イタリアの景観デザインと商業政策
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まとめ
都市デザインは誰のためにあるのか

改行マークそろそろ最後の締めくくりに入りたいと思います。

改行マーク今日のセミナーの案内文に「イタリアの街は70年代の沈滞から抜け出し、 活気づいておりますが、 その要因のひとつには厳しい景観デザイン規制やマイクロプランニングと呼ばれる詳細な出店規制(誘導ではありません)がありました」と書かれていますが、 私もそのように考えています。 しかし同時に、 この規制は商業活性化を念頭に置いて始められたことではないだろうとも考えています。 それは今まで説明したとおりです。

改行マーク建築や土地利用の規制緩和を進めることが本当に経済活性化につながるかと言えば、 そんなことはないでしょう。 当面の不動産投資が多少活発になるだろうからという理由は、 グローバリゼーションの中で、 産業構造の急速な転換が起こりライフスタイルも含めて社会が激動している中で、 そんな単純な図式が通るとはおよそ考えられません。

改行マークイタリアでもそうでしたが、 我々は市場原理が街をどう変えていくかについてあまりにも無知です。 我々都市計画の人間は、 街の中で商業がどう動いているかも分からないし、 もっと分からないのは商業者が何を考えているかということです。

改行マークしかし、 イタリアはあれだけ多くのマイナー建築物を抱えながら、 レスタウロをこなしました。 特にこの30年間に集中してローマやミラノ、 フィレンツェという大都市で成果を上げ得たのは、 イタリアの都市計画家や建築家が商業者の発想をよく勉強したからだと言えるでしょう。 よく勉強したからこそ、 盛り場はこうしなければ栄えないということも分かった。 その結果、 都市の保存と市場原理とのフィードバックが上手に起こってきたことを我々は学ぶ必要があるでしょう。

改行マークイタリアでは、 田舎の街に行ってもデザインが上手です。 レストランもしゃれたものがあります。 彼らはよく知っているんです。 つまらない建物でも上手にデザインすれば観光客が喜んで、 一皿のスパゲッティの値段を上げられることを。 ですからイタリア人はせっせと街をレスタウロするんです。

改行マーク日本でしゃれた街と言われるところがいくつあるでしょうか。 一部の例外を除いたらないに等しいでしょう。 イタリアでは道を間違えて知らない田舎町に行っても、 必ずしゃれた店やレストランがあります。 街を美しく楽しくする手法が普及しているのは、 まさに建築の修復と市場原理のフィードバックが基礎になって街の方向性を定めることができたからだと言えるでしょう。 そうした対話がいろんな努力や工夫を生み出したんです。

改行マークそこで最後にみなさんにうかがいたいのです。 そもそも都市デザインは誰のためにあるのか。 いつも思うことなんですが、 都市デザインは我々専門家が決めるものじゃないですね。 それを決めるのはやはり商業者であり、 そこで暮らす市民なんです。 そう考えると、 日本の都市デザインは、 良いか悪いか別として、 大きな看板をでかでか出しているレベルなんだということになります。

改行マークそれはひょっとしたらそんなに悪くないのかもしれない。 そんな現実があるのに、 商業者や一般市民の感性から離れた所で都市デザインを論じてきたところに私は寂しさを感じています。 市場原理に関して経済が歴史的市街地の保存からどう利益を吸い上げるかについて、 もう少し理解を深めていただきたいと思っています。

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