アメリカにおける歴史保存トラストと都市づくり
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アメリカのスプロール現象

 

 ナショナルトラストの会長であるリチャード・モエ(Richard Moe)氏が、 なかなか良い演説をしているので紹介していきたいと思います。

 彼は、 スプロール現象が「アメリカの風景を荒廃させている」「アメリカのコミュニティの経済の成長力を破壊している」「アメリカ人の生活の質にダメージを与えている」と述べています。 これらの発言は、 先の堤清二さんの書いた一文と照らしてみてもらうと解るのではないかと思いますが、 大都市のことを言っているのではありません。 地方都市のことを言っているわけです。

 1999年に下院と上院の両方でコミュニティにおける快適性の問題に焦点をあてた民主・共和党連立の幹部会議ができたそうですが、 この推進者が大統領選挙で敗れたゴアさんです。 ゴアさんはどちらかというと環境保全型のまちづくり派のようです。 このように、 国もそういうことに取り組んできているし、 いろいろな州にオレゴン州で始まっているような活動が徐々に広がっています。

 ここで、 モエ氏はスプロールというものを、 コミュニティの縁から広がる、 つまり市街化の端の方から広がる、 十分に計画されていない、 低密度の、 何となく広がってゆく開発であると定義づけています。 そして、 スプロールがなぜ問題かについては、 要するに「損をしているからだ」と言っています。 失われる空き地や農地によって損をしているし、 通勤時間のような時間で損をしている。 税金で損をしている。 最終的には、 生活の質を着実に浸食されることによって損をしているというわけです。

 「長時間の通勤により家族との時間は少なくなる」「静かなまちが、 道路の拡幅により破壊される」「歴史的なランドマークが取り壊され、 埋立地に運ばれる」「あらゆる場所がどこでもないNo-placeに見えることになる」というようなことを彼は常に繰り返し言っています。

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