左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ

Session-2

御堂筋・道修町から世界へ

都市問題経営研究所 藤田邦昭

道修町−薬種関連産業集積地−の興り

 大阪の『船場』は日本の『商い』の中心地として広く知られている。 船場は、 東西を東横堀、 西横堀、 南北を長堀、 土佐堀で囲まれた地区を指し、 大阪城築城以降、 島之内と共に形成された。

 道修町は北船場に位置し、 本町を中心に広がる繊維関係産業を主とする中〜南船場に対し、 薬種・薬品の町であった。 薬だけでなく、 薬の容器(ガラスビン、 紙箱)、 医療機器等を扱う企業、 病院も多く立地していた。

 道修町に薬種商が集積した契機は、 寛永年間(1624〜1644)に堺の商人小西吉右衛門が薬種屋を開いたこととされている。 そして享保7年(1722)、 道修町薬種中買仲間が株仲間として組織され、 独占的に全国供給を行うようになり、 薬の町として知られるようになった。

 現在も多くの老舗が営業を続けている。 シオノギ、 タケダ、 タナベ、 フジサワ、 大日本等に代表される製薬企業は総数約200社である。

 初期の道修町での商いは中国から輸入される漢薬を扱ったもので、 明治以降は西洋薬の輸入が始まった。 同じ頃国内での製薬が徐々に始まり、 戦争で輸入が途絶するとこれが一気に発達した。 このように300年以上にわたる長い歴史を持つ企業が20社あり、 今もなお日本最大、 世界最大の医薬商品関係集積地である。


町のストックを活かす

 道修町は戦災を免れたことから、 ビルの谷間に江戸時代の名残をとどめる町家が所々残っている。 谷崎文学で言えば『春琴抄』の舞台も道修町である。 緒方洪庵の適塾は一般にも公開されているが、 かつては懐徳堂、 泊園書院、 梅花社、 広瀬旭荘の家塾なども周辺にあり(幾つかは石碑、 碑文のみが残されている)、 多くの学者を輩出している。 また、 緒方洪庵一族が経営する緒方病院は大阪で最も古い私立総合病院で、 細菌学の研究から出発している。 それに次ぐ歴史のある高安病院は道修町にあった。 また湯川秀樹の一族による湯川病院(現在、 湯川胃腸病院として桃谷で開業)も近くの伏見町にあった。

 人物で言えば、 山本為三郎、 小西来山、 上田秋成、 青木月斗、 高安六郎、 高安三郎、 高安やす子、 茅野雅子・・・と道修町に関わりを持つ著名人も多い。

 また、 大阪薬学専門学校(現在の大阪大学薬学部)、 帝国女子薬学専門学校(現在の大阪薬科大学)といった薬学教育機関もここに設立されている。

 フランスのストラスブール(人口約25万人)は、 250年の歴史を持つパスツール研究所(ストラスブール大学の付属機関)があることが大きな要因となって、 多くの研究機関やEU議会が設置されている。 また世界100カ国からの留学生がこのストラスブール大学で学んでいる。

 道修町の今後を考えたとき、 町の持つストックをどれだけ活用できるかが大きな要素となってくる。 長い歴史と最先端の製薬関連技術を併せ持つ町として、 特色ある展開を検討し、 21世紀の国際的なまちづくりを目指したい。


具体的なまちづくりの方向

画像rf1-1
道修町の家並み地図
 医薬品関係を機軸としたまちづくりが基本になると考えられるが、 現在のように単に製薬企業、 その関連企業が集約しているというだけでなく、 それらがもっと繋がりを持つことでパワーを増大し、 世界へ向けて情報発信できるような体系を整備していきたい。

 例えば、 ストラスブールのように医薬関連の国内・国際会議等に対応できるコンベンション施設の建設。 将来の医薬業界を担う研究者を育成するためにも、 かつて立地していた薬科大学、 薬学部、 あるいはその一部機関の呼び戻し。 また、 実態は十分把握できていないが、 地区に多く存在していると言われているベンチャー企業(個人レベルでの新薬開発研究等)に対するSOHO支援施設……等々の導入・誘致が考えられる。

 これら道修町の発展、 活性化に繋がると考えられる施設を、 御堂筋周辺に点在する公共施設跡地等の活用により導入を図っていくことができないだろうか。

 更に、 中之島の『国際会議場』、 茨木・箕面地区のバイオ研究を目指す『国際文化公園都市』計画、 神戸市の『医療産業都市構想』等とも関連を持ち、 世界の情報発信・受信基地を目指す。

 一方で、 文学や史跡に見られる道修町の歴史・文化を伝えるための建築物保存やそれらを利用した文学館の建設等も考えられる。


まちづくりのための組織づくり

 このようなまちづくりを実現するため、 まず「まちづくり委員会」等を発足し、 より具体的な協議を進めていく必要がある。

左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

フォーラムトップページへ
JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