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Session-1

関西大都市圏の環境特性と
「環境域」の概念

大阪市立大学 土井幸平

 

1 関西大都市圏の環境特性

 大阪を中心とする60km圏、 滋賀県南部、 播磨東部、 和歌山市までを含む人口1.700万人圏域を関西大都市圏と呼ぼう。 この関西大都市圏と上海大都市圏、 サンパウロ大都市圏、 この三大都市圏の環境特性の比較は興味深い。 いずれも1.500〜1.700万人規模であるがその立地条件が対照的に異なる。

 上海は世界有数の大河川揚子江のつくる大三角州平野の下流域にある。 4〜500年前は海の下にあった場所が海の上に現れた都市である。 粒子が細かく水を含んだ沖積平野の低平地に大都市圏が形成されている。 都市構造物全体の地盤沈下、 排水不良による水質汚濁、 排気ガスによる大気汚染が深刻である。

 サンパウロは、 大西洋から20キロの近い位置にあるが、 海抜1.200mの高原にある。 川は大西洋に背を向けて内陸に向かいパラグアイ、 アルゼンチンを経て大西洋に至る。 河川の最上流部水源地域に大都市圏が形成されている。 下流への水質汚染、 排気ガスによる大気汚染、 水源地域緑地破壊が深刻である。

 この二者に比べて、 関西は典型的な扇状地地形に大都市圏が形成されている。 玉城哲がかって日本の地形の基本は扇状地であると喝破したあの扇状地である。 扇状地が稲作を育て富を蓄積する根拠地となった。 関西はこの扇状地が多様に分布し、 早くに文明が興隆する要因となった。 扇状地は山から川、 湖、 海に至る山裾の地形であり、 内陸では盆地を形成する。 関西には、 琵琶湖盆地、 京都盆地、 大和盆地、 河内盆地が独自の扇状地世界を作ってきた。 そして下流部に大阪湾扇状地世界がある。 それぞれの盆地世界は山地丘陵によって地形的に分節化されているところに環境特性がある。 分節化された盆地世界は自律的な環境域を形成しつつ、 相互に連携している。

 関西大都市圏は、 大阪湾の水質汚染、 排気ガスによる大気汚染、 ヒートアイランド問題を抱える。 その昔大阪湾をちぬの海と言った。 どんなに豊かな海だったのか。 大阪湾にちぬの海を戻すことが、 関西大都市圏都市環境問題の最大の課題である。


2 「自律環境都市」と「環境域」の概念

 人間の造った都市、 人工物の集積とその活動が、 環境に影響を与え都市の環境を形成する。 20世紀の都市爆発による環境影響が累積して、 地球環境に影響を与えるに至った。 問題の主原因である都市が自律的に問題を解決するべきであり、 それは次のように図式化できる。 この図式で、 「環境域」の概念が重要である。

 

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図 「自律環境都市」の概念
 
 この「環境域」は、 小から大まで多段階に形成される。 水環境を例にとれば、 滋賀県と琵琶湖の水質の関係は一つのモデルである。 県内の集落、 都市、 都市圏、 県域のそれぞれに、 都市活動と環境域の関係が形成され、 小、 中、 大環境域の各段階で水質改善の自律的な努力が行われ、 その集積として琵琶湖の水質がある。 滋賀県と県下市町村が積み重ねてきた環境基本条例、 みずすまし条例などの環境施策体系はこの関係に着眼している。 大阪湾の水質改善に関しては、 関西大都市圏を環境域とする体系的取り組みが必要である。

 この「環境域」概念は、 水環境域のみでなく、

として、 土地利用計画と関係づけられる。

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