21世紀の都市計画の課題

• 都市への人口集中の沈静化（都市化社会から都市型社会への転換）
  
• 交通・通信網整備とモータリゼーションの進展による産業立地制約要因の消失
  
• 所得水準の上昇による質の高い住まい方への要求
  
• 身近なまちづくりへの住民の主体的参画
  
• 環境保全意識の高揚に対応した自然的環境や景観保全及び地球温暖化の防止
  

(1)《都市像》目指すべき都市像の明確化

• 現況の問題点や今後の改革の方向を明らかにしながら、 目指すべき都市像を地域社会の合意として明確化し、 具体の都市計画で実現していくという分かりやすい都市計画制度とする。
  

(2)《線引き制度・開発許可制度》

都市計画の根幹をなす線引き制度及び開発許可制度の都市型社会に対応した見直し

• 線引き、 開発許可制度を、 都市型社会に対応し、 地域の実情に応じて必要かつ合理的な規制が柔軟に行われるよう、 制度構成を見直す。
  

(3)《既成市街地》既成市街地の土地の有効高度利用

• 既成市街地での都市施設の立体的整備、 容積率の柔軟な適用、 地区計画の策定促進等による土地の有効高度利用を促進する。
  

(4)《環境保全》自然的環境や景観の保全・創出など質の高い都市環境の確保

• 未線引き都市計画区域の用途地域指定外区域における、 保全すべき自然的環境や景観を守るような土地利用規制のあり方を総合的の見直す。
  

(5)《都市計画区域外》都市計画区域外における開発行為及び建築行為の増加への対応

• 都市計画区域外における大規模な開発行為や建築行為の集積を都市の萌芽と捉え、 その段階から土地利用規制を行う。
  

(6)《都計決定システム》都市計画決定における透明性の確保

• 地方分権一括法により都市計画決定が自治事務とされたことから、 都市計画決定手続の透明性確保、 国民の権利保護の観点から地域の実情に応じた柔軟な手続とする。
  

1. 都市計画マスタープランの充実

(1)《整開保》「整備、 開発又は保全の方針」の充実

• 整開保を拡充し、 線引き都市計画区域以外にも対象を広げるとともに、 マスタープランとしての位置づけを法律上明確にして機能を高める。
  

(2)《市町都市マス》市町マスタープランの策定促進

• 市町都市マスは、 都市計画への住民参加を促進する契機として効果的に運用されているので、 基本的枠組みを維持し、 引き続き策定及び事後点検を促進する。
  

2. 線引き制度及び開発許可制度の地域の実情に応じた柔軟性の確保

(1)《線引き制度》都道府県の判断による線引き制度の適用

• 線引きの要否について、 県が地域の実情を踏まえて判断する。 ただし、 大都市地域では線引きを義務づける。
  
• 非線引きとした都市計画区域は、 別途区域特性に応じた土地利用規制のあり方を整理する。
  

(2)《調整区域》市街化調整区域内における開発許可の立地基準の合理化

• 建築物の立地が相当進んでいる区域について、 調整区域における住宅等の立地を許容する等、 一部規制を緩和する。
  
• 線引き以前の既存宅地の確認が困難となっていることから、 既存宅地の特例の規制の合理化を図る。
  
• 第34条10号ロによる調整区域の開発許可を、 一定の区域、 類型を定めて定型的な許可を認める。
  

(3)《開発許可》開発許可の技術基準への地域性の反映

• 宅地としての最低水準を確保するための技術基準の上乗せや緩和の必要性が高まっており、 地域の実情により基準を変更する場合にその内容については地方公共団体の意向をふまえつつ法律上一定の限定をするべきである。
  
• ミニ開発防止のための最低敷地規模に関する規制は、 地域の実情を反映して付加する。
  

3. 既成市街地再整備のための新たな制度の導入

(1)《立体都計》都市施設の立体的整備

• 都市施設に関する都市計画で、 施設整備の立体的範囲を定められることとし、 第53条の建築制限を緩和することにより、 立体的複合的な施設整備を促進する。 なお、 公物管理法に基づく規制を満たすことについて留意する。
  

(2)《特例容積率適用区域》複数建築物の容積率に係る特例の創設

• 基盤施設が十分に整備されている区域では、 都市計画で詳細に容積率を定めず、 建築行為の自由度を生かし、 未利用の容積を物理的に離れた他の敷地で有効に活用し、 地域全体として土地の高度利用を図る。
  
• 容積率の有効活用を想定していない道路、 公園等は未利用容積とは考えない。
  

(3)《地区計画》地区計画制度の改善

• 市街化区域内では限定なくどこでも定められることとする。
  
• 非線引き都市計画区域で策定できる範囲を法令上明確化する。
  
• 地権者等が市町に積極的に地区計画等の案を申し出る際の要件や時期等を条例で定め、 早い段階から地権者等の参画を可能とする。
  

4. 自然的環境や景観などの都市環境の保全のための制度の充実

(1)《風致地区》風致地区による地域の実情に応じたきめ細かな規制

• 小規模なものについては、 都市計画の決定権限及び規制内容を定める条例制定権限を市町に委譲し、 地域の実情に応じてきめ細かく規制を行う。
  
• 風致地区毎に風致地区の維持に関する基本方針を策定し、 それに応じて許可基準を柔軟に設定する。
  

(2)《特定用途制限地域（仮称）》非線引き都市計画区域のうち用途地域が定められていない区域における特定の用途の建築物の規制の導入

• 非線引き都市計画区域で、 用途地域が定められていない区域において、 立地が望ましくない用途、 規模の建築物を特定し、 その立地を制限する土地利用規制を導入する。
  

