生きた公共空間、生き生きとした公共空間
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改めて、 公共空間について考える

 

公共空間とは?

 まずこの調査を実施する前に、 「公共空間」の定義について問い直してみました。


 ●公共空間とは何か

  • 公共空間、 公有地(所有形態)
  • 公共施設
     道路、 公園その他政令で定める公共の用に供する施設(都市計画法第4条)
  • 公的空間
  • Public Space
 
 実は都市計画関連の用語辞典を調べても「公共空間」という言葉はありません。

 近い言葉では、 都市計画法第4条に道路、 公園などを指す「公共施設」という言葉が出てきます。 また第11条には「公共空地」という用語があって、 公園、 緑地、 墓園などがこれに入ります。

 いずれにしても、 「公共」の中身が何を指すのかによると思います。

 所有形態から言えば、 行政が持つ公有地と民有地にはっきり分かれますが、 これが「公共空間」という概念になると多少あいまいになって、 例えば民有地でもパブリックに開かれている部分については公共空間に含まれると思います。

 英語でいう“Public Space”という概念が一番ピッタリきます。

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空間の所有形態と利用に関する分類
 これは鳴海先生が著作『都市の自由空間』(中央公論社)の中で、 オープンスペースに限らずいろんな空間を公有とか民有とかではない「自由空間」という概念で捉えようとして整理されたものです。

 これにならって、 私も「公共空間」の「公共」という言葉を少し拡大解釈して捉えています。 行政が管理している所だけではなくて、 共有的な空間、 あるいは民有でもパブリックな機能を持った場所に着目して調査していきました。


公共空間と法制度と不自由

 公共空間の問題点として、 いざ利用しようとするといろいろな“縛り”があって自由に使えなくなっているということがあり、 それが本調査の背景にもなっています。

 後でご紹介する事例でも、 このような法規制の問題を一つ一つクリアしなければなりませんでした。

道路法第32条
 皆さんはよくご存知かもしれませんが、 道路法第32条では道路を継続して使用する行為が制限されています《道路法 第三節 道路の使用 第三十二条(道路の占用の許可)》。

 ただし電柱、 下水道管、 鉄道、 歩廊、 地下街、 露店、 商品置場などの定められた工作物や施設は、 道路管理者の許可を受ければ占用しても良いことになっています。

道路交通法第76条
 道路交通法では、 道路を車や歩行者が行き来することを妨げてはならないと定めていて、 いろんな禁止行為をあげています《道路交通法 第五章 道路の使用等 第1節 道路における禁止行為等 第76条(禁止行為)》。

 酒に酔ってふらついて歩いたり、 ねそべったり座ったりしゃがんだりする行為も、 交通の妨害になる場合は禁止されています。 近頃はジベタリアンと呼ばれる若者が地べたに座ったりしゃがんだりしているのを公共空間で頻繁に目にしますが、 これらも交通の妨げになるときは問題になるわけです。

 それから、 ローラースケートや球技も禁止されています。

道路交通法第77条
 道路を占用するだけではなく使用する場合にも規制があります《道路交通法 第77条(道路の使用の許可)》。

 先ほどの露店や屋台の人達は公安当局に対して使用許可をもらわなくてはなりません。 また天神祭りのような伝統的に道路を使用して行われている祭礼行事についても、 毎回許可が必要ですし、 映画のロケも規制の対象になっています。

軽犯罪法第1条
 さらにオープンスペースでの自由な利用行動に関しては、 軽犯罪法でいろいろと規制しています《軽犯罪法第1条》。

 これによると、 ホームレスは軽犯罪者になってしまいますし、 「公務員の制止をきかずに、 人声、 楽器、 ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者(十四)」「体の一部をみだりに露出した者(二十)」「たんつばを吐く(二十六)」などは拘留または科料に処するとされています。 これらはまだ見当がつくと思いますが、 「他人の進路に立ちふさがって(中略)立ち退こうとせず、 又は不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう者(二十八)」というような行為についても取り締まりの対象になっています。

 

 これ以外にも実際に公共空間を利用しようとすると、 食品を扱う場合には保健所に申請が必要ですし、 消防署にも届出が必要な場合もあります。

 このように様々な規制に対する許可を得ないと公共空間を利用できなくなっています。 このことを念頭においていただきながら、 調査事例のいつくかをご覧いただきたいと思います。

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