰って来るというドラマを持った祭りです。 私にとっては毎日通勤する「ケ」の空間なのですが、 こうした祭りの日には「ハレ」の空間になっています。
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