−紹介する内容は本の目次構成に沿ったものではない。また、図、写真等も含め、鳴海が情報を補いつつ紹介している。
1950年代に再開発が計画され、 大規模プロジェクトで均質化が進んだ。 しかし風俗は生き残る。
また1960年代末には文化的利用に配慮した建物には容積を2倍まで認めるなどの優遇策も取られ、 1981年にはさらなる大規模プロジェクトが構想され、 巨額な費用が投入された。
しかしこれらは新しい発展的な変化を何ももたらさず、 豊富なビジネスは必要以上に追い払われてしまった。
また郊外店舗が便利だとか、 雇用を創出するというのは神話ではないか。 大手小売りチェーンは、 既存のビジネスを徐々に害し、 最終的には一人で商圏を支配することが目的である。 彼らは地域に愛着もなければ、 規模が小さな製造業を育てることもない。 また車社会へ過度に依存している。
とりわけ許せないのは政府が多大な支援をしていることである。 たとえばNYのGiuliani市長も工業用途地域に1.8ha以上の大型店を建てることを許可した。
残念なのは行政の製造業への無関心だ。 関心を持っているのは「都市デザイン、 歴史的な保存と都市計画に関係しているNYの主要な市民グループ」にすぎない。 「NY市の経済発展当局者は、 不動産業界を良く知っていたが、 製造業の方はほとんど全く知らなかった」。 マネー経済偏重を改め、 NYのデザイン志向の製造能力への認識を高め、 その資産の活用に目を向けなければならない。
また著者は大規模がすべてダメと言うわけではない。 むしろ大型小売業は街を必要としているのだが、 気付いていない。 個性的な本屋さんなどは街からも歓迎される。
昔のカフェのように「職場でも家でもないが、 両方にとって必要な社会的な広場であるユニークな施設」が求められている。
やがてマーケットのそばには(古いビルを活用した)レストランができ、 街はさらに活気付く。
市場は低コストでつくられるのが成功のポイント。 「手押し車アーバニズム」とも呼ばれる。 歩いてゆけることも重要。
この点でも本物の市場は、 festival market placeと根本的に違う。 festival market placeは、 ショッピングセンターであり市場ではない。
以下、 市場のホームページから。
総じて、 巨額の公共事業よりも公共市場のほうが、 資本主義的で自由な市場活動を導き地域経済を再建させるといえる。
しかし、 その間、 計画を恐れた多くの製造業が去ってしまった。 銀行はお金を貸さなくなり、 企業もメンテナンス費用をかけなった。
その結果、 パイオニア的な芸術家たちが、 空のロフトを不法占拠し、 SOHOは魅力的で機能的な生活や制作の空間になった。
1969年にSOHOは歴史的地区に指定され、 大規模商業を排除した歴史地区のゾーニングが結果的に小さな商業の活性化をもたらした。 しかしここで重要な事は、 歴史地区の指定以前に、 都市からの支援無しで、 政府の反対にもかかわらず再生が始められたことである。
SOHOは芸術面だけではなく、 新しいビジネスも生み出した。 「最近のロビーにある社名リストには、 出版社、 グラフィック芸術家、 ビデオとフィルム会社、 写真家、 言語訓練学校、 コンピュータ・コンサルタント、 デザイナー、 宝石商をみることができる。 そして、 もちろん芸術家と画廊。 リストは続く」。
いまTriBeCaは子育てのために都市の中で最高の街、 数百の新しいビジネスの街となっている。
同様にシリコン・アレイにも1,100を越える新しい会社が生まれた。
このように「ダウンタウンを再編することは可能だ。 しかし、 それを働かせるための文脈、 都市構造や歴史、 つまり、 資源がない場合、 SOHO症候群は働かない」。
その原則は
しかし新しい郊外型の小さな開発にスポットをあてることになってしまっており、 コミュニティの再生はあまり語られない。 彼らはコミュニティの社会的、 経済的なプロセスに対して無頓着で、 設計や計画を過信しているように見える。
