プレゼンテーション3新しい人々をいかに招き入れるか寝屋川市・都市建設部・萱島整備課 三崎信顕 |
大阪府の密集市街地には、 高度成長期に出来たかなり密集した地域があり、 それをどう改善していくのかが重要な課題です。 これまで密集市街地市街地整備はどちらかというと住宅政策系の事業として位置づけられてきましたが、 阪神・淡路大震災以降、 大阪では防災面を中心として都市計画系の事業として位置づけられることが多くなってきております。
それでは実際に私がやっている業務を踏まえ、 その視点から、 今回の課題地区を捉えてコメントさせていただきたいと思います。
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3番(竹内徹) |
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17番「いえは街、 まちは家」(山田正司ほか) |
それから「いえは街 まちは家」という17番の提案です。 これはソフト面の提案がかなりされています。 高齢者が多いことから、 生活支援施設やデイサービスセンターなどをやっていこう。 その担い手としてはボランティアやNPOを考えているというものです。
それからまちづくり会社による共同建替として、 定期借地権による提案をしています。 これは他の提案にもありましたが、 ABO方式です。 すなわち元々土地を持っている人が第三者に貸して、 そこに自分も借家人として住み、 余剰床については市町村に借り上げて下さいという提案をしております。
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46番「穏やかで、 自主的・自然発生的にたたずまいを更新継続できるまち」(寺田高久ほか) |
それから不整形街区密集型一団地認定の提案(これはいわゆる公庫型の一団地認定とどう違うのか、 読み込みが足らないのかわからなかったのですが)もなされています。
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65番「風呂屋のあるまち…、 路地のあるまち…」(赤坂誠治ほか) |
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67番「サスティナブルコミュニティ」(久野道夫) |
こうした路地空間については、 町並み誘導型地区計画で背割り部分に地区施設を設けなさいという神戸市のマニュアルがあって、 それをうまく使ってやっていると思います。
私も同じ様な密集市街地である萱島地区を担当しているのですが、 萱島では戸建てやワンルームマンションなど民間が地主として入って、 結構自立更新しています。 それに対してこちらの方は、 震災後にできたものは確かにあるんですが、 空き地のまま残っていたりする土地も目につき、 その他についてはどうも不動産価値というか魅力性がかなり低いのではないかというのが私の観点です。
ですから、 ここのコミュニティをどう捉えるのかが、 問題意識としてありました。 従前コミュニティがこの地区にとってどうなのか、 どちらかというと新たなコミュニティをつくっていくことを重点的に考えた方がよいのではないかと感じました。
借家長屋のところについては、 先ほど申し上げた通り、 細分化せず共同住宅を建設すべきではないかと考えています。
まずコンペ当時に比較して、 連担建築物設計制度が導入されたこと、 つまり建築基準法86条2項でいうところの既存建築物を含めた形の一団地認定ができたことがあげられます。 それからこの2000年6月に国会を通りましたが、 隣地側に壁面線の指定等がある建築物の建ぺい率の緩和が制度化されたということ。 しかし神戸市では、 以前から地区計画を指定した場合、 街区単位の角地適用を行っているので、 あまり意味はないのですが、 それとは別に建築基準法の改正がなされたということです。
一つ目にはデザインコンペである本コンペで、 課題設定の時に細かい条件を決めることは仕方がないのですが、 その結果、 全体的に同じ様な提案になっている印象を受けました。
二つ目として路地裏空間を本当に存続させていくのかということです。 私は新たに外から人を入れるためには、 この路地裏空間は閉鎖的で近寄りがたい空間でマイナスであると思います。 ですから路地的な空間を残すとともに、 表に発散するような住宅形式も必要です。 行政が一から十まで出来るわけではないので、 コミュニティの存続に期待しても不可能で、 結局外から人を呼び込まないとなかなか難しいのではないかということです。
ましてまちづくり会社についてはどこから資金を集めてくるのかということが大切で、 その辺を意識したまちづくり計画を考えていく必要があるのではないかと思います。
三つ目については、 先ほども申し上げましたが、 地区の分かりやすさが重要な視点です。 これによって防犯上の観点からもよりよいまちづくりができるのです。 ですからこの点で背割り部分の緑道などはあまり好ましくないと思っています。
四つ目として中央線についてです。 中央線は確かに俯瞰的に見た場合、 都市計画道路からの位置として、 また二つの都市計画公園を結ぶ防災のバッファとしてはかなり良い位置にあると思います。 しかし、 実際に地区をみると、 あの空間は提案をもとに色々整備しても、 周辺からはあまり評価されそうにありません。 地区の人たちにとっては良いかもしれませんが、 せっかくきれいな空間にするのであれば、 周辺にピーアールできるような、 例えば2号線に開かれた地区の玄関口をつくるとか、 車に乗っていても見えるような地域の顔にできたらと思います。
その点、 コンペの課題設定で示された中央線のあり方自体に事業の実現性や魅力という面で問題を感じます。
実は私の担当している萱島でも京阪沿線沿いに共同建替をした住宅があり、 京阪の電車から見て「ああきれいな住宅だな。 あそこに住んでみたいな」という若者が結構いて、 問い合わせが来るんです。 ここの場合は高速道路からはあまり見えないにしても、 せめて2号線から地域の顔が見えるような雰囲気にしたら、 もう少し地域のポテンシャルが上がってきて、 利便性が活かせると思います。
しかしそれ以上の、 例えばコミュニティなどの問題について、 行政がどこまで顔をつっこんで、 それを活かしていくべきかが疑問です。 当然地域活性化のシステムづくりは我々の仕事としてやっていくべきだと思いますが、 それ以上、 どこまでやっていくべきなのかが、 常々考えているところです。
またそれぞれの地権者の方や、 借家人もいらっしゃいますので、 どの方のお話を聞いていくのか。 例えば借家人でしたら、 借家法のこともありますが、 地主さんの意向も大切だと思うんです。 例えば協議会をつくった場合、 地主を入れるのか借家人を入れるのか、 それとも借地人を入れるのかと悩むことが往々にしてあるわけです。 本当に誰のためにまちづくりをやるのか、 それとももう少し高い視点で行政はこうあるべきだとやっていくのか、 その辺のことを議論する必要があると思っております。
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東大利地区パンフレット(表紙/寝屋川市) |
神戸市では、 改良住宅などの全面買収型で市が経営したり公団が経営したりしていますが、 東大利地区は民間の共同建替です。 ですから民間の家主さんに「こういう建替をしませんか」と我々がお願いして、 地区を再生しております。 これは行政がお金をかけてやるよりも大変で、 思いの違う借家人に「こんなまちにしましょう」と朝晩持っていって、 怒鳴られながらもやってきたところです。
実際に建替わって皆さん喜んでおられるんですが、 地区ができるにあたって、 私の今の上司である担当者が「この地区はこうしなければ」という思い(夢)をもってやってこられたことが大きな要因であったと思います。 地権者の意向を必ず聞く必要はあるんですが、 同時に実際にまちづくりをやっている人間のポリシーがないと、 なかなか密集事業は続かないと思います。 これも10年かかっています。 その10年間、 組織上持続的に取り組める体制を組めたことが、 事業が成功した大きな要因だろうと思っております。