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Seattle における実践例

Vision 2000 / Growth Management Program/Urban Village/TOD

KOBAYASHI & ASSOCIATES. INC.

小林紘一

 海、 山、 湖と豊かな自然に囲まれた都市シアトルも、 環境共生型の地域発展という面では多くの課題を抱えている。 サウンド・トランジット・ライトレイルとレニエビスタ住宅地再開発の二つのプロジェクトは、 この地域が直面している課題に対して、 市及び郡が過去十数年間に行ってきた努力を反映しているといえる。

 急激な都市市街地の拡張と環境破壊をコントロールし、 健全な地域発展を実現するために、 二つの施策が検討、 計画された。 一つは、 シアトル周辺郡の広域行政体による「ビジョン2020」という成長管理計画への提案、 もう一つはそれを受けてシアトル市によって1994年にまとめられ、 近年採択されたシアトル市総合計画である。

 前者の骨組みになっているのは、 既存市街地のいくつかを選択し、 今後の局地的、 集約的かつ高密度な発展促進地域のターゲットとし、 それらを公共交通システムで結ぶことにより、 スプロールを防止するというものである。 後者は、 アーバンビレッジという名のもと高密度のコミュニティーをシアトル市内に既存市街地の核として配置し、 それを交通システムで結ぶというものである。

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サウンド・トランジット交通マップ
 サウンド・トランジット・プロジェクトは、 上の二つの提案を受けて、 計画が始められた。 広域交通行政体のサウンド・トランジットは、 バス、 列車、 ライトレイルによって、 シアトル市内とタコマ、 エベレットを含む周辺地域を結ぶ交通網を設立しようとしている。 市や郡といった行政地域をまたいだ公共交通システムを持たなかったこの地域にとって、 サウンド・トランジットの交通計画は、 脱車両型社会の実現、 環境汚染の緩和、 スプロールの緩和を達成に向けての大きな役割を担っている。 市内の各地域を結ぶ、 ライトレイルの計画は、 先に挙げた市の総合計画を満たすためにも、 単なる交通システムのデザインではなくコミュニティープランの要素を持っているため、 交通局、 市、 地域住民が一体となった、 Transportation Oriented Design (TOD) が進められている。

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レニエビスタ住宅地再開発プラン
 TODでは、 新交通システムの駅を中心に、 高密度、 複合土地利用、 歩行者優先型の地域社会を作ることが主旨となっている。 レニエビスタ住宅地再開発は既存の低所得者住宅の新規建て替え、 拡張計画であるが、 計画地が新駅半径1/4マイルの距離に位置していることから、 上に挙げた社会的要求を満たしたデザインがプロジェクトの最優先課題となっている。 またこの住宅計画は、 市の慢性的な住宅不足を補充する要求を担っているが、 これは、 スプロールを食い止め、 地域全体の効率の良い土地利用と環境保全を実現するためにも、 シアトル市自身が増加人口を収容するスペースを確保する必要に迫られているという実情を反映している。 従って、 高密度な地域社会づくりが今後のシアトルの成長と発展の鍵となっているといえるだろう。

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