井口:
第2セッションは、 大阪大学の後藤忍先生、 京都大学の小林正美先生、 都市問題研究所の藤田邦昭先生、 関西学院大学の加藤晃規先生の4人とフロアからの参加で討議が行われました。 その結果、 概ねみなさんの目指す方向性が見えてきたように思います。
まず今日のテーマである環境共生型都市についてですが、 環境共生の時代にストック型都市はひとつの方向として受け止めなければならないということです。 ではストック型都市とは何かということになりますが、 これについては人それぞれの捉え方があり、 大きく分けるとハードのストックとソフトのストックという二つの見方がありました。 ストックというとハードに目を奪われがちなのですが、 今日はむしろハードのストックの背景となる社会的システムとしてのソフトのストックの方がより大きな課題ではないかという意見が多く出てきました。
もうひとつ大きな視点として、 個々の集積である都市を構造的にサステイナブルでありストックに値する存在とするすべきだという意見が出されました。 それを実現するには、 都市をかなりダイナミックに変革していく必要があるのですが、 実現する方向のひとつの目標として「コンパクトシティ」という言葉が出されました。
(1)美しいもの、 良いものを見つけることが出来る感性、 教養であり、 それを磨くことが今必要とされているということ。 ものを作ることの意味や意義をちゃんと見極めることの能力、 つまり作る値打ちがあるのかどうか(あるいは残す値打ちがあるのかどうか)をわかる感性を育てていくことです。 感性のストックと言ってもいいと思います。
(2)都市の中で我々の身近な存在であるコミュニティ・ストックと言ってもいいようなものが2番目にあげられます。 毎日の生活に根ざしたアーバン・コミュニティの持続性も都市のストックであろうという指摘がありました。 「ここに住みたい」「ここがいい」「こんなコミュニティを残したい」という人々の思いを反映させることをやっていかなくてはいけないだろうということです。
(3)3番目にあげられるのはマーケット・ストックです。 特に都心部には経済的な価値のあるストックがたくさんあります。 藤田先生が大阪の道修町を具体的な例としてあげられたのですが、 経済的な価値とは三百年の歴史と文化である、 そのブランドをなぜストックとして生かせないのかというご指摘です。 その文化ストックの上に新しい文化や経済を生み出す方法を考えたいということです。 中心市街地や都心部のマーケット・ストックが都市のストックとして重要であるということです。
この三つのソフト・ストックは環境をモノとして見るのではなく文化として見るのだということでもあり、 都市を文化ストックと見るということが我々のセッションの締めくくりといえるでしょう。
session 2の報告
ハード面から見たストック型都市
ハードのストックについて申し上げると、 都市の中の土木施設や建築物の長寿命化、 あるいは環境共生に対応できるサステイナブルなものにしていくという技術的な解決策はもちろん必要です。 それは個々の建築物や施設について必要だろうし、 そうしたものに作り替えなければいけないものも多々あります。 しかし、 今あるものを壊して作り替えるのではなく、 改造をしながら長寿命化させていく方法も考えられるし、 個々の施設や建物に合わせていろんな技術的アプローチをしていくことがまず大事だろうと思われました。ソフト面から見たストック型都市
ではハード面に対し、 都市におけるソフトストックとは何か。 これについては三つの要素が指摘されました。ストックとフローの割合
しかし、 だからと言って固定的なストックだけで都市が出来るわけではない。 いくら良いものでもじっと置いておくだけでは固まってしまいます。 都市にはそれまでにない新しいもの、 刹那的なものの楽しさもあるのだという意見がフロアから出ました。 ストックとフローが混じり合うのが都市の姿です。 望ましいストックとフローの割合は7:3という具体的な数値目標まででたのですが、 これをどう思うかはみなさんが個々に考えていただきたいと思います。
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