葛藤の都市環境デザイン
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

 

実例紹介

 

東京国際フォーラムガラス棟

画像d08
東京国際フォーラムガラス棟

画像d11
下地鉄骨割付図
 実作紹介にまいります。

 これは「東京国際フォーラムガラス棟」ですが、 私は現場常駐で施工図を担当していました。 東京の有楽町の駅前にある、 ラファエル・ヴィニオリがコンペで獲得したプロジェクトです。

 東京都の発注に基づいて施工図を描き、 それをもとに基礎工事、 鉄骨工事が組まれていき、 最後にごらんのようなアルミパネルが貼られていきます。

 これは私のスケッチですが、 このようにアルミパネルの下地の鉄骨柱を入れていきます。 簡単そうに見えますが、 打ち合わせをしていると難しいところもありました。 本設の建物を支えるための主要構造鉄骨の他にアルミパネルだけを支える鉄骨柱を割付けなくてはなりません。

画像d13
トイレ仕上図
画像d16
完成
 これはトイレの仕上図です。 手書きで書いています。 ブースを割り付けて、 あらかじめ決まっている便器を入れていきます。 現場では図面通り、 配管が出ている所に石のカウンターを取り付けていきます。

 後はドアは木がいいか磨りガラスがいいかなどを設計者と打ち合わせしていきます。 実際には磨りガラスにして、 ぐらぐらしないよう頭つなぎを入れました。 ここは公共施設ですので誰でも入れる施設です。 なかなか使い心地の良いトイレになっていますので、 東京に行かれたときはぜひ使ってみて下さい(笑)。

画像d17
階段仕上図

画像d18
鉄骨階段とりつけ
 これは階段の仕上図です。 これは裏階段ですが、 階段に関わる全てをこの「仕上図」に落として階段を施工するわけです。

 鉄骨階段が納入されると、 それを梁にかけ、 壁を貼ります。 これは工事のための階段としても使います。 モルタルを充填して、 階段にしていきます。

画像d24
上からエスカレータと階段を見る
 これはまた別の階段です。 この辺りから公共的というか、 アーバンデザイン的な要素が入ってきます。 下が広場になっていて、 不特定多数の人が自由に入ってくることができます。

 実はこの写真はとても気に入っています。 下の広場の所に人が立っていて、 いろんな所を見回しながら、 「あそこはどうだ」とか、 「こんな空間は音が響くぜ」とか、 「あそこから飛び降りたらすごいことになる」とか、 いろいろ言っているのではないでしょうか(笑)。

画像d25
階段の裏、 見せたくない梁や鉄骨
 エスカレーターの横に階段がついていて、 これをどう納めるかということでいろいろ検討しました。 先程と同じように梁や鉄骨階段があるわけですが、 そこをガラスとアルミパネルでカバーするわけです。

 「見せたくないモノを見せないようにする」、 あるいは「見せたいモノをいかに見せるか」ということで、 苦労した覚えがあります。

画像d26
悦に入る瞬間
 こういう「悦に入る瞬間」というのが重要なキーワードだと思います。 自分が担当したものに確信や自信を持てる瞬間というのは、 なかなか楽しいものです。


TCセンター

画像d29
エントランス部
 次は2年目くらいに担当した、 千葉ニュータウンにあるTCセンターというプロジェクトです。 この建物正面のエントランス部分を私が担当しました。

 また、 ビルがたくさん建ち並ぶ中にあるため、 駅からこの敷地までの途中にポケットパークが必要だということで公園も設けられました。

画像d30
模型
 これが原設計の形です。 最初はこのデザインでしたが、 ここから「本当にこれでいいか」ということで、 最後までデザインの検討を重ねていきました。

画像d32
官民境界
 今日は「都市環境デザイン」ということで、 建築単体よりは外部空間に関わるデザインについてお話したいのですが、 実はここにも先ほどの橋岡さんの話と同じように民間と公共の境界があり、 そのラインは見えませんが存在します。

 この歩道と車道は公共のものです。 しかしそれをはっきりと分けて見せないように、 相互に不自由なく行き来できるようなデザインにしてあります。

画像d33
外構
 それか連絡送水口や排水マス等、 都市生活に必要な設備はきちんと整えつつ、 自然や水も含めてデザインしていきました。

 まず打ち放しのコンクリート塀の外側に水が張ってあって、 木があって、 そして歩道という取りあわせになっています。 ここでは「まちなみ」あるいは「都市の生活」を意識して、 それを建物の中身ではない部分でどのように解決していくかということを考えました。

 次にガードハウスですが、 当初案は「鉄仮面がこっちを向いているような表情」で嫌でしたので、 これをどうにかしようと思い、 庇を横に向けたデザインに変えようと検討しました。

