近年のドイツにおける都市計画の動向
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

 

中心市街地とは何か

 

画像ka34
ツウィンゲンベルグ(Zwingenberg)のマルクト広場
 中心市街地の活性化というテーマに入る前に、 そもそもドイツの中心市街地とはどういう存在なのかを考えてみたいと思います。

 ドイツには中世に作られた伝統的な街と、 計画性がなく自然発生的に拡大した街の2種類があります。 ここで取り上げるのは前者の街で、 ここにヨーロッパの都心特有の形態があります。

 スライドにあるように、 それがどんな小さな街であろうと、 計画された街には中心にマルクト広場があります。 ここはフランクフルトとハイデルベルグの中間にある小さな街ツビンゲンベルクで、 特に有名な観光地でもなく、 ドイツでよく見られる歴史的な街の広場です。 広場には必ず噴水があり、 それを囲むように家並みがあり、 その中央に市役所があります。 朝市が出たりするにぎやかな場所です。 また、 マルクト広場の回りには薬局があるのも特徴です。 教会や学校は、 広場から少し離れた所にあります。

 余談ですが、 市役所のことをドイツ語でラートハウスと言うのですが、 市役所の地下には必ずレストランがあり、 それをラーツケラーと言います。 なぜ市役所の地下にレストランがあるのか分かりませんが、 今でも多くの街にラーツケラーがあり、 割合おいしい食事とワインを出すことで知られています。 知らない街でレストランを探すときは、 市役所の地下へ行くのがおすすめです。

画像ka35
フランクフルトの中心市街地(シュタット・ミテ)
 街の中心のマルクト広場には噴水があり、 その近くに大聖堂があります。 それを囲むように出来ている古い街並みをアルト・シュタット(Altstadt=旧市街地)と呼びます。 ここにはバロック様式の石造りの建物やハーフティンバーが見られ、 小さなお店があります。

 旧市街地の外側に広がる街並みがシュタット・ミテ(Stadtmitte)ですが、 これが日本で言う都心であり、 商店街が建ち並らぶ中心市街地です。 どの街でも「シュタット・ミテはこちら」の標識があり、 ドイツ人の考える中心市街地はここなんだということが分かります。 ですから、 ここが衰退するのは一大事だという住民のコンセンサスがあるのです。

画像ka36
フランクフルトのインネンシュタット(市街地)
 中心市街地の外側には、 都市内部という意味のインネンシュタット(Innenstadt)が広がっています。 中世の市壁で囲まれていた部分のことで、 緑色の部分は昔のお堀を埋めたてたところです。 「(フランクフルトの=トル)町へ行く」と言えば、 だいたいこうした市街地の中へ行くことを意味します。

画像ka37
計画された街並み
 市街地の外側になると、 住宅や事務所、 工場が建ち並ぶシュタット(Stadt=市、 市域)になります。 新しい団地を作るときも、 必ずまとめて作り、 郊外には絶対スプロールさせないのがドイツの基本的なまちづくりのありかたです。 今でもシュタット(都市)とランド(郊外)は明確に分けて考えられています。

 以上がドイツ人が考えるまちづくりの仕組みです。 では続いて中心市街地の衰退と活性化について、 事例を紹介しながら見ていきましょう。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