また、 帯広では北海道が22mで都市計画決定している西二条通(現在20m)を、 1mずつ拡幅し22mとするシンボル道路整備事業を行なうことになりました。
このように議論しながら道を巻き込んでいき、 主だった事業の手法と主体が決まりました。 都市開発プロジェクトにおける都市デザインの実際
〜基本計画段階〜事業手法と事業主体
鉄道の連続立体交差事業の事業主体は北海道です。 連立事業は大きな事業ですから、 制度上都道府県と政令指定都市が事業主体になります。 それに対して市は、 面整備を行ったり、 多目的広場や交流センターの整備をします。
図15 基本計画段階で関係した様々な主体や事業(旭川) |
区画整理には市民や地権者も入ります。
連続立体交差事業では、 高架化された鉄道の高架下の土地の90%がJRに帰属してしまいます。 10%は固定資産税分として市に帰属することになります。
JRはできるだけ高架下に商業空間を置きたいと主張していましたが、 JRの本社に行ったりしながら調整しました。
まず、 模型で空間構成を詰めました。
北側に用意した多目的広場については、 まわりの宅地となるべく関係性のあるデザインにして欲しいと考えました。 この段階から、 多目的広場は屋根付きにしようと思っていました(図16、 17)。 帯広は十勝平野の中心にあり冬には夜間−20℃になるので、 西二条通りの中通りにある飲屋街で飲んでいる人も、 寒くてまちに出て来ません。 なるべくまち中に出て来てもらいたいので、 夜も色々なイベントが起こるように考えました。
駅の南側には、 定住交流センターという施設を計画しました。 現在は十勝プラザといって、 巨大な公民館のような施設になっています。
この施設計画の背景には、 南側での土地利用を促進していこうという考えもありました。
中心大空間を確保する
帯広では、 中心となる大きな空間をどのようにデザインしていくかを、 基本計画段階で最も重視しました。 一番のポイントは西二条大通りと公園大通りをつなぐ鉄道高架下の自由通路を、 できるだけ広幅員にすることでした。 せっかく鉄道を上げるのだから、 歩行者交通量にあう10mぐらいの空間ではおもしろくないので、 理屈をこねて25mの空間を確保しました。 さらに欲張って北側にも10mの空間を確保しました。
〜帯広プロジェクト〜
基本計画段階における具体的な建物のイメージ
基本計画段階では、 建物については大まかにしか考えていません。
〜帯広プロジェクト〜
写真5 空間構成を詰めるための模型
図16 多目的広場
図17 多目的広場でのイベントの可能性を検討
図18 定住交流センター |
基本計画段階ですが、 プログラムに沿った上物の絵が一応ありました。
北側の多目的広場は屋根付きの幅50m奥行き50mくらいで、 どのようなイベントを起こしうるかを考えました。
各種展示や映像を使ったイベント、 ゲートボールなどかできる会場にしたり、 商業施設やその他の施設が入れるブースを置くことも考えられます 。
これは、 岩手県の花巻のプロジェクトで、 もう完成しています。 東北本線の花巻駅を中心として、 まちづくりをやりました。
基本計画段階で、 多目的広場を中心とするブロックのどこに道路を配置するかについて、 念入りに検討をしました(図20、 21)。 後でやり直そうと思った場合、 これは都市計画道路なので都市計画決定を変更しなければならず、 ものすごいエネルギーを必要とするからです。
A案は、 西側の変則的な交差点に道路を入れるプランです。 この場合、 多目的広場の脇に道路を通すことになります。 これでは、 広場の落ち着きがなくなり、 囲み具合も悪くなると考えられます。
誰の土地がどこにいくか、 土地操作も考えながらの作業でした。
B案は、 道路が多目的広場の脇を通らないように、 A案より北側に配置しました。
C案では道路の配置を南に下げました。 駅前広場に隣接して広場があると、 変な空間ができるので、 多目的広場に対してどのように施設を配置するかも考えました。
C案では全ての宅地への接道条件を満足しきれなかったため、 最終的にD案の位置になりました。 広場を作って、 その周囲にホテル、 定住交流センター、 商業施設を置きました。
この段階でまず、 (1)基盤施設の配置、 道路の幅員、 あるいは広場の形状についての計画、 次に、 (2)土地利用、 建物建設の計画、 それから、 (3)どのような具体的事業手法をとるのか、 あるいは補助をどこからもらうのか、 それぞれの絵について三位一体的に考えます。 これが基本計画段階で一番大切なことです。
帯広の場合には、 駅南はそんなに高密度で土地利用されていなかったので、 割とスムーズに調整ができました。
道路配置の様々な検討 〜花巻プロジェクト〜
図19 花巻プロジェクト
図20 花巻の空間構成の代替案(A、 B案)
図21 花巻の空間構成の代替案(C、 D案)
基本計画段階における粗設計
中心に広場があるので、 ホテルによって入り隅のようなものを作りたいと考え、 L字型の形状にホテルの土地を換地しました。
〜花巻プロジェクト〜
図22 換地の図(花巻) |
図23 粗設計(花巻) |
この段階で建物の粗設計をやります。 作りたい空間が本当にできるかを確かめるためです。 入り隅をつくるためにつくったL字型の土地で100室くらいのホテルが本当に建つかどうか検討しました。 もちろん、 そういった形状を考えた時点で、 そのプログラムはだいたい見えています。 北東から車まわしをとって、 多目的広場に面してロビーやレストラン、 コーヒーショップ、 売店が並びます(図23)。
定住交流センターは北側に多目的ホールを配置して、 広場と一緒に使えるようにしたいと思いました。 多目的ホールの入り口のドアを全部オープンにできるアコーディオン方式にして、 イベントでは広場と一体的に使うことも考えました。
次の段階でそれぞれ建築家が登場して建物を設計するので、 形状は変わるものの、 基本計画段階でこの程度まで考えます。
図24 シークエンスの検討(花巻) |
図25 Jブロックの宅地割と緑地構成空間(案、 旭川) |
図26 Jブロックの完成予想スケッチ(旭川) |
そこで、 建物を道路に近づけて配置する街並み型ブロックにして、 街空間がにぎやかになるようにと考えました。 新宿副都心のように真ん中にどかんと建物が来て回りが駐車場や緑地になるような配置は避けようと思ったのです。
また、 表側に建物を出す代わりに、 真ん中に公共地にカウントされない緑地をつくることにしました。 緑地はそれぞれの敷地から出してもらおうと考えました。 結果的に、 図25のアミテンで表示した部分が緑地になるように考えました。 国の合同庁舎の横には市の共同駐車場がありますが、 もともとみんなが使うものですから、 ここからの緑地の提供は受けておりません。 それ以外は公民かかわらず、 それぞれ4割ずつ土地を出してもらいました。 ここまでは、 建物の粗設計がまだ出来ていないレベルでの空間構成です。 このような大きなスーパーブロックの中で、 こうした空間を構成するために国と市の間の調整を進めました。 国の合同庁舎も市の福祉施設もこれに沿って2001年から工事に入る予定で現在設計が進んでいます。
写真6 帯広・施行街区の現況写真(平成3) |
写真7 帯広・区画整理事業案 |
その段階では、 駅前広場のレイアウトは大まかな内容を検討しています。 なぜかというと駅前広場は公共用地ですから都市計画決定の対象となりますし、 後で面積が足りなかったという事態にならないよう、 いろんな面からチェックする必要があるのです。