魅力ある個性的な“地域デザイン”を求めて
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2。 日本のこれまでの都市づくり、
地域づくりの反省

 

 では、 これから日本のまちづくりはどうだったかを検証していきたいと思います。

1 急激な近代化
 明治以降、 日本は欧米のまちに追いつこうを合い言葉に、 中央官僚が中心になって都道府県から市町村への通達行政で上意下達方式のまちづくりを進めてきました。 進めるにあたっては、 都市計画標準、 土地区画整理標準などのマニュアルを作って、 どんどん全国へ流しました。 もちろん、 それはそれで一定の成果はあったと思うのです。 一定の指標がなければ、 みんなが混乱して何をしていいか分からなかったでしょうから。

 しかし、 そうしたマニュアル化が百年近くも続いたことで、 地方都市の個性がどんどん失われていくことになったのです。 地方の均質化が進んでいったと言ってもいいでしょう。

 実はそうした弊害にずっと前から気づいていても、 なかなか言えなかったのが行政や専門家の本音かなと思います。 しかし、 バブル経済も崩壊し、 日本が成熟的停滞期と言われるようになった昨今、 やっと自分たちの足元が見えてきた。 そこで、 ようやく「人間サイズのまち」といった本質論が語れるようになったところです。

2 都市化による宅地整備
 急激な近代化に伴って都市部に人口や産業が集中するようになると、 宅地や産業用地をどんどん供給する必要が出てきました。 全国のかなりの部分で土地区画整理によるまちづくりが進められ、 都市郊外にも均一的、 均質的な宅地や住宅がひしめくことになりました。

 もうひとつあげておかなくてはいけないことは、 機械力の急激な発展で、 昔だったら人の力の及ばないような条件の土地でも、 あっという間に真っ平らな宅地に造成できるようになったことでしょう。 まちづくりの専門家も土地の個性などは気にしないで、 全国各地で同じようなまちづくりをどんどん進めていきました。 その結果、 その土地を生かした個性的な住宅群など一つも生まれないまま今日に至ってしまったわけです。

3 地方の都市計画、 都市デザイン能力の欠如
 行政の方がこのことを聞くと怒り出されるかもしれませんが、 やはり地方の行政マンの中にはまちづくりを勉強してない人がけっこういるように見受けられます。 都道府県レベルではましかもしれませんが、 市町村レベルになると測量しか知らない人がデザインも担当しているということがよくあります。 地方自身が良いものを良いと理解できないまま、 まちづくりを進めているのです。 特に公園や住宅地を作る場合など、 そんな例がかなりあります。

4 市民のまちづくり、 地域づくり教育の欠如
 行政だけでなく、 市民の側にも問題があります。 特に地方在住だと都会に劣等感を持っていて、 自分たちの生活スタイルは遅れているとか、 方言が恥ずかしいという意識が強く、 自分たちの誇りを忘れてしまっているようです。 それに慣れてしまっていることも問題です。

 以上のように1から4までの要素がいろいろ組合わさって、 地域の魅力や個性を喪失させていったと言えるのではないでしょうか。 逆に言うと、 これからのまちづくりには地方の自信と誇りが根底に必要ではないか、 それこそがまちづくりへのベースになるだろうと私は考えています。 そのためにも、 “地域の文脈の把握や継承”が必要なわけで、 表題にもその言葉を使いました。

5 行政、 大学、 コンサルタント等の縦割りシステムの弊害
 最後の反省点としてあげたいのが、 縦割りシステムの弊害です。 日本にはどの分野でも縦割りシステムがありますが、 これからは他分野の人と協力し合うことがどんどん必要になってくると思います。 特にまちづくりに関しては、 専門分野にしがみつく必要はないのです。 構造や設備に関しては専門家は必要ですが、 地域デザインや地域計画の分野では一般の商業者や住民の方がずっと能力を持っていることもあります。 大学の先生もそうした人たちに教えられることもあり、 ましてやコンサルタントともなればそういう体験がずいぶんあるはずです。

 ですから、 コンサルタントとしては広く浅く理解する能力を備え、 その上で自分にない専門分野に関してはいろんな人とコラボレーションしながら仕事を進めていけばいいのではないでしょうか。 今までは、 建築学会とか土木学会、 造園学会など自分の属する範囲だけで頑張ろうとしすぎたんです。 しかし、 これからは自分から他分野にどんどん乗り込み、 言いたいことを言って協働しながら前へ進んでいくことが必要だと考えています。

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