9 船場に住もう |
![]() |
図31 船場位置図 |
![]() |
図32 居住スタイルと時間感覚 |
海外の大都市では、 都心の真ん中にはオフィス街の一等地があり、 同時に住宅地の一等地もあって、 それらは憧れの都心居住のイメージを併せ持っています。 「自分もいつか大金持ちになったらあそこに住もう」なんていうエリアや住宅があります。 これらは猛スピードで変化し続ける大都市を支える先端を行く人たちを内包するハコです。 つまり、 都心に住むことは郊外とは違う時間の流れがあるし、 またそれを求められているのです。
ですから都心には、 しっかり根を生やす分譲住宅よりも、 変化に対応できる賃貸住宅の方が向いていると考えられます。 そして、 その住宅は外観も内部も多様なものが求められるでしょう。
いずれにしても船場には住宅、 とりわけ賃貸住宅がまだまだ足りないと思います。
ここではその混じり方の姿について二つほどお話しします。
一つはまちなかの建物の外観についてです。 日本の建物はマンションはマンション、 オフィスはオフィスと一見してすぐ分かります。 歩いていてこの建物は何だろうと思うことがほとんどないのです。 用途ごとの外観が似かよっているということも言えるでしょうし、 一つ一つの建物の機能が単調だということも言えるでしょう。 たいていのマンションやオフィスは上から下までマンションだったりオフィスだったりします。 その建物が何だか全く分からないというのは不気味ですが、 建物にも何だかわかってしまわないような、 わくわくする部分を残すのはまちにとって大事な事ではないでしょうか。 建物が個性豊かであり、 一つの建物の中にいろんな機能があることは、 まちを面白くする大事な要素だと思います。
二つ目は、 リノベーションに対する誘導についてです。 ニューヨークの超高層ビルでも社会情況の変化に対応出来ないところで空きビルが続出しているそうです。 税収は減るし、 治安は悪くなって市としては大問題なのですが、 税制優遇や補助金なども含めて住宅への転換が進んでいて、 いま次から次へと高級コンドミニアムにリノベーションされています。 天井高が高いということで大変な人気を呼び、 廃墟になりかけていたまちが別の姿に生まれ変わっています。
日本の法規や税制は新築をベースに考えられていますが、 今ある建物を生かすことが経済的にも有利になるようにリノベーション型の仕組み、 古いものを残しやすい仕組みが充実していくことが、 船場のような歴史あるまちにとっては大切です。
![]() |
図33 残したい古い建物 |
満足できる空間は人それぞれでしょうが、 満足できる都心居住を一言で言えば「スタイルのある住まい」と言えるかもしれません。
例えば、 高級マンションのように住宅自身がスタイルを持っていて、 それを居住者に与えるのも一つの居住スタイルでしょうし、 そういう与えられた空間では満足できず自分ならではの空間を実現したい人もいるでしょう。 そういう人には既製のスタイルを作って与えるのではなく、 自分のスタイルを表現できるハコを提供することが大切です。
![]() |
図34 大阪都心のマンション事例1(ル・グランデ四ツ橋西より) |
![]() |
図35 大阪都心のマンション事例1(ル・グランデ四ツ橋西より住戸平面図) |
4スパンのうち3スパンを使った1住戸のうち、 1スパンはすべてリビングルームであり、 その部屋は2層吹き抜けになっているため、 南北両側から2層分の光が入る計画です。 このような2層吹き抜けの大きなLDは、 どうやって使うかを考えながら住むかことが求められるのと同時に、 自分のスタイルを実現するハコとなりえるのではないでしょうか。
![]() |
図36 大阪都心のマンション事例2(ル・グランデ南船場より住戸平面図) |
このようなメゾネットは昔はサラリーマンが検討する余地もないほど高価なものでしたが、 最近では3000万円台から見られるようになりました。 ただし、 賃貸住宅ではまだまだ見かけません。
![]() |
図37 自分の建物もワクワクに参加しなくっちゃ |
これまでの集合住宅は、 都心にあっても戸建て感覚やプライバシーに主眼が置かれ、 場所は都心にあってもまちと一定の距離をおくものが多く見られます。 まちを面白くするためには集合住宅ももっとまちなみを意識したものになっていく必要があるでしょう。