街の遺伝子・その後
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都心のネットワーク

 

小浦

 ありがとうございました。

 お店が街を探して、 どんどん北に上がっているということを、 一つの大きな変化としてご紹介いただきました。

 最後に、 大阪と言えば「御堂筋」というのが一つのシンボル通りであり、 いわば大阪の本当の都心といっても良いような存在だと思います。 それでは篠原さんの方から、 御堂筋を中心とした最近の動きも含めてお話いただきたいと思います。

篠原祥

 篠原でございます。

 昨年のフォーラムでは特定のワークショップを担当していませんでしたので、 今日は欲張って三つのワークショップを取り上げてみました。

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ワークショップでは
 各ワークショップ、 例えば「住まう」では文化や教育の大切さ、 あるいは船場ブランド、 学校は地域の核である、 企業との連携などについての意見を聞くことができましたし、 また「伝える」の中では違うネットワーク同士の連携や、 施設の有効活用などのお話がありました。 さらに「創る」では「船場は村である」という発想や自発的ネットワークの大切さなどについて話が出ました。

 これら三つのワークショップから浮かび上がって来たことを私なりに整理すると、 次のようになりました。

 「ネットワークを都心のインフラストラクチャーと認識し、 個人と個人のネットワーク構築、 ネットワーク間の連携を進め、 必要なコミュニケーションが取れる「村」的な界隈を実現させることが、 船場らしさ、 都心らしさの創出のために必要である」。

 また、 今日の話とは関係ありませんが、 既存のハコの有効活用、 地域の歴史・文化・産業などの都市の資源の再発見・利用といった「ソフト・スクラップ&ビルド」によって船場らしさ、 都心らしさを創出していくことが必要であり、 そのためにはきっかけとなるしかけ・しくみづくりと、 中心的役割を担う人づくりが必要であると感じました。

 ここからは、 この船場らしさ、 都心らしさの創出のための大切な柱の一つである「ネットワーク」に着目していきたいと思います。


ネットワークに着目

 三つのワークショップでの議論を「ネットワーク」に着目して整理してみると、 「住まう」のワークショップでは、 住民減少、 町丁目のエリアの変更などによって町会が非常に衰退してきているという話がありました。 そこで町会を活性化させて地域のコミュニティづくりをしていく旗振り役が大切であるという意見がありました。

 また「伝える」では、 どこの誰が何をし何を考えているのかわかることが大切であるとか、 ネットワークによって盛り上がりが出来てくる事が大切である、 多くの組織がネットワーク化されることが大切であるといったご意見を伺うことができました。

 「創る」では、 イベントや祭りによりネットワークが結成されるとか、 グループ同士のネットワークを創るのが大切だといった話がありました。

 そのほかにも、 ワークショップをやる前は違う世界の人と分けて考えていたのですが、 皆がいろんな接点を求めている事がわかり、 様々な層が混じり合いながらうまくネットワークが形成されれば、 地域性も出てくるのではないかと感じました。

 さらに、 フォーラムの中でも「変化を確かめたくて皆何度も訪れるのだから、 変化し得るエリアを持った街が発展していくのだ」という意見や、 「街に来る人たちは、 ひとつの店や、 街全体を流れる“空気”を感じて行きたくなる。 その街で何かやりたい人を集めて土壌をつくってあげれば、 行ってみたくなるような“空気”が自然発生的にできていくのではないか」というような話がありました。

 これについても、 「ネットワーク」がそれらのきっかけになるのではないでしょうか。


ネットワークの現状と新しい動き

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都心におけるネットワークの現状
 船場の都心におけるネットワークの現状を私なりに整理してみました。

 一つは「エリアごとのネットワーク」というものがあります。 代表的なものとしては自治会や町内会がありますが、 かなり衰退してきていますし、 そのエリア内の企業ネットワークは希薄であるようです。

 しかしこの「エリアごとのネットワーク」が街との関わりが一番深いものであり、 我々がフォーラムの中で追求しようとしていた都心の環境デザインを考えるうえでも、 最も重要なネットワークであると思います。

