犯罪防止に都市環境デザインはどう貢献できるか
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4. 今後の課題

 

自治体の責任
 大阪は東京に比べて半分の明るさしかないと言われてきました。 東京都下では、 蛍光灯なら40W(FL20W×2灯用)、 最近はほとんどが水銀灯80Wです。 大阪の多くの都市の蛍光灯20Wは何と言っても明るさ不足で、 現在の2倍の明るさは必要だと思います。

 実際、 大阪で街の防犯診断をして、 危険を感じるかどうか、 あるいはどういう場所で危険を感じるかを聞いてみますと、 夜道が暗くて不安だと思っている人が大変多いということが分かりました。

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傷んだ防犯灯の例
 また、 もうひとつ問題なのは、 防犯灯のメンテナンスが悪いことです。 調査をしているときあちこちで見かけたのですが、 水銀灯のカバーが錆びて真っ赤になっていたり、 カバーがとれていたりするところが多くありました。 これでは初期の明るさの1〜3割しか出ていないはずです。 やはり照明のメンテナンスもしっかりやってほしいと強調したいと思います。

 さらに、 ここで言っても始まらないことではありますが、 東京都の場合、 23特別区の街路照明の設置・維持費は全額が公費でまかなわれています。 大阪府の場合、 大阪市の水銀灯は別にして、 防犯灯は市が設置しているところもあれば、 一部市の負担で主に町内会が設置し、 維持管理しているところもあります。 つまり、 かなりの金額を町内会で負担しているということです。

 東京都民は全部自治体が持ってくれているのに、 なぜ大阪府下では地元民が大半を負担しなければいけないのか、 と疑問を持ってしまいますが、 これは大きな問題だろうと思います。

 因みに「防犯燈等整備対策要綱」というものがあります。 これは昭和36年3月に閣議決定されました。 それから41年たちましたが、 ここで書かれた内容は今でもちゃんと通用しています。 例えば、 防犯灯設置のため市町村が補助金を出すこと、 電力会社は防犯灯設置のため電柱を貸すことなどです。 その年から全国で「明るい街づくり運動」が展開され、 20Wの蛍光灯が設置されましたが、 41年経った現在でもほとんど20Wです。 これで良いのでしょうか?。

新しい技術
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スーパー防犯灯/東大阪市・近鉄布施駅前
 最近新聞・テレビで紹介された「スーパー防犯灯」をご存じの方もいらっしゃるでしょうが、 これは東大阪市に設置され10月末から運用されています。

 写真は、 日本で最初に設置された東大阪市・近鉄布施駅前のものです。 上には100Wの水銀灯が付いており、 下の方には大阪府警の「110番指令センター」に直通の押しボタンがあります。

 このボタンを押すと、 まず赤色回転灯が動き出し、 そこでひったくりが発生したことを示します。 そして、 ドーム型カメラが作動し、 道路の監視を始めるのです。 このスーパー防犯灯がここでは80m間隔で18基設置されています。 1基が250万円(材工共)です。

 このスーパー防犯灯は、 関西では千里ニュータウンと大阪市平野区にも設置されます。 全国では十数カ所設置されています。 大規模な施設としては、 東京の歌舞伎町に50基設置されます。

 昨今は、 普通の防犯灯だけではひったくりが防ぎきれなくなっているのが現状ですから、 このように監視カメラを付けて犯人検挙に役立てることにも積極的になってきました。 日本がこういう風になってきたのはごく最近のことですが、 欧米ではずいぶん前から街に多数の監視カメラを取り付けていました。 欧米だけでなく、 先般関西ブロックで視察してきました中国・上海でも街に多数の監視カメラが取り付けられていました。 ここまでしないと防犯対策にはならない時代になっているのではないかと思います。

 繰り返して申し上げておくと、 大阪の2倍の明かりがあるという東京都23特別区の街路照明は、 街灯の75%が水銀灯80W以上、 その他は蛍光灯20W2灯用、 設置間隔は平均26mです。 ちなみに大阪は試算で平均41mです。 やはり、 大阪の2倍の明るさがあるようです。

 また、 警察の人員も大阪の約2倍です。 犯罪捜査のノルマが東京1とすれば、 大阪は1.9になるのです。

 最後になりましたが、 大阪府警の人は「検挙なくして防犯なし」ということをよく言われています。 最初にも言いましたが、 凶悪犯の半分ぐらいしか検挙できないぐらいに検挙率が低下している現状、 犯罪を防ぐための環境づくりにいろんな分野の協力が必要になってきます。 照明がそのための一端を担い、 犯罪に強いまちづくりの活動を息長く続けていけたらと思っているところです。

 これで私の話を終わります。 ご静聴ありがとうございました。

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