まず、 震災後の密集市街地をどうするのかについて、 震災後のバタバタした中でしたが淡路の市町、 阪神間の市を集めて密集研究会といったものを立ち上げました。 復興事業の立ち上げは、 震災直後の意識でほとんど決まっていたと言えます。 若干あとで取り組もうかというところもありました。 それから木賃住宅の滅失戸数の推定に取り組みました。 正確なところは分からないままですが、 推定でだいたい5、 6千戸ぐらいです。 通常、 毎年5百とか6百戸の更新がありますから、 10年分が滅失したということです。 言ってしまえば、 密集事業が10年分早まったということにもなります。
それから、 密集住宅市街地対策の検討として、 2年ほど続けてコンサルにお願いし、 市町の方に使っていただくためのマニュアルを作りました。 また密集新法ができましたので、 土橋さんに手伝っていただき防災再開発促進地区の指定のため、 都市計画基礎調査を使ったデータ的な調査を行い、 防災再開発促進地区の指定調査をやりました。
復興事業としては、 淡路では非常に特徴的なコミュニティ住宅が建設されました。 災害公営がわりと画一的な建物として建設されたのに対してコミ住がユニークに造られたのは面白い現象でした。 コミ住は入居者の顔が見えていることとか、 いくつかの理由があります。 区画整理との合併施行となった築地の改良住宅でも、 大規模でかなりいいものができたと思います。 周辺整備についても改良の事業費でいろいろな環境整備ができています。
それから、 湊川東部、 神前のミニ区画整理と密集事業の合併施行は、 神戸市の底力と言いますか、 実体にあわせて臨機応変にやっていく現実的処理が印象的でした。
こういった形で密集市街地と関わってきましたが、 現在は、 都市計画をやっています。 また建設省がH9から5年計画で取り組んでいる防災総プロとタイアップした防災まちづくり共同推進会議にも参加しています。 この中では、 出火後のまちの焼け方とか、 焼け止まり、 あるいは避難路の確保などをシミュレーションし、 避難地の想定と計画をコンピューターでやってしまおうというシムシティみたいなものも取り組まれています。 我々行政は、 そういったシステムを作る方ではなくて、 シミュレーションの使い方だとか、 計画の実現の仕方についてアイディアを出しています。 実際に出来てどうなるのか、 よく分からない面もあるのですが、 まちについての防災面からのチェックが非常に厳密になりつつあるということを目の当たりにしているという状況です。
プレゼンテーション6
よい空間を制度がつくれるか
兵庫県 難波健
密集市街地とのこれまでの係わり
35番「前向きで柔軟な建替/共同化へ」(寺本晰子ほか) |
ステップ1、 ステップ2、 ステップ3と建替の計画を立て、 銭湯を地域の中心的なよりどころとして、 仮設住宅を建設し、 共同住宅に入る人と戸建に入る人を、 順次換地し、 敷地の整序を行っていくというものです。 これは制度としては、 関係者が納得すれば実際にできるようです。 補助事業ではなくて、 区画整理事業を使って土地を交換していくということで、 東京有楽町のマリオンはこの制度を使っているということです。
住んでいる人は、 10軒ほど向こうの家が建替えしているなと思っていると次ぎは5軒ぐらい向こう、 3軒向こうが着工したなと思うと、 次ぎはうちをやらなくちゃ、 と地区住民が時間をかけて覚悟をしていくようなところがあるのではないでしょうか。
64番「舫いのまち」(大谷宗之ほか) |
できあがった図はニュータウンのタウンハウスのように描かれていますが、 通り抜け長屋のようなまちなみと考えれば、 けっこうコミュニティのあるまちができるかもしれません。
密集市街地整備促進事業の変遷(難波) |
例えば、 兵庫県でやってきたコミ住建設ですが、 これは制度としては74年からあるわけですが、 これまでに作ってきたコミ住は1,109戸です。 それから、 建替促進の制度は84年にスタートして98年までの15年間で現実に実施されたのは従前戸数で633戸、 従後で660戸です。 高々それくらいしか密集事業はやっていなかったという事実があります。
ですから、 よい密集市街地をつくるためには、 今の制度自体の問題も出てくるし、 我々行政自身もどうしていいか分からないということもあるし、 そういった制度を使える人というのも少ないという状況だと思っています。
路地の美しさについて
「伝統的な日本のいたるところにあった多くの小さな路地。
こういうのが密集市街地ではないか、 我々がこれから求めていく密集市街地ではないかと思います。 それを作るための制度であり、 先ほどの2.7mが必要であればそれを作っていく制度が必要ではないかと思います。
親しみやすく、 低く突き出た軒でもってすてきな輪郭にかたどられている路地には、 建物に沿って車が気ままに停めてあり、 正面戸口階段や前庭やベンチや小さな樹木や、 それに低い塀や、 座ったり立ち止まったりするのに心地よい場所もあります。
そこここで通路は建物を抜け、 裏庭へと続いていきます。
そして、 時々、 空間の単調さを打ち破る広場があります。
路地は曲がっていて、 それ故に、 絶えず微妙に景色が変わります。
その一端では、 大通りにつながっているということをみんなは知っていて、 それがコミュニティを結び合う上での互いの隣人らしい感覚を創り出すのです。
路地に沿って歩いていくと、 住戸は様々に変化します。
窓のうつろいや、 家々の材質、 色彩、 配置の微妙な変化から、 それぞれの住宅の独自性を感じ取ることができます」。
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