 二つ目は道修町の薬屋さん達や、 船場心斎橋筋あるいは南久宝寺通りの問屋さん達の「同業者によるネットワーク」です。 これは同業者といいながら、 ほとんど同じエリアにいらっしゃるので一つ目の「エリアごとのネットワーク」にも近いかもしれません。

 三つ目は岸田さんのお話にもありました「出身学校によるネットワーク」です。 これも非常に強いと思います。

 それから「目的を共有するもののネットワーク」というものがあります。 先ほど藤川さんのお話にあった南船場における様々な活動も、 何か同じ目的で集まっている人々のネットワークによってかなり支えられているのではないかと思います。

 あとは「ネットワーク同士のネットワーク」というものもあるでしょう。

 個人とか商業者によるネットワークには様々な種類があり、 かなり活性化していますが、 やはり企業間、 特にビジネス街を代表するような大企業のネットワークは希薄であると思います。

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新しい動き
 その大企業が集積している御堂筋における最近の動きを簡単にご紹介します。

 御堂筋で活動する組織としては、 古くは1957年に結成された「御堂筋アメニティ・ソサエティ」という組織があります。 設立当時は活発に活動していたようですが、 今は年に2度、 御堂筋沿道のプランターボックスの花を植え替えるくらいの活動しかできていないようです。

 そのほかにもいくつかの組織がありましたが、 特にここ数年、 御堂筋の相対的な活力の低下を背景として、 新たな組織づくりが進められています。

 2000年10月に「御堂筋活性化協議会」が、 翌11月に「新しい時代の御堂筋協議会」が、 そして2001年12月には「御堂筋まちづくりネットワーク」ができました。

 このうち、 先ほどの「エリア内のネットワーク」にあたるのが「御堂筋まちづくりネットワーク」です。


御堂筋まちづくりネットワーク

 この「御堂筋まちづくりネットワーク」は、 大阪の顔である御堂筋が活力あるビジネス街として維持発展する事を目的として、 地元が協調し、 地元の視点から御堂筋の課題と改善策を検討し、 行政、 経済団体等とのパートナーシップを図りつつ、 活性化に向けて行動するため設立されました。

 対象となるのは御堂筋沿道街区(土佐堀通り〜中央大通り間)に不動産を所有する者ということで、 該当する企業は60社ほどあるのですが、 現在は27社が入る組織として活動しています。

 元々は関西経済連合会(以後、 関経連)が都心活性化方策としてタウンマネジメント組織(TMO)の設立を提言したのがきっかけでした。

 そして「新しい時代の御堂筋協議会」が発表したアクションプランの主要課題の一つにも位置づけられ、 設立が期待されていました。

 2001年4月から「御堂筋TMO推進検討会」が設置され、 企業自身の課題、 ニーズといったものを抽出して、 それらを解決するために地元主体のまちづくり組織というものが有効であるかどうか、 という検討をしました。 その結果、 そういった議論や検討、 情報交換を重ねる事は有意義であるということ、 また行政や経済団体とネットワークを構築する事は意味があるということで参加者がほぼ同じ意見に至り、 組織を設立することとなりました。

 現在活動がスタートしたところですが、 ここ3ヶ月ほどの間には、プロモーション活動の一環としてポータルサイトの立ち上げ準備を行っており、 またシンポジウムを開催して他のまちづくり組織との連携を進めています。

 それから岸田さんから紹介のあった船場博にも、 他の参加メンバーに比べかなり異質な組織でしたが出展いたしました。

 さて、 それらの活動を行なっているプロモーション部会では、 御堂筋の現状課題は何なのかということを議論しています。 元々は相対的に活力が低下してきており、 空室率も他と比べて高いことが課題であると認識していましたが、 それが本当なのか、 皆そう思っているのかという議論がひとつあります。

 それから、 プロモーションについても何を発信するのかの議論なしに、 活動がスタートしているため、 御堂筋の魅力とは何なのか、 発信すべき内容は何なのか、 あるいは将来像は皆どのようなものだと思っているのか、 それは皆で共有できるのか、 というような議論が盛んに行われています。

 唯一共有できていると思っていた「活力と風格あるビジネス街にしましょう」という言葉についても、 よく考えると「活力」とはどんな事をイメージしているのか、 あるいは「風格」とは何なのかという議論も出てきています。


