山本(スペースビジョン):
私の印象では、 アメリカは棲み分け社会だと思います。 ジップナンバー(郵便番号)を言うだけで、 どんな家に住み、 どんな球団が好きで、 どんな食生活をしているかまで分かるという話があります。 それが凝縮されたのがマンハッタンという街だと思います。
私が初めてマンハッタンを訪れたときも、 「通り一本隔てるだけで、 本当に人種が変わるんだ」と驚いた体験があります。 私が泊まっていたチェルシー地区の公園は、 ベビーシッター付きの子供、 ドッグシッター付きの犬がぞろぞろいるお金持ち階級しか使わない公園という印象でした。 ここでも、 まちづくりは棲み分けの方向に進んでいると感じました。
ですから、 マンハッタンの再開発を、 従前居住者、 ディベロッパー、 行政のそれぞれの立場から見るとどうなのかについてうかがいたいと思います。
(1) タイムズ・スクエアに出来たホームレス住宅を、 従前居住者はどのように受け止めているのでしょうか。 棲み分け社会の中で突然違う人種が入ってきたことになるのですが、 これはミックスド・コミュニティの方向に進んでいるということでしょうか。
(2) NPOによるディベロップメントでミックスド・コミュニケーションが進んでいるなら、 民間ディベロッパーは何をしているのでしょうか。 郊外でゲーティッド・コミュニティを進めているのは知っていますが、 マンハッタンの中の住宅政策はどう考えているのでしょうか。 また、 行政は民間ディベロッパーの意向をどう考えているのでしょうか。
(3) 住宅がマンハッタンの中ではミックスの方向に進んでいるのに、 公園の使用を差別化、 分類化しているのは矛盾しているように見えるのですが、 市当局は何を考えているのでしょうか。
平山:
(1) まずミクスト・コミュニティについてですが、 実を言うとミックス化はまるで進んでいません。 統計を見ると、 むしろ分類化がどんどん進行しています。
また、 ミクスト・コミュニティのプロジェクトは歴史的にまちづくりの課題とされていて、 延々と実行されたのですが、 ほとんどが失敗に終わっています。 最近になってよく言われるのは「人種のミックスはできるが、 階層のミックスは出来ない」ということです。 人種が違っても同じ階層なら一緒に暮らせるという結果が出ているようです。
それに関連して言うと、 CDCがやっているローインカム住宅の開発に中間層のプロジェクトを入れると街が良くなるのではないかということが言われています。 しかし一方、 中間層を入れることで、 マーケットがホットになる危険性も指摘されています。 CDCのプロジェクト自体がジェントリフィケーションになるかどうかが争点になっているようです。
ミックス化は進んでおらず、 むしろ人種別棲み分けや、 良いところ悪いところの差がはっきりしてきたというのが実態です。
(2) 民間ディベロッパーが何を考えているかについては、 市役所に税金の免除とか儲かる政策をどんどん出して欲しいと思っているとしか言いようがありません。
CDCがやっているプロジェクトはリターンが出るようなものではありませんから、 民間ディベロッパーとの競合はありません。
民間が郊外でやっているゲーティッド・コミュニティは、 マンハッタンでは見たことがありません。 ゲーティッド・マンションならありますけど。
日本と違うのは、 職場もどんどん郊外に移っていますから、 ゲーティッド・コミュニティはけっこう人気があるようです。 都市の回りにリング状にハイテク産業を配置してエッジ・シティを開発するということが、 今の民間ディベロッパーの主な仕事です。
マンハッタンを従前居住者、
ディベロッパー、 行政の立場から見ると
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