近年のドイツにおける都市計画の動向
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ドイツのまちづくりの仕組み

 

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ドイツの街は点在して存在する
 ドイツの街から汽車などで旅行すると、 すぐに街並みは途切れ、 郊外、 そして農村の風景になり、 しばらくすると次の町が現れます。 つまり、 街と街は離れて点在しており、 日本のように街が帯状にずっとつながっているという風景にはなりません。

 その理由の一つにはドイツの地形は平坦で山が少なく土地が多いこともありますが、 もうひとつ大きな理由として、 都市と郊外をはっきり分けて考えるという姿勢が現代まで受け継がれていることがあります。

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フランクフルトの古地図
 そのまちづくりの姿勢は、 こうした昔の地図をみるとよく分かります。 塀を巡らせた都市(Stadt)の外は、 農地であり森であるランド(Land)なんです。 お百姓さんも自分の家は都市の中にありました。 ですから、 ドイツの都市計画は都市と郊外をはっきり分けるのがもっとも基本的な考え方でした。

 私が日本に帰ってきてよく思うのは、 日本の郊外で都市的に整備されていない道路が作られ、 家がバラバラと出来、 学校とかの公共施設が後から作られていくことの歯がゆさです。 まちづくりの順序が逆じゃないでしょうか。

 ドイツではまず都市の輪郭を作ってからそれに合う家づくりを考えていきます。 住宅が足りないようだったら、 そこで初めて都市を拡大することを考えます。 まず都市の壁(輪郭線)を作り、 その中で必要なもの、 道路や学校などをつくり、 その後に家が出来るというのがドイツのまちづくりの基本です。

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Bプラン
 ですから、 ドイツの都市計画とは市内を対象にしたものです。 おそらく世界で一番細かい規制がとられていると思います。 このスライドは、 個人の民間の敷地を規制した計画図で、 敷地の中の黒く塗られた部分が家を建ててもよい空間で、 それ以外は建ててはいけないのです。 このような図をまず役所が作っておくのです。

 誰かがここに家を建てようと思ったら、 まず建築申請をしなければなりません。 その申請が計画に合っているかどうかをチェックされた上で、 初めて許可が下りるのです。 消極的な都市計画だと言われればそうかもしれませんが、 こうしたBプランをつくるのには非常に時間がかかり、 だいたい2年ぐらいかかります。

 ただし、 市内全部にこうしたBプランがかかっているわけではありません。 ほとんどの市域にはかかっていません。 かかってないところではどうしているかというと、 建築許可の基準としてはたった一言「その周辺になじむ建物であること」という条項があります。 その条項をもとにして、 許可が下りたりはねられたりしています。

 このことをドイツ語で「アインフューゲン」と言いますが、 これは何か欠けたものを埋め込むという意味です。 つまり、 建物で言えば周辺と同じような物を建てなさいということだと理解してよいと思います。 周辺が住宅で3階建なら自分のところも住宅で3階建にしなくてはいけません。 このような強い規制でまちづくりが行なわれています。

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ランツフートの広場
 ここはランツフート、 南ドイツの綺麗な街です。 道路が少し広がって真ん中に広場があり、 ここでマーケットが開かれることもあります。 右側に見える黄色い建物が市役所です。 ここには木で出来た精巧な街の模型があり、 それがこの街のBプランになっています。

 Bプランは必ずしも図面でなくてもいいわけで、 この街のように模型だったり文書であってもいいことになっています。 どちらにしてもそれはまちづくりに関する条例ですから、 将来にわたって同じ街並みが続くよう計画されています。

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