密集市街地整備の夢
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プレゼンテーション5
「まちづくり設計協競技」からの考察
東京都立大学 小林由佳
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1.コンペ作品のテーマ分類
東京都立大学の高見沢研究室の小林です。 私たちは(財)住宅生産振興財団から今回の設計競技の成果を活用するための分析調査を委託され、 「日本建築学会大会学術講演梗概集、 F-1.PP.523-526.2000」と「日本建築学会東北パネルディスカッション資料、 PP.63」でまとめました。 今回は、 その概要をお話ししたいと思います。
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タイトルから見た作品の類型(佐野雄二)
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まず、 密集市街地を対象とした『「まちづくり設計競技」からの考察、 その1―作品が示した密集市街地の整備イメージ―』ですが、 これは、 同じ研究室の佐野が担当しました。
図は、 日頃密集市街地の整備にかかわる専門家の方々が、 設計競技を通して、 密集市街地の整備をどのように捉え、 取り組みたいと考えているかを全体的に捉えるために、 題名に着目して分析したものです。 題名から大きく五つの類型、 「コミュニティ」「継承・継続」「道・空間・施設」「安全・防災」「環境・自然」に分けられました。
これらのテーマのうち、 「コミュニティ」がその他の四つの類型と重複しています。 今回の設計競技では、 <地域・下町のコミュニティの形成>に提案の中心がおかれていると見ることができると思います。
2.コンペ作品の協調建替と
個別建替の扱いについて
その2は私が担当した『提案された協調建替のルールと建築物の概況』についてです。
私は、 密集市街地というよりも、 先ほどチマチマ型と言われましたが、 まちを徐々に整備していく、 できるところから整備していく手法で本当にまちの整備ができるのか、 ということころに関心を持っておりました。
私は、 密集市街地は建替が進んでいくことによって整備されていくのではないかと思います。 建替には大きく共同建替と個別建替があります。 例えば、 東京では、 任意の共同建替は非常に事例が少なく密集市街地では、 15年で41件という感じです。 ですからその間に民間のミニ開発の恐れがある個別建替が行われ、 建て詰まった住環境になってしまっています。 そこでもう少し、 個別散在的に起こる民間の建替を誘導するような手法、 つまり協調建替が必要なのではないかと思い、 今回分析を進めました。
分析対象はこの図録で、 読み込みが可能な作品と、 予選を通過した作品を対象としました。
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表2 分析の対象作品数(小林由佳)
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図1 建て替えルールの内容(小林由佳)
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まず、 表2ですが、 協調建替と個別建替の違いは何かというところについて着目しました。 図録を読み込んでいきますと、 どこまでを協調建替といって、 どこまでを個別建替というのか、 その捉え方がバラバラだと思ったので、 初めに分類しました。 協調建替は、 一般に、 ルールに基づいた建替といわれていますので、 参加者の方がどのようなルールを考えているのかを分析したものが「建替ルールの内容」です。
ルールの内容は、 壁面線の後退、 高さの最高限度指定、 階数の最高限度指定といった「形態制限上のルール」と、 例えば、 屋根材料の指定、 テラスの緑化の推奨といった「景観上のルール」さらに、 耐火耐震壁を設けましょうといった「防災上のルール」の、 大きく三つに分けられました。
またこれらのルールは、 単独に用いられているのではなく、 組み合わせて協調建替が提案されてます。
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図2 協調建替と個別建替の分類(小林由佳)
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40番「『住み続けながらつくる、 住み続けられるまち』づくり」(藤川敏行ほか)
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この「景観上のルール」、 「防災上のルール」の二つのルールは、 建替えなくてもルールを守ることができます。 そこで建替を前提としたルールである「形態制限上のルール」も指定されているものを、 私は協調建替としました。 つまり協調建替は、 景観とか防災に関するルールと形態制限に関するルールをあわせて設定することによって、 建築基準法が緩和され、 一定の床面積と一定の住環境を持った個別の建替ができるものと定義し、 図のように分類しました。
この協調建替の中でも、 大きく三つの類型を書きましたが、 この中に一重壁というものがあります。 これは本来共同建替ではないかと今は思っております。 というのは、 協調建替は、 区分所有ではなくて、 任意の建替ができるものと考えるべきだからです。 ただ、 今回のみなさんの提案では、 一重壁と二重壁の区別まで提案されたものはほとんどなく、 一重壁と二重壁の区別もできなかったので、 両方とも協調建替としました。 少ないながらも二重壁を意識した作品に10番、 40番等があげられます。
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8番「下町のコミュニティの継承」(村上隆俊ほか)
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8番「下町のコミュニティの継承」(村上隆俊ほか)
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次に、 協調建替建築物の概況ですが、 これは、 読み込みが可能であった24作品を対象に、 どれくらいの規模の協調建替をみなさんが提案されているのかを把握したものです。 お隣り同士で土地を有効利用した作品(8番)などいろいろな住戸形態が提案されておりましたが、 ほとんどが、 一戸建ての3階建てで、 さらに、 平均敷地面積が一戸あたり41.3m2というものでした。 ただ、 敷地面積については、 数値の設定をしていない作品が多かったので、 一概には言えません。 また、 こうした50m2以下の狭小な宅地でも、 ファミリー向けの、 一定の床面積を確保した住宅をみなさんは考えていらっしゃいました。
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46番「穏やかで、 自主的・自然発生的にたたずまいを更新継続できるまち」(寺田高久ほか)
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まとめですが、 協調建替と言いましても、 提案された建物は非常に高密居住ではないかと思います。 例えば、 作品番号46番とか20番は、 非常に極小の住宅を提案されていますが、 いくら協調建替といっても、 このような小規模宅地における高密化を推進していては、 密集の再生産になるのではないかと思いました。
協調建替を考えることは必要なことですが、 一体どれくらいの規模までなら戸建を認めるのかとか、 あまりに狭小な戸建になるのであれば、 共同化も必要になってくるのではないかといったことも考えることが、 今後必要ではないかと思います。
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