 建築設計をやっているとどうしても検討、 検討と、 いくつも案を出していくことになります。

 色は施主のトレードカラーを使いましたが、 デザインはもちろんのこと、 バランスもどれくらいが良いか検討しました。

画像d36
パース。 透ける案との対比
 一番やりたくないものも一度描いてみます。 そうすると、 この案では入口の半分が打ち放しの壁で、 向こうが見えないことが良く分かります。

 そこで、 「透ける案」です。 アルミパネルやガラスを使って、 透けて見える軽いイメージの案を作って、 重い案と軽い案を比較して検討しました。

 このように好対照な複数案を一度作ってみると、 イメージが伝わりやすいと思います。

 最終的には、 ガラスの部分がさらに多くなって、 本当に透けるデザインになりました。

 これらの自分が描いた案を、 当時のアトリエの私の席の後ろに作ったボードに並べて貼っていました。 そうすると自分が今何をやっているのか、 何を考えているかということを自分でも確認できますし、 こういうことをやっていると他の人も分かってくれるわけです。

画像d42
部分詳細
 検討はまだまだつづき、 構造を決めて、 平面図・立面図も描いて、 関係部門とも打ち合わせしました。

 ガードハウスには電動のゲートをつけるのですが、 「ゲートのエンジンのカバーをどう納めるのか」とか、 「ここを開けるようにするのなら、 この部分に丁番が必要だ」と言った具合に、 必要なものは全部、 詳細図に描いて、 一つ一つ確認していきます。

画像d44
ガードハウス(完成)
 そして完成です。 わりと自分の思い通りになって満足しています。

 予想した事が予想した通りに起こりまして、 確かな施工技術のおかげで正確な図面を描いて検討すれば、 その通りにできるという事を再確認しました。

画像d50
 それから同じ物件の庇のデザインですが、 元々は長方形のデザインだったのですが、 入ってくる人に対して横向いて「いらっしゃいませ」と言ってるような印象でした(笑)。 「良くないな」と思いましたので、 「おにぎり型」を提案しました。

 これもどのくらいの「おにぎり型」かとか、 どのくらいなら雨の日に車が着いたときに来客が濡れずに中に入れるかなどを検討しました。

画像d52
模型による外装検討
 外装についても模型を作って検討しました。

 バックパネルの使い方、 サッシの使い方、 窓の割り方一つとっても、 細かく割る案もあればおおざっぱな案もあり、 いろんなバリエーションが考えられました。

 設計部としては、 どの案がどんなふうに見えるかということを予想して、 その中からある確信を持って案を選択し、 実現させるわけです。

画像d55
検討スケッチ 交差点付近
 次は交差点付近のデザインです。

 この建物では直角を作りたくないということで、 実は全て切り抜形状を使っています。 切り抜形状がどうしたら一定の流れを作り出せるのか、 色々と検討しました。

 全体としては良かったのですが、 竣工後に彫刻を置かれました。 置くなら置くで、 最初からコラボレーションした方が良かったのではないかと今では思っています。

画像d59
三角公園の模型
 それから公園についても、 最初は舞台も座れる場所も無かったところを、 検討を重ねてこういうデザインにしました。

画像d60
計画地全体(工事中)
 この建築について主に考えたことは、 「建物の外側を都市環境として、 どうデザインするか」ということです。 キーワードとしては「歩ける、 休める、 連続する」ということでした。 当時の私としては8〜9割は出来たかなと思っています。


多摩センターSW街区事業申し込み

画像d65
配置計画
 さて、 次にコンセプトワーキングの話になるのですが、 これは私が開発の部署にいたとき関ったプロジェクトで、 配置計画と土地利用計画、 それから若干起伏がありますのでランドスケープの計画を5人くらいのチームでやりました。 私は主にコンセプトワーキングを担当しました。

 「いろんな人に会える場所 遊んで学んで発見して これが僕らの“多摩タイム”」というキャッチコピーを徹夜で考えて、 自分で悦に入っていました。

 竣工後、 ある雑誌の記事に、 “多摩タイム”がそのままこの建物の名称として使われていることを発見しました。 「建築作品としてどうか」というのは置いておいても、 キャッチコピーとしては、 とにかく受け入れられたのだと思います。


Aシアター内外装リニューアル

 この建物は、 もともと使用中の二つの建物のうちの一つをリニューアルして、 少し違った用途で使用しようというもので、 ファサード、 スクエア、 ロビーのデザイン変更を提案しました。

画像d71 画像d72 画像d73
外装リニューアル案 A-2案 外装リニューアル案 A-1案 外装リニューアル案 B-1案
 

 このように面を分け、 いわゆるフライタワー(舞台上部)を目立たせる案、 同じようなデザインでバナーがもう少し小さい案、 建物の存在感を消して壁面のグラフィックサインを目立たせる案や、 その他まったく違った案も作成しました。

