ワイルド・ニューヨーク
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公共空間のデザイン、 および
レーガン時代のHOPE計画について

 

佐藤

 はじめに公共空間のデザインについてうかがいます。 公共空間が「いつでも誰でもアクセスできる」という定義には大賛成です。 そのために、 異質なものを排除せず、 それぞれが共存できる空間にすることが重要で、 よりソフィストケートされたデザイン手法がいると思うのです。 トニー・ヒスの『都市の記憶』という本には、 公園や広場を誰もが安全にアクセスし利用できる空間にするためのデザイン上の工夫が紹介されています。 そうした手法やスキルが日本でも遠からず必要になってくると思っています。 せん。 その辺についてご存じの点があれば、 教えていただきたいと思います。

 もうひとつうかがいたいのは、 レーガン政権以来のパブリックハウジング政策(HOPEプログラム)についてです。 現在全米ですすめられているHOPEVIプログラムは、 荒廃した公営住宅団地を物的環境と社会経済環境の両面から改善しようとするものですが、 この事業でも団地を分散化し、 一般社会にとけ込ませたり、 ディフェンシブル・デザインということが強調されているようです。 これらがどう評価されているか、 またこうした事業にNPOなどがどう関わっているのかをうかがいたいのですが。

平山

 (1) まず公共空間について。 「いつでも誰でもアクセスできる」ようにしておくと、 必ず摩擦を呼んでしまうのです。 私なりに言うと、 極端なプランニングは失敗すると思います。 たとえば、 無制限に受け入れる、 あるいはメンバーを限定してしまうやり方はいずれも良くないと思います。 極端な定義付けをした公共空間はあまりうまく機能しないんじゃないかと思います。

 共存のための工夫というご質問ですが、 たとえば、 カルフォルニアでは今、 公園の中に人が住んでいるという前提でプランニングする動きが広がっています。 ニューヨークでは、 階層に合わせて公共空間を作っているようです。

 (2) 公共住宅について。 当初レーガン政権は、 公共住宅を全て売却しようとして失敗しました。 入居者には買い取るだけのお金がなかったのです。 売却計画は残っていますが、 非営利組織の参加でいくつかのやり方が出てきました。 まず一つは、 住民がコーポラティブを組織して公共住宅を買い取るという方法です。 あるいは住民が非営利の会社を作って管理を役所から委託されるというやり方です。

 もう一つは、 インカムミックスを進める方法です。 それがうまくいくかどうか注目を集めています。 つまり、 低所得者層ばかりを集めるからうまくいかないので、 所得もある人も混ぜようということです。 しかし、 所得のある人を入れると、 その分だけ貧困層が入れなくなってしまうという反論があります。 要するにコミュニティを優先するのか、 住宅問題を優先するのかという争点です。 今はインカムミックスを実験してみようということになっています。 これが成功か失敗かはまだ先のことですが、 最も注目されているプログラムのひとつです。

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