だが、 ニューアーバニズムの隆盛は、 情報化の進展にも拘わらず、 人びとが孤立に飽き、 新しいコミュニティのセンスを求めていることを示しているのではないか。
一つは、 「プロジェクトプランニング」。 それは
もう一つは「都市を育む(Urban Husbander)」。 それは
本当の場や成功した再建の努力は、 硬直したコントロール下にはなく、 またモールのように個人的に所有されることではない。 モールはただ公共の場をまねしただけである。
この動きは、 たとえばジョン・ベル(AIA会長)が国際AIA会議の会長宣言において「今こそがリノベーション、 レストレーション、 リユースが中央に出てくる時である。 なぜなら、 それらが持続可能なデザインの最前線だからである」と述べ、 また賢い成長(smart growth)として多くの自治体に「できるだけ既存の建物と土地をリサイクルする。 ローカルなコミュニティの特徴と個性を維持する」といった考え方が広まっていることからも、 大きな流れとなりつつあることが分かる。
都市は希釈されてはならないし、 都市は映画や外国にではなく、 本当に存在するのである。
本の内容
1 混乱
本書はアメリカを覆う車社会、 高速道路や郊外の成長、 そしてダウンタウンの疲弊に批判的な視点から出発している。 また、 一部で都心部が見直されていること、 電子情報の時代だからこそ、 ダウンタウンの生活の質、 場所の質が見直されていることを指摘している。
2 NYのタイムズスクエア
nyタイムズスクエア
大都市のダウンタウンの例としてNYのタイムズスクエアを取り上げている。 ここは昔、 変わり者が集まる、 多様なストリートだったという。 しかし風俗業の氾濫に悩まされていた。
ニューアムステルダム劇場のリニューアル、ディズニー劇場化
皮肉なことに、 この間、 もっとも歓迎された変化は、 ディズーによる劇場の復興であった。 開発に投じられた数百万ドルの税金はいったい何だったのか。
デトロイト
そしてデトロイトもまた、 コンクリートとガラスの巨大な箱で、 伝統的な街を破壊している典型的な例である。
3 商業戦争
ショッピングモール対ダウンタウン、 巨大企業対独立小店舗はそもそもフェアな競争ではない。
4 青空市へ、 青空市へ
著者はアメリカで流行っている農産物等を生産者が直売する青空市場を高く評価している。 いわく「市場には、 生命、 活力、 健康、 潤沢、 根性、 主要な農産物、 色がある。 市場には、 モノ、 社交性、 人間のコミュニティの鼓動が密にある。 それらは過去とのつながりを提供してくれる」。
ユニオンスクエアのグリーンマーケット
たとえばユニオンスクエアのグリーンマーケットは1976年に開設され、 週4日営業している。 1日5,000人、 込み合う土曜日には2万人の買い物客が来る。
このマーケットはNPOによる運営(農家の総収益の5%)で大規模流通ではやってゆけない小さな農地6500ヘクタールを支えている。
またクリーブランドのWestside Marketでは、 ホームページを利用して大変親切な案内を人々に提供している。
1。 市場では何が手に入るか?
燻製、 ハムやチーズ、 乳製品、 スパイスやソース〜〜〜
2。 どんな時間がいいか?
土曜日の10時から2時が一番混む時間
3。 何をもっていったらいいか?
店がビニール袋をくれるが、 自分のバッグをもっていく。
4。 どうやって支払うのか?
現金はいつも歓迎。 クレジットカードが使える店もある。
5。 駐車はどうするか?
マーケットの裏手、 2時間まで無料。 その他指定の路上。
6。 ハンディキャップの人も行けるか?
たくさんのハンディキャップ用の駐車場がある。
自動ドア、 専用トイレもある。
7。 トイレはどこか?
新聞売り場の近くがメイントイレ。
8。 苦情がある場合は?
