屋外生活を取り戻すには
「私」のにじみ出し
公共空間を考えた場合に「公と私」という視点がありますが、 それに絡む話題として、 日本を含む東アジアにわりと多い、 自宅前に鉢植えを置くという行為があります。
自宅前の勝手花壇 |
街路樹の根元に土の部分がある勝手花壇 |
この「勝手花壇」という言い方は、 一昨年のJUDIの行事で横山あおいさんが使っていた言葉を勝手に拝借しています。
歩道上に市民が勝手に鉢植えを置いたりして手を加えたりしていますが、 これは公共空間を許可も得ずに占用しているということなので、 本来は違法な行為でしょう。
勝手花壇が形成される位置(神戸市灘区の例) |
これはある意味で、 公共の領域を私物化して使っているということになるわけですが、 素材が花や緑ということもあって、 わりと黙認されているのではないかと思います。
JUDIの調査とは別に大阪市役所の道路管理者の方にお話を聞きに行ったことがあるのですが、 そのときにもこういった行為をある程度認めていく方向で進めようという話が出ていました。
例えば、 ある道路施設の中に植栽マスなどを作っていくときには、 最初から住民が触れる部分を作っておこうといった試みもなされているようです。
ローラースケート、 キックボード、 自転車が交錯する広場(韓国・盆唐NT) |
また同じ韓国の一山ニュータウンでは、 都心の広場にスケートボード用の装置が置かれていました。 ドイツの街でも、 マウンテンバイク用の装置などがいっぱい置かれている公園を見たことがあります。
若者などのアクティビティ自身が変わってきているので、 それに対応した公共空間の整備というものも、 全面的ではないにしろ必要なのではないでしょうか。
その点においても「公」と「私」というものを整理していかないといけないのかもしれません。
公園の接道部での市民花壇の例 |
街路沿道における公と私の空間 |
これは神戸市の「市民花壇」という結構歴史の長い制度の事例です。 地域の市民団体等に花の苗や種を渡して、 公園や道路の花壇を管理してもらっています。
このように、 住民に公共空間をうまく管理していってもらう仕組みやルールを作っていけば、 いろんなパブリックスペースがより良く管理されていくのではないかと思います。
この図は道路を「公」と「私」という視点で概念的に示したものです。 道路は、 道路敷きという公共空間があって、 その両側に私有空間があるわけですが、 先ほどの勝手花壇は公有空間の方に、 私有空間側の個人がにじみ出してやっているわけです。
一方、 私有空間、 民有地の方にも公的な領域があります。 例えば、 公開空地などもこれにあたると思います。
公共的な部分で住民側がさわれる場所、 民有地の方で公共的な性格を持つ場所、 そのような公と民の中間領域を上手に整備し、 利用・管理できる仕組みを作っていくことで、 日本の都市空間はかなり豊かになっていくのではないかと私は期待しています。