画像d75
外装リニューアル案 B-1-2案(最終案)
 採用されたのは結局、 シンボルマークが一番目立つ案でした。 図と地の関係が一番良いのはどれかということと、 グラフィックサインは良い、 という事でこれに決まりました。

画像d77
完成 入口付近
 これは興行場なので夜に人が集まります。 そこで夜景を意識して、 夜になるとこの柱の存在が消えていくように色を変えました。 庇が建物にさりげなくついていて、 やがて建物自体が夕闇に沈んでいく感じです。

画像d78
レイアウト案 VIPルーム
 それから、 VIPルームを作りたいとのことで、 この建物の中のどこがいいのか、 このスペースなら何m2、 何人入れます、 といった仕様を整理して、 検討のための図面を描きました。 その後、 壁や天井の仕様、 照明、 部屋のレイアウト、 設備等についても全て図面に落として検討しました。

 これはあまり都市デザインには関係ありませんが、 とにかく使用上、 必要なものを必要なだけ作るという事が大事ではないでしょうか。


コンペティション・コンテスト

定禅寺通りプロムナードプラン
画像d88
定禅寺通りプロムナードプラン
 最後はコンペティション・コンテストの話になります。

 これは私が東北大学在学時に卒業設計で取り組んだもので、 これが一番アーバンデザインに近いかもしれません。

 仙台市のプロムナードプランを勝手に設定しました。 ここを一回りしたら仙台の良い所がだいたいわかるというコースですが、 途中の定禅寺通りの西の端のところで切れていましたので、 ここを橋で繋げようと考えました。

 ここにはケヤキがたくさんあって雰囲気の良い通りなので、 このケヤキを対岸まで渡したらどうかと考えました。 ケヤキそのものを渡しても、 建築でも何でもないので、 ケヤキのグリッドが建物のグリッドになり、 最後にまたケヤキとして蘇生するというストーリーを描きました。

 高低差が十数メートルあったのですが、 それを落として向こう岸につなげるプランです。

平田町タウンセンター施設整備コンペ
画像d91
平田町タウンセンター施設整備コンペ・プラン
 これは平田町タウンセンターの実施コンペに出したものです。

 施設としての機能はきちんと満足させておいて、 この施設に入るまでのストーリーを作ろうということで、 まず夜店ができるようなスペース等をいろいろ検討し、 また施設間をつなぐような廊下はどうあるべきか、 中央の広場はどうあるべきか等を考えました。 最終的にこのプランを出しましたが、 選ばれませんでした(笑)。

再開発事業愛称コンペ
画像d92
中野坂上本町一丁目地区再開発事業 愛称募集チラシ
 愛称募集のコンテストなどは学生の皆さんでもチャンスがあります。 これは建築と関係ないとは思わずに、 アイデアを出す機会にはどんどん出していきましょう。

 私も、 この中野坂上本町一丁目地区再開発事業の愛称コンペに「LOVE・LA・坂上」という愛称で出したら佳作に入選しました。

水上文化公園マザーシップ
画像d95
水上文化公園 マザーシップ・イメージ
 これは先程のお話にあった紫川の近くで、 ジャーディの建物が建つことになった敷地だったと思うのですが、 数年前にここがインターネットでアイデアコンペになった事がありました。

 応募したらまたも佳作に入りました。 ジャーディの案よりもいいんじゃないかと秘かに思っています(笑)。

御崎公園スタジアム愛称募集
画像d97
御崎公園スタジアム愛称募集
 一番最近では、 御崎公園スタジアムの愛称募集コンペにも応募してみました。

 「K. Marine(けまりん)」という名前で、 Kは神戸を表しています。 「神戸の海を全世界にアピールし、 新たなスポーツ文化を発信するにふさわしい、 英語によるさわやかな愛称とした。 また当スタジアムがサッカー、 ラグビー、 アメフトなど「蹴る球技」のメッカになることを願い、 日本の伝統芸能である「けまり」をもじった親しみやすい読み方とした。 神戸の子供達にも受け入れられると思われる。 」と書いて応募しました。

 内心、 「やったな!」、 と思いましたが全然ダメでした(笑)。 今この施設は「神戸ウィングスタジアム」という名前になっています。

 

 平気な顔をして話していますが、 私のこのような案を皆さんにプレゼンするのは、 実はものすごく恥ずかしいことです。

 しかし、 デザイナーを目指すのであれば、 恥ずかしいとかは関係なく、 それ以上に何かに応えていくべきだと思って、 今日は恥をしのんでプレゼンしています。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