(3)《用途地域外の容積建ぺい強化》用途地域が定められていない区域における容積率、 建ぺい率規制の見直し

• 用途地域が定められていない区域における容積、 建ぺいを見直し、 容積50、 建ぺい30を下限とする厳しい規制もメニューとして追加する。
  

(4)《廃棄物処理施設等》廃棄物の処理施設や処分場の積極的な都市計画決定

• 公益性の高い廃棄物処理施設は、 廃棄物処理行政と連携をとり、 広域的観点から都道府県が主体となって都市計画決定を行い整備を進める。
  

(5)《緑地環境整備》自然的環境や景観など都市環境の保全のための総合的取組

• 都市の自然的環境や田園景観、 美しい街並み等の維持を図るため、 緑地等の保全に関する諸制度の活用、 開発許可基準への上乗せなどを積極的かつ総合的に運用する。
  
• 将来的には財源措置や税制のあり方を含めた総合的な方策を講じる。
  

5. 都市計画区域外における開発行為及び建築行為に対する規制の創設

(1)《準都市計画区域》準都市計画区域制度（仮称）の創設

• 都市計画区域外で、 開発行為や建築行為が集積し、 交通渋滞や無秩序な用途混在の問題が起こる地域を都市の萌芽ととらえ、 市町が機動的に都市計画区域に準ずるような区域を指定し、 必要な土地利用規制を行う。
  
• 都市施設の整備や市街地開発事業の実施を行う意思がない場合は、 都市計画区域の拡大は適切ではない。
  

(2)《都市計画規制の及ばない地域》都市計画区域及び準都市計画区域外における開発許可制度の適用

• 都市計画区域及び準都市計画区域外での1ha以上程度の大規模開発行為は、 知事の許可により宅地に関する最低水準を担保する。
  

6.都市計画の決定システムの合理化等

(1)《都計理由》都市計画決定の際の理由書の縦覧

• 都市計画決定権者の説明責任の遂行と、 住民との合意形成のため、 都市計画決定図書と併せて都市計画を定める理由を記載した書面を縦覧する。
  

(2)《都計基準》都市計画に係る基準の充実

• 都市計画決定の基準について、 地方公共団体の自主性を阻害しない範囲で充実を図り、 制度運用上必要不可欠な基本的考え方を示すだけでなく、 全国共通にある社会的課題とそれに対する国としての考え方についても積極的に提供する。
  

(3)《案の作成》都市計画の案の作成に係る都道府県と市町村の役割分担の明確化

• 都市計画の案の作成に係る県、 市町の役割分担を法律上明確化する。
  
• 県が案を作成する場合、 県は関係市町に必要な資料の提供を求めることができ、 市町は県に決定に係る案を申し出ることができる。
  

(4)《都計手続の自由度》都市計画決定手続と条例との関係の明確化

• 住民参加や審議会審査は条例により簡素化できない。 一方、 公聴会の開催等住民の意見反映措置を加重的に行う条例の制定はあり得る。
  
• 都市計画の透明性向上のため、 都市計画手続について県は市町が法律の規定に違反しない限り、 条例で必要な規定を定めることができる旨を明記する。
  

(5)《地区計画》地区計画等の案に係る条例に基づく地権者等からの申し出 (III3(3)再掲)

• 地権者等が市町に積極的に地区計画等の案を申し出る際の要件や時期等を条例で定め、 早い段階から地権者等の参画を可能とする。
  

(6)《専門家活用》都市計画の執行体制の充実と専門家の有効な活用のための仕組みの構築

• 都市計画の執行体制の充実を図るとともに、 県・市町の協力体制、 国からの情報提供、 専門家の知識・経験の活用の仕組みをつくる。
  

(1)《国土計画等と都市計画》国土計画、 地方計画と都市計画との連携のあり方

• 近畿圏等の広域的マスタープランの必要性に対し、 国土全体の計画体系の中で、 具体の土地利用規制等を定める都市計画の側からも他のレベルの諸計画との連携の充実を図る。
  

(2)《面整備と土地利用》土地区画整理事業等の面的な整備事業と都市計画制度とを、 より効果的に連動させるための方策のあり方

• 面的整備事業と土地利用に係る都市計画を効果的に連動させる。
  

(3)《地区計画の充実》地区計画制度をより汎用性の高いものとするための制度改善

• 既成市街地の土地利用改善のため、 地区計画で定める内容や用途地域との関係を、 建築基準法の形態制限等の総点検等の動向を踏まえて都市計画としての対応を行う。
  

(4)《財源・税制》都市計画及び都市計画事業の円滑な実施を図るための財源措置や税制の充実等

• 望ましい都市像実現のために補助、 融資、 税制に総合的に取り組む。 特に、 地球温暖化防止の視点から、 緑地の買い取り等の財源、 税制の措置を行う。
  

この制度改革案は、 現行の都市計画法全般にわたるもので、 マスタープラン、 線引きなどの都市計画制度の骨格の見直し、 都市計画区域外や非線引き都市計画区域の土地利用規制の強化を内容とする。

新制度への移行に当たっては、 これまでのものの考え方や都市計画の実務の場面で大きな転換が求められるが、 速やかな制度化を求める。

今後、 都市の健全な発展と秩序ある整備を実現するために、 土地利用規制や都市計画事業以外の多様な政策手段を含めた総合的な検討も必要である。