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14 既存建築を活用した新しい空間の創造

 

(1) リニューアルニーズの多様化

 建物には都市活動の変化に応じてダイナミックに変化することが求められますが、 一方でこれまでのスクラップアンドビルドの見直しが迫られています。 都市の活性化のためには、 活動が停滞した既存の建物ストックを活用し、 可変性を持続することも重要です。

 建物のリニューアルは、 これまで劣化した機能の維持更新やコストパフォーマンス等の効率性向上のニーズから実施されてきましたが、 近年は防災性能の見直しやITへの対応、 また建設廃棄物や地球環境、 ライフサイクルコスト等の視点が加わっています。

 古いものに新しい知恵を加えるリニューアルは、 今後はさらに、 現代的な価値を生み出す創造的な行為として捉えられるべきでしょう。 この新しい価値の創造は建物に高い収益力を与えるだけでなく、 地域全体のポテンシャルを高め、 都心部の社会的な役割まで再生する力を持っているのではないでしょうか。

 そこで、 そのヒントとなるポイントを5つあげます。

1.ゆとりある空間を生かして魅力を創る
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図57 ゆとりある空間を生かして魅力を創る−船場ビル
 「船場ビル」は大正時代に建てられたビルで、 当初はホテル兼住宅として使われていたようです。 どこにでもある雑居ビルとなっていましたが、 数年前にリニューアルされました。 中央の吹き抜けを生かして外光が降り注ぐとても心地よい空間へと生まれ変わりました。 メンテナンスがいいこともあって、 今ではデザイン系の事務所がたくさん入居していて、 高い人気を誇っています。 最新のOA技術やITには対応できない古いビルなのですが、 空き室は一つもありません。 古いものをリニューアルすることで魅力あるものに生まれ変わったよい例でしょう。

2.時の流れが刻み込まれた価値を再生する
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図58 旧西田三郎商店と新井ビル“弘得社”
 豊かな装飾、 風雪に耐えた格式ある石の表情は、 もはや新しく作り出すことは困難な価値です。 左のレンガづくりの建物は証券会社の事務所として使われてきましたが、 一部は土佐堀川も見えるおしゃれなカフェとして再生されています。

 新井ビルはもともとは銀行の建物でしたが、 建物中央の大きな吹き抜けを活用してレストランとして再利用されています。

3.投資を抑制した仮設的利用で活性化する
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図59 カフェ・ガーブ
 南船場4丁目辺りで活発に行われているのが、 小さなビルに小さな投資をすることで効率的な循環を図っていこうというものです。 図59の「カフェ・ガーブ」はほとんどセルフビルドに近い建物です。 投資額が少なかったため、 人気とともに投資はすぐに回収され、 2号店、 3号店が順次開店しています。 小さな投資だからこそ、 あちこちで新しい動きを出すことができるのです。

4.新しい用途を加えてまちや建物を甦らせる
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図60 スターバックス・カフェ
 南船場の御堂筋沿いに海外トップブランドのブティックが出店しているのは、 みなさんよくご存知だと思います。 また、 本町4丁目の交差点では、 銀行の後にスターバックス・カフェが入りました。 ここにカフェが出来ただけでこの一帯の雰囲気がかなり変わりましたし、 今まで見かけることのなかった外国人がこのあたりを歩いていたりします。 たった一つの用途が、 その建物のみならずまち全体に新風を吹き込んだよい例だと思います。

5.まちの歴史の継承する
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図61 道修町3丁目の町家
 船場は全域が防火地域ですので、 歴史的な雰囲気を残す木造建築を同じように木造で新築するのは法律で認められていません。 しかし、 現行法規で拒絶されている建築物をなんとか残すことを考えたいものです。

 この道修町3丁目の町家も、 現状では取り壊されるのを待つばかりです。 こういったものは二度と作れないものですから、 何とか残したいという思いをまちの住人みんなが持つことが大切であり、 まちづくりの第1歩だと思います。


(2) 再生された船場のまち

 ここまでにあげた空間に対する様々なアイデアを、 一つの模型にちりばめてみました。 これは道修町と伏見町の間の実際にある街区です。 また、 適塾の街区をスタディしたりもしています。 あってほしい新しい船場のライフスタイルやワークスタイルを念頭におき、 それを形にしてみますと、 私たちが望む船場は大きなビルがドカンとあるまちではなくて、 いろんな建物が混ざり合うまちとして現れてきました。

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