環境共生型都市デザインの世界
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エコトイレ

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写真1 地球デザインスクールの事務室兼宿泊所である廃校となった学校の入口
 「地球デザインスクール」といって京都府が中心となって丹後でいろいろな実験的試みをしている場があります。 京都近隣の大学や企業がパートナーとなって行動しているもので、 私は宝塚造形大の学生たちと一緒に数年前に関わりました。

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写真2 エコトイレの構成・概念図
 これがトイレの構成です。 これは電気も水道も使わない、 その場で完結するトイレです。 屋根を大きく広げて雨を受け、 それをコンクリートのヒューム管を利用したタンクに貯留し、 雨水を使った水洗トイレを考えています。 汚水は1次浄化した後、 土壌の中を通して微生物によって浄化し、 最終的には川に放流できる水にしようというものです。

 今日のテキストの中に少しわかりづらい表現ですが、 「現在見受けられる様々なエコロジーへの試みも、 エコロジー自体が目的になってしまっているのではと思えるものもある」ということを書いています。 私がよく感ずるのは、 エコロジカルであること自体が目的となり、 エコロジカルであればいいということになっている場合が多々あるように思えるということです。 そのようにエコロジカルに見えることではなく、 できるだけ普通に使え、 それが仕組みとしてエコロジカルであるというものを作れないのかと思います。 それは、 一番初めに言いましたように多少苦労してもいいとか、 見栄えはどうでもいいという話ではないということです。

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写真3 土壌による浄化のための土づくり
 土壌による浄化の仕組みは、 簡単に言いますと土の中に汚水を通して、 微生物に浄化してもらおうというものです。 そのために微生物が住みやすい土壌を作っています。 この場所は土が粘土質だったため、 土づくりから始めなければなりませんでした。 現場の土5に真砂土2、 パーライトを0.2、 堆肥を0.5という割合で加えています。

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写真4 土壌浄化槽
 写真4は土壌浄化の為に作った浄化槽です。 一番下に排水のためのトレンチを設けており、 これでほぼ2m×6mです。 この大きさだと、 住宅であれば10人分くらいの浄化ができます。

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写真5 排水用トレンチに使うスティール空き缶の穴あけ作業
 排水用のトレンチを空き缶で作っています。 スチールの空き缶を使うと、 排水中のリンが吸収されます。 空き缶に穴を空け、 それを10個くらいまとめて順番に並べていくことで、 空き缶の再利用にもなっています。

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写真6 空き缶を並べるところを段ボールで作る
 空き缶を並べるところをダンボールで作っている写真です。 ブルーシートを張ってそこに空き缶を並べていきます。

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写真7 空き缶を並べているところ
 向こうにトイレがあり、 1次浄化槽を通った排水がここへ流れてきます。 なぜこのような溝を作っているのかというと、 毛細管現象によって排水を上にあげていくためです。 微生物は地表面に多く、 下の方にいくにしたがって少なくなります。 地表から1mも下になると微生物はほとんどいません。 上の方にいる微生物を有効に活かそうということです。

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写真8 並べられた空き缶
 空き缶を並べていき、 その上を土で覆います。

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写真9 コンクリート・ヒューム管による貯水タンク
 写真9はトイレブースの後ろにつける水を貯めるタンクで、 コンクリートのヒューム管をそのまま使っています。 この時に考えたのは全部普通の工業製品で作ってしまおうということです。 ヒューム管を3本つなげると、 おおよそ750リットル入ります。 1回に10リッターずつ流すとして、 75回分くらいは使えるという計算です。

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写真10 トイレブース壁面の布張り
 トイレブースです。 円い形のフレームにテント地を使っています。

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写真11 トイレの屋根のフレーム
 トイレの屋根を形作るフレームです。 一番手前の部分に写っているベースプレートは、 このようにただ地面に置いて上から留めるだけです。

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写真12 屋根(集水装置を兼ねる)
 屋根をつけているところです。 屋根自体が水を溜めるために使われます。 このようにこのトイレの構成は屋根は三角、 壁面は円、 床は四角で出来ています。

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写真13 出来上がったエコトイレ
 出来上がったところです。 屋根は半透明なシートを使っているので、 ほとんど外にいるのと同じ感覚です。 屋外のトイレというと暗くて狭いというイメージがありますが、 ここでは全く逆の広くて明るいトイレを目指そうとしました。

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写真14 トイレ入口
 トイレの入り口です。 入り口にはカーテンだけをつけるようにして、 らせん状に入っていくと中にトイレがあるという形にしています。

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写真15 設置された便器
 普通の便器を置いています。 このようなところでこういった便器を使う経験はほとんどないと思います。 上を見ると空が見えて、 ほとんど屋外でトイレを使っているという感じになります。

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写真16 トイレから上(外)を見る
 写真016は座って上を見上げたところです。 隙間からは外が見え、 屋根からは光が入ってくる形になっています。

 このときはうっかりしていて現場で少し焦ったのですが、 太陽の光を受けて座っている姿がシルエットで外から見えるのではないかということでした。 幸い周りの山が低い位置からの太陽光をカットしてくれ、 そういうことにはならなかったのでほっとしました。

 最初に、 エコトイレは電気も水道も使わないということをお話しましたが、 最終的に電気を使わざるを得ませんでした。 なぜかというと、 いま基準法上、 電気を使わないで浄化するトイレは可能で、 それを設置するかどうかは自治体の選択に任されています。 ですが自治体側では電気を使わない浄化のトイレを認めていないからです。 技術的には電気なしで土壌浄化と嫌気型の浄化槽の組み合わせで十分な性能を上げられますが、 実際には作ることができません。 このトイレの時も本来は電気と水を使わないということで始めたのですが、 結局電気を使うことになりました。

 本来ならば土壌浄化によってリンや窒素が有効に除去されます。 しかしいま、 土壌浄化がどのように使われているかというと、 普通に浄化した後に、 水をよりクリーンにするために使われています。 リンや窒素が取り除かれるということは、 現在問題となっている河川等の水質の富栄養化を防ぐことになりますが、 こういった問題もあり、 なかなか定着していかないという現実があります。

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