先進事例に学ぶ

 さて、 先ほどシンポジウムで交流を図っていると言いましたが、 一つの先進事例として、 東京の「丸の内協議会」との交流をスタートしました。

 
この丸の内協議会は1988年というバブル当時に、 旺盛なオフィス需要に応えるため、 地区として一体的なまちづくりを進めようということで組織されました。

 また官民共同という部分でも東京都とうまく連携していて、 東京都と地元企業とが一緒になって将来像を描いたり、 街のローカルルールをつくったりといった活動もされているようです。

 丸の内には24万人のオフィスワーカーがいるそうですが、 彼らのコミュニティづくりが一つの活動方向であるということでした。

 それから御堂筋と長堀通りとの交差点の周辺で20年くらい活動されている「長堀21世紀計画の会」との連携もスタートさせました。

 この21世紀計画の会も目的が明確で、 82年に地下鉄長堀線を誘致する事と、 心斎橋エリアの集客力アップを目的として設立されました。

 また将来像としてアジアの核となるまちづくり、 『お洒落な大人の散歩道』というキャッチフレーズをつくって、 活発に活動されているというお話を伺いました。


都心におけるネットワークづくり

 これらの先進事例と御堂筋ネットワークの現在の活動の中から私なりに整理しますと、 都心におけるネットワークづくりには三つのポイントがあると考えました。

 一つは「明確な目的に基づく組織化」が大切であると言うことです。 交流した二つのグループとも目的が明確でした。

 それから「将来像(活動目標)の明確化と共有化」も大切です。 逆にそのような共有化できる将来像を描けるかどうかが、 ポイントであるとも言えます。

 そしてどちらのグループも言っていた事ですが「さまざまな連携」というものが大切であると学びました。

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都心におけるネットワークづくり
まとめるとこの絵のようになるのではないでしょうか。

 まず、 まとまりのあるエリアで組織されたネットワークは有意義であると思います。 そのようなあるエリアごとの組織は都心の環境デザインやまちづくりと密接に関係しているからです。

 またそのネットワークを組織している企業あるいは個人を個々に見ていくと、 その各々の立場には大きな違いがあります。

 例えば、 自社ビルかテナントビルかによってもかなり思いが違います。 テナントビルはテナントに入ってもらう必要があるわけですから、 街が良いイメージであることが重要になります。 またビル全部がオフィスなのか、 あるいは低層階に店舗があるのかによってもかなり意識が違うと思います。 低層階に店舗があれば、 一般市民や街で働くオフィスワーカーに来てもらう必要があるわけですから、 街のイメージを非常に意識すると思われます。 金融再編などの影響でビルの一階部分がどんどん変わり、 カフェやブランドショップなどになったりするのも、 ある意味で良い方向かもしれません。 そのような違いがある中でいかに将来像を描き共有するかがポイントとなります。

 そして三つ目がネットワーク同士の交流です。

 御堂筋の場合はその周辺である船場の方々とのネットワークをつくることが、 御堂筋の活性化のためにも大切だし、 あるいはもっと広く連携することによって船場エリア全体の活性化にも役立つことになります。

 そのようにいろんな層が混じりながらうまくネットワークされると、 地域性も創出されることになります。

 したがって、 今後もさらに立場の違う人たちとの交流を進めていく事が大事なのではないでしょうか。


企業とまちのとの関わり

 最後に企業とまちとの関わりについて整理してみました。

 これまで御堂筋では沿道企業の近所づきあいは希薄であり、 御堂筋の事を色々検討しているといっても、 今日ここに来られている皆さんのような専門家の方々が議論していて、 当事者である沿道企業は声を発していなかったように思います。

 一方、 その周辺の船場を見てみると、 今日も紹介されたような方々が多数活躍されていて、 自分の街として活性化について考えて行動されています。

 ここにきてやっと御堂筋の沿道企業の組織ができたわけですから、 自分たちのまちに目を向け、 自分たちのニーズにもとづき、 一社ではできなかったことを実現させていくという、 沿道企業グループという特質を活かした活動を展開していくことが望まれています。

 そして、 まずは御堂筋沿道を活性化し、 さらに将来的には周辺の街やエリア全体の魅力を高めていくことができればと考えています。

 私からは以上です。

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