久保:
民間の地権者が多い場合、 デザインのコントロールは難しいのではないでしょうか。 まとまった土地があってフィジカルにデザインをやっていける場合と、 多様な地権者がいる場合とでは、 それぞれどういうふうにデザイン誘導をされたのかをうかがいたいのですが。
加藤:
基本計画段階で粗設計をやれる建物は、 そうはありません。 区画整理事業の場合は先に公共基盤が出来ていきますが、 公共基盤の設計をしている段階では確実に建つと思われる建物は少ないのです。
花巻のホテルの場合、 基本構想段階の議論では「とにかく地区の中にホテルが欲しい」というのが行政側の要望でした。 なぜホテルなのかというと、 花巻市には車で20分行ったところに温泉街がありますが、 街の中に市民が楽しく過ごせる場所があまりない、 だからそれを作りたいということだったんです。
しかし、 ホテルを経営したことのある人間はいない。 そこで、 地区内のタクシー会社に土地を貸していた地元の素封家に白羽の矢を立てたんです。 この方は宮沢賢治の甥御さんで、 花巻市で大きな卸をやっている人です。 宮沢さんに話をすると、 彼は最初しり込みしました。 でも花巻の名士でもあり経済界の重鎮でもあることから、 市のために一肌脱がなきゃいけないと思っていただけるところまでこぎつけました。
ただ、 ホテルを建設するために宮沢さんの土地を一等地に換地するとなると、 他の地権者から不平がでることが予想されました。 そこで花巻市内のしかるべきパワーからお願いし宮沢さんにホテル経営をやってもらうという形をとるため、 商工会議所でそのための決議をしてもらいました。 そこが一番大事な点だったんです。 宮沢さんはそれで納得し、 同時に一等地に換地することも話がつきました。
また、 定住交流センターや路線商店街は再開発の前から分かっていた建物ですが、 こうふうに何を建てたいかが事前に分かるのは、 全体の地権者の3割ぐらいです。 こういう人たちの建物に対しては粗設計は出来るのですが、 それ以外の7割の地権者がどういうプログラムで建物を作るのかは分かりません。 ですから、 せいぜい頑張っても地区計画や建築協定を作るぐらいで、 あとは個々人の地権者にそれに合わせてやってもらうことになります。
帯広のホテルの場合も、 民間の建物ですから我々はこういう建物にしろと言える立場ではなかったので、 壁面線の位置だけは指定しておきました。 それを彼らがちゃんと守ってくれたという関係です。
要は、 計画全体の肝心なところで粗設計が出来るかどうかが大事なところです。
民間建築の
デザインコントロールはどうするのか?
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