生きた公共空間、生き生きとした公共空間
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ


屋外生活を取り戻すには

 

「私」のにじみ出し

 公共空間を考えた場合に「公と私」という視点がありますが、 それに絡む話題として、 日本を含む東アジアにわりと多い、 自宅前に鉢植えを置くという行為があります。

画像sa38
自宅前の勝手花壇
画像sa39
街路樹の根元に土の部分がある勝手花壇
 これは昨年私の研究室の4年生が神戸市で路地裏の緑を調べた時の一事例です。

 この「勝手花壇」という言い方は、 一昨年のJUDIの行事で横山あおいさんが使っていた言葉を勝手に拝借しています。

 歩道上に市民が勝手に鉢植えを置いたりして手を加えたりしていますが、 これは公共空間を許可も得ずに占用しているということなので、 本来は違法な行為でしょう。

画像sa41
勝手花壇が形成される位置(神戸市灘区の例)
 この勝手花壇は、 神戸に限らず日本の都市内ではどこでも見られますが、 神戸市灘区のある地域で統計をとったところ、 家の前面に接して置いている例が沢山ありました。 家の前に歩道がある場合には、 車道との境界部分の街路樹の根元などにも置かれていたりしました。

 これはある意味で、 公共の領域を私物化して使っているということになるわけですが、 素材が花や緑ということもあって、 わりと黙認されているのではないかと思います。

 JUDIの調査とは別に大阪市役所の道路管理者の方にお話を聞きに行ったことがあるのですが、 そのときにもこういった行為をある程度認めていく方向で進めようという話が出ていました。

 例えば、 ある道路施設の中に植栽マスなどを作っていくときには、 最初から住民が触れる部分を作っておこうといった試みもなされているようです。


「公」から排除される「私」

 このような「私のにじみ出し」というべきものは昔からありますが、 一方でにじみ出しすぎると困る部分もあります。

 たとえば、 スケートボードなどを行える場所が日本の公共空間にはなかなかありません。 西梅田地区には、 わざわざスケートボードなどの遊技を禁じる表示が置かれています。 また一昨年の12月には茨木市でスケートボード遊びの少年が道路交通法違反で捕まったこともありました。

 このあたりの「公」と「私」のルールづくりが、 今、 求められているのではないかと思います。

画像sa43
ローラースケート、 キックボード、 自転車が交錯する広場(韓国・盆唐NT)
 これは、 韓国の盆唐ニュータウンというところの公園にある広場の風景です。 ここでは禁止されていないのか、 ローラースケート、 キックボード、 自転車などが交錯し、 ぶつかりそうになりながらも子供たちがたくさん集まってきて遊んでいました。 日本の中ではなかなかこういった光景は目にできないのではないかと思います。

 また同じ韓国の一山ニュータウンでは、 都心の広場にスケートボード用の装置が置かれていました。 ドイツの街でも、 マウンテンバイク用の装置などがいっぱい置かれている公園を見たことがあります。

 若者などのアクティビティ自身が変わってきているので、 それに対応した公共空間の整備というものも、 全面的ではないにしろ必要なのではないでしょうか。

 その点においても「公」と「私」というものを整理していかないといけないのかもしれません。


求められるルールづくり

画像sa45
公園の接道部での市民花壇の例
画像sa46
街路沿道における公と私の空間
 今度は合法的に認められて、 公共空間に住民が手を入れている事例をご紹介します。

 これは神戸市の「市民花壇」という結構歴史の長い制度の事例です。 地域の市民団体等に花の苗や種を渡して、 公園や道路の花壇を管理してもらっています。

 このように、 住民に公共空間をうまく管理していってもらう仕組みやルールを作っていけば、 いろんなパブリックスペースがより良く管理されていくのではないかと思います。

 この図は道路を「公」と「私」という視点で概念的に示したものです。 道路は、 道路敷きという公共空間があって、 その両側に私有空間があるわけですが、 先ほどの勝手花壇は公有空間の方に、 私有空間側の個人がにじみ出してやっているわけです。

 一方、 私有空間、 民有地の方にも公的な領域があります。 例えば、 公開空地などもこれにあたると思います。

 公共的な部分で住民側がさわれる場所、 民有地の方で公共的な性格を持つ場所、 そのような公と民の中間領域を上手に整備し、 利用・管理できる仕組みを作っていくことで、 日本の都市空間はかなり豊かになっていくのではないかと私は期待しています。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