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これは1980年代から90年代に建てられたダルムシュタットの団地です。 写真で見ると1棟の建物に見えますが、 1軒1軒がそれぞれ違う分譲住宅です。 Bプランに従って、 屋根の高さや方向、 勾配が決められています。 カーポートの形がそれぞれ違うことで、 家が違うんだなということが分かります。
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もう少しゆったりとした建て方をするとこうなります。 戸建てや2階建が建ち並ぶ新しい住宅団地です。 こうした新規住宅地を作る場合、 まず最初に道路や歩道、 並木が計画され、 その後に家をはめ込んでいくのがドイツのやり方です。
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今の住宅団地に通っている生活道路です。 ここで見ていただきたいのは、 電灯や並木、 歩道の取り付け方です。
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同じ団地の中で、 敷地がひとつ空いているのを見つけました。 しかし、 この団地の詳細計画は非常にしっかりしているので、 両隣の住人もこの敷地に家が建つときはだいたいどんな家が出来るのかが分かります。 同じ高さ、 同じ幅、 同じ屋根勾配の家が出来ます。 日本に比べると相当に厳しい規制なのですが、 この規制は住人にとっては住環境が悪化しないという安心感につながるのです。 日本はドイツとは反対で、 自分の敷地内は何をやっても自由ですが、 反面、 住宅の快適度が続く保証はないということになります。
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空いた敷地に新しい家が建ちました。 隣家と比べると色も屋根の材質も違うのですが、 規制をきちんと守って建てられた同程度のボリュームの家なので、 後ろの緑地が潰されることはありません。 ドイツのまちづくりは最初にインフラがきちんと出来、 どんな家を建てるのかも決められた上で少しずつ街が出来上がっていくのです。
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フランクフルト・レイマー広場のすぐ裏にあるザール・ガッセという通りです。 ここの建物もBプランによって高さや用途がきっちり決められています。 ですから建築家の腕のふるいどころがないように思われるかもしれませんが、 規制はあってもこのようにいろんなデザインが可能なんです。
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お金持ちになると、 住宅を買うというより環境を買うという意識が強くなるようです。 この写真ではわりと通りに近いところに家が建っていますが、 広い林の中にあまり目立たない家が建っています。
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道路が狭いのも、 この住宅地の特徴です。 あまり車が通らず、 鬱蒼としているほど緑が多い環境を買うのがお金持ちです。
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そのお金持ちの住宅地から歩いて4〜5分の所に繁華街があります。 路面電車も通っている便利なところです。 ここも4〜5階で高さがそろっている街並みです。 1860年頃の建物ですが、 古い建物をストックとして良く手入れしながら使っています。
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ここは7〜8階建に高さを規制しています。 ここの所有者の誰かが「お金がないから7階建に出来ない。 2階建にしたい」と言っても、 その要望は通らないのです。
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今まで見てきたスライドには広告があまり写ってなかったのにお気づきでしょうか。 実際、 町中では広告があちこちに散乱しないよう、 このような広告塔にまとめて掲示されるようになっています。 郊外で広告をほとんど見かけないのは、 広告塔には建築許可が必要で、 普通の広告は大半がはねられてしまうからです。
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ドイツでは高層ビルが建ち並ぶ都市はほとんどありません。 フランクフルトぐらいでしょう。 高層ビルを作るかどうかも市議会で決めて、 Bプランを作りながらまちづくりをしています。 戦前までのフランクフルトは木造の建物が並ぶ非常に綺麗な街だったのですが、 戦災で大部分が焼失してしまいました。 その後、 1970年代までは高層ビルが建つことを許していなかったのですが、 このように1970年以降、 高層ビルが建ち並ぶようになりました。 当時は私達も「フランクフルトに高層ビルは似合わない」と言っていたのですが、 こんなふうになってみると、 これはこれで綺麗な風景だと思えるようになりました。
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ただしフランクフルトの高層ビルは、 このようなドームなど歴史的に重要な建物がある周辺では造られていません。
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ダルムシュタットの一般的な道路。 商店と歩道、 その先には路面電車と自動車が共存しています。 このような道路の使い方に注目しつつ、 次のスライドを見て下さい。
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フランクフルトの商店街ツァイル通りです。 ここの商店街も以前はダルムシュタットの道路のように、 道路は歩道+路面電車+自動車という使い方をしていました。 しかし、 プランニング次第で、 このように歩行者専用道にも出来るということを分かっていただきたいと思います。 ただ、 歩行者専用道にしたことに批判がないわけでもありません。 商店が閉まると人通りがパッタリと絶え、 夜8時以降や日曜になるとここを浮浪者や麻薬中毒者達が占拠してしてしまうのです。 治安が悪化して良くないから1本ぐらい車が通れる道を作ってはどうかという案も出ています。 どんな道路にしたらよいのかは、 今後もいろんな案が出てくると思います。
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日本でもそうでしょうが、 買い物通りをプランする時、 歩行者専用に出来ない、 どうしても車を通さないといけない場合があると思います。 これは車を1車線だけ通して、 両サイドには商店が並んでいる道路です。 道路もカラー舗装にして、 速度を出しにくくしました。 これだと人も乳母車も自由に道路を交叉できます。 こちら側からあちら側のお店のはしごが可能です。 私は以前は車と人が買い物通りなどで共存するのは無理だと思っていましたが、 これならなんとかやれそうだと思いました。
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路面電車が片側に通っている道路です。 路面電車を片側に寄せておくと、 少なくとも一方から降りた人は車道を横切らず安全です。 また、 注目して欲しいのは、 並木が整備された自転車道です。 並木があることで電車の路面からも切り離されていて、 小さな子どもが自転車に乗っていても安全ですし、 なかなか良くできた作り方だと思います。
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見ていただきたいのは、 車の駐車場を一部分カットして自転車のための駐輪場にしていることです。 自動車と自転車は同等の権利を持っていることを分からせてくれるやり方です。 自転車のために町中にきちんと整備された施設があると、 自転車を使う人が自然に増えてきます。 そうすることで、 市内の車の数も減らすことが出来ると思います。
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ダルムシュタットのルイーゼン広場です。 全面がカラー舗装された歩行者専用道になっていて、 歩行者もいれば自転車も走るという空間になっています。 ここには、 バスと路面電車も乗り入れています。 けっこう発着が多いのですが、 私は警笛を聞いたことがほとんどありません。 バスや電車の運転手は路上の相手が気が付くまで気長に待つという感じです。 事故がないことはないのでしょうが、 ガードレールや柵は見られません。 この風景に比べると、 日本はあまりにも安全を意識しすぎているのではないでしょうか。 安全を表に出しすぎると、 景観や住み良さが壊れてしまうことにつながりかねないと思います。 私の実家は愛知県の一宮ですが、 そこの大江川に今では高い柵が作ってあって川で遊べないようになっているんです。 おそらく何か事故があったとき、 役所が責任をとらされないようにということなんでしょうが、 そういう発想でまちづくりを進めると街はつまらなくなってしまいます。 ドイツの場合はそこまで徹底した安全策を採らないかわり、 人間同士がお互いの良識で街を壊さずなんとかうまくやっています。 そうしたまちづくりに注目していただきたいと思います。 以上が生活する視点で見たドイツの街です。 では次に、 このようなドイツの街がどんな仕組みでコントロールされているのかを見ていただきます。
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