魅力ある個性的な“地域デザイン”を求めて
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4。 博士論文の構成と明らかにしたこと

 

博士論文の構成

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博士論文の構成 [366 412]
 こうして考えた結果を含めて、 博士論文にしていったわけですが、 論文の構成としては、 図のように序章から第6章までの7章構成になっています。

 序章は「研究の背景と目的」などの前書きです。

 1章では、 地域デザインが都市デザインとどう違うのか、 まちづくりとどう違うのかといったことを含めて「地域デザインの定義」を述べました。

 それから「地域の文脈を把握するための要素に関する仮説」として、 地域には文脈があり、 それが先ほどの五つの要素で構成されるという仮説を示しています。

 2章からは私が関わってきた事例をもとにした各論です。

 「復興まちづくりにおける街並みデザイン」(西宮市森具地区)では、 震災復興土地区画整理事業に、 共同住宅建設事業も含めて携わったわけですが、 その中で地域の文脈の継承にいかに取り組んだかを論じています。

 3章「上海市都心部における沿道景観整備システム」では参加させていただいた中国の同済大学と大阪市立大学の共同研究のなかの、 上海における地域の文脈の継承に基づく景観デザインシステムについて検証しております。

 4章「丘陵田園地域における新都市開発計画」は、 宝塚新都市の計画で地域の文脈について検討したことを論述しています。

 5章は「地方小都市の総合計画における地域資源の評価と効用」として私の生まれた温泉町という但馬の小さな町の町勢振興計画と山村活性化ビジョンにおける地域資源の評価分析と、 それを活かした計画づくりについて述べました。

 こうした2章から5章までの各論を6章でまとめ、 「地域デザインのための地域の文脈の把握と継承に関する実践的手法の構築」として、 提案も含めて述べております。

 私の場合は、 大学でずっと研究しているわけではありませんので、 現場で体験したことなども含めた実践的な研究ということが、 一つのポイントかと思います。 その辺がアカデミックな論文にはない特徴になっていると思います。


博士論文で明らかにしたこと

 まず、 1章で地域の文脈ということを仮説したのですが、 研究事例である2章から5章において、 (1)地域のコミュニティ、 (2)地域資源、 (3)地域の課題と目標、 (4)地域づくり関係の計画情報、 (5)地域の沿革という五つの構成要素ごとに、 どういう角度で仮説を検証できたかを書いています。

 その結果明らかになったのは、 地域の文脈は五要素で捉え把握できるということ、 地域の文脈というキーワードによって情報の共有化が促進されるということです。 今まで、 それぞれ同じような事を言っているのだけれども、 考え方や立場によって、 共通認識に至らないというようなことがあったかと思いますが、 地域の文脈と構成要素をはっきり定義づけることによって、 情報の共有化や理解が促進されることが分かったわけです。

 また地域デザインに必要なデータや情報を調査分析することによって、 地域の文脈を継承した地域デザインが可能になることもわかりました。 可能になることがわかっただけでは駄目で、 実証されないといけないのですが、 一つの突破口として方向性がわかったという段階です。

 さらに地域の文脈に関わる情報を、 地区カルテや模型とか図面等でわかりやすく表現するということが大切です。 これは以前からいろんな人が努力をしておられますが、 住民の方にも理解していただけるよう、 よりわかりやすい形で表現する技術がやはり大事だと思いました。

 こうして地域の文脈というキーワードでいろんな事を考えて、 それをもとに計画を進めることによって、 魅力的で個性的な地域デザインができるということがわかったわけです。

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