魅力ある個性的な“地域デザイン”を求めて
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9。 地域デザインの為の
地域の文脈の把握と継承に関する
実践的手法の構築

 

地域デザインのプロセス

 このように四つの各論で、 五つの要素を元に地域の文脈を抽出・把握し、 それを継承した計画立案をし、 その計画を受けて地域デザインにしてゆく方法を紹介してきました。 ここで私はその地域デザインのプロセスが大事だと思っています。

 従来型のプロジェクトですと、 マニュアルや標準作業仕様等で、 通り一遍の分析評価しかしなかったのですが、 それでは地域の文脈を継承した地域デザインは生まれませんし、 住民の人たちも関心を持ちません。 私が提案したような手法では、 色んな可能性が生まれます。 21世紀に向かってこのような方法が有効なのではないかと考えます。

 時間がもうございませんが、 こうして得られた知見をどのようにして実践に結びつけているかを、 簡単に触れたいと思います。


福山市中心市街地活性化基本計画

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福山市ミニ回遊ネットワーク整備計画
 これは福山市の中心市街地での試みです。 ここは戦災復興土地区画整理事業が行なわれていますが、 最初に写真でご紹介したように街区の背割りに路地が残っていることが見逃せません。 また街区の中にあんこ状に小さな公園がたくさんあることも特徴的でした。

 そこで、 これらのミニパークを少し風通しを良くしようと考えました。 大きな箱ものをバンバンつくる中心市街地活性化ではなくて、 ミニ回遊ネットワークの整備で地道にやっていこうという提案をしたわけです。 そして今までは道路に向かっていたお店でも、 公園に向かって開けてもらって、 カフェテラスをつくったりすることも可能にしていこうと思いました。 それによって回遊性が高まるわけです。


北九州市学術・研究都市第2期基本プラン

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景観形成計画図
 北九州市学術・研究都市の計画対象地域には舟尾山という山があります。 その山を中心に400mから500mの円を描きますと、 神社が等距離に二つあります。 それから小山があったり、 砦跡があったりします。

 舟尾山は小さい70mくらいの山なんですが、 周辺が360度見わたせるわけです。 北九州の洞海湾もよく見えますし、 古代の遺跡みたいなものもありますから、 古代人が海から上がってきて、 すぐ目についたこの山に社(やしろ)を構えたのだと思います。 岩山でして、 舟の底のような岩が出ているので舟尾山と名付けられたようです。

 そこでこの舟尾山を中心にまちづくりをしていこうということで、 舟尾山をめぐる回遊ルートをメインにして大学ゾーンなどをはりつけていくことを考えました。

 そして、 こういう山や社など、 ビスタやランドマークになるような資源を活かしたランドスケープやアーバンスケープを形成してゆきましょうと提案しました。

 例えば、 細街路の方向が社の森を向いているとか、 カーブを曲がると舟尾山がよく見えるとか物語性のある地域デザインにしていく工夫をしたわけです。


東播磨情報公園都市基本設計

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自然共生型土地利用手法検討例
 東播磨情報公園都市の研究会では自然共生型土地利用手法の検討を行いました。 道路も定規で書いたようなものはやめて、 地形なりに通していこう、 あるいは斜面をばさっと削らないで、 幅員の大きな道路ならば2段にするとか、 あるいは一部トンネルにするなどといった提案をしました。

 また既存の集落の単位が自然に山の中に分散配置されるような、 逆に言うと既存集落の山の中への良い意味のスプロールを仕掛けるミニクラスターという考え方でまちをつくっていったらどうかという提案もしています。


北九州市大理本町地区開発構想

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北九州市大里地区開発整備構想図
 北九州市門司区での再開発構想はサッポロビールの工場跡地を含めて整備するというものでした。 通常ならば北九州は北九州のことだけ、 下関は下関のことしか考えない。 ましてや後背地の山などは視野に入れないんです。 我々はそうではないでしょうということで、 背山の戸ノ上山から海峡あるいは対岸に行く縦の軸線と、 門司港から小倉の都心部につながる横の軸線との交差点と捉え、 それを活かしてまちづくりをしていこうという提案をしました。

 海峡を舟が行き交うわけですが、 それが建物の間のスリットから見えるように施設を演出するとか、 あるいは参勤交代のおりにここから舟に乗って下関に渡って行ったという大里往環というルートがあるのですが、 それを再生しようと考えました。 またサッポロビールの煉瓦造りの工場の一部を残そうという提案もしました。


城陽市寺田地区安全市街地形成
土地区画整理事業調査

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地域の文脈を配慮した区画街路構成案
 京都府下の密集市街地である城陽市寺田地区の安全市街地形成土地区画整理事業の調査では地区内の緑地分布を調べてみました。 昔に出来たまちなので、 細い5mくらいの道が★?本くらいあり、 道と道の間隔は100mくらいです。 これは奈良時代に条里制に則って区画割りされているわけです。 間に排水路となっている背割り線が1本あるんですが、 排水路まで50mです。 ですから両側で約100mになるわけです。

 その結果50mの奥行ある宅地に三軒くらい住宅がはりついているわけですから、 玄関口が接道していないものも多いわけです。

 こういうものを普通に区画整理しても駄目ですよと、 やはり地域の文脈を読みとりながらまちづくりをしていきましょうと提案しました。

 ここでは民家の中庭や少し抜けているような所をうまく繋ぎながら道をつくってゆき、 あとはフットパスでいいのではないかと考えました。 これで最低限の消火活動が出来ます。

 本当は森具などでもこういうやり方が妥当だったのではないかと思います。 森具でも地域の文脈を読み取りいかに生かすかに取り組みはしましたが、 緊急事態でしたので一部ドラスティックな整備になってしまったことは否めません。

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