事務所が西の端にある。
9。 求人があるか?
売り手に直接聞いて欲しい。
10。 他にすることはあるか?
周囲に色々ある。 ***のホームページを参照してください。
他のアドバイスは?
はじめて来る人は、 ざっと見渡すこと。 清潔で、 売り物が新鮮に見え、 親切に相手してくれる店を選ぶこと。 怖がらずに質問すること。 良くしてくれた店をひいきにすること。 彼らを知り、 自分を知ってもらうこと。 きっと楽しいと思う。
学生経営企業「Food from the 'hood」の例では、 学生の手で造成された広さ1,000m2の庭に咲く花、 ハーブ、 コラードの若葉、 レタスなどが、 コミュニティビジネスならずスクールビジネスを育てた。
5 SOHO症候群
SOHO
1956年、 NY市は南部のマンハッタンにある5、 6階建てのビルが建つSOHO地区(18ha)にハイウェーを建設することに決定したが、 保存主義者、 市民活動家の反対にあい撤回された。敷地は移り、 プロセスは続く
SOHOの1ブロック南の地区で、 別の形でプロセスが続いている。 TriBeCaである。
soho現象の伝播
古い建物が存在するいかなる場所でも、 「ロフトアパート」「倉庫地区」と「ニューヨーク様式のロフト」は、 不動産専門用語として流行っている。SOHO現象の特徴
・ 現状のストックを見直し、 活用する。
・ 新しい仕事と空間利用を育んで行く。
・ 大規模開発によってもともとあった機能を入れ替えてしまうことはしない。
・ 真の都市活動を畏縮させてしまう規制を排除する。
・ 歩ける空間の重視も含み、 周囲の環境から孤立するのではなく、 周囲と連携する。
・ そのことによって、 真に人が行って見たいという都市空間が生まれる。
6 ニューアーバニズム
車中心のほとんど全ての原則を排除するという、 計画、 デザイン、 そして開発のアプローチを特徴とするニューアーバニズムが、 かなりの注目を集めている。
・歩行者、 人間スケールを重視し車に大きな顔をさせない。
・近所の買い物は歩いていける距離に計画する。
・値段の異なる集合住宅と異なるタイプの戸建て住宅を隣接させる。
・公園、 広場、 歩道、 そして魅力的な公共空間が、 子育て仲間の集まりや近所の交流に貢献するようデザインされる。
といったことであり、 その狙いは50年にわたって分離され、 隔離されてきた、 人びとや機能、 日常生活の多様な要素、 職場、 住居、 商店、 公共空間、 公共施設を再統合することにある。
7 プロジェクトプラン VS 育む都市
アメリカでは都市計画における二つのまったく反対の方向が見られる。
・市場に出して売られる。 巨大な公共投資もともなう
・現存するものをすっかり一掃する
・ダウンタウンの郊外化・観光化(コンベンションセンターを欲しがる)
を特徴とし、 なかには(例のプルーイットアイゴー団地の敷地周辺のプロジェクトのように)ゴルフコース付きの住宅地をインナーシティに作ってしまうような極端な例も見られる。
・何か新しいものを付け加える前に今あるものを強化する。
・ひとつの大きな開発業者ではなく、 多くの、 さまざまな規模の事業者を巻き込む。
・政府のサポートがもしあったとしても、 穏やかなものに依存する。
・すでにある生活を一番に考え、 尊重し、 問題としてではなく財産として見る。
・色分けされた地図からではなく現場から問題を調査する。
を特徴とする。 こららの流れ、 農産物市場からSOHO現象に至るすべての成功において、 個人的に所有され着手された多くの断片が、 深い公共的な文脈の中で互いに呼応していることに注目したい。
8 郊外の解決ではなく、 郊外への挑戦
スプロールに対する決定的な矯正手段は、 密度、 集中化、 センターの再建である。 つまり、 再結合をつくりあげることである。
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