自然環境への試み。 そして葛藤
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簡単に各々のゾーンについて簡単に説明します。 総合学習ゾーンは、 ふれあいの森に来た人がまず立ち寄るところで、 学習と管理を総合的に行っていく場所です。 それを支える森の館と広場を展開しています。 森の館は、 バリアフリー対応の施設にもなっており、 森の中の高い位置を走る浮床木道にアクセスすることができます。 情報発信の拠点となることも考えています。
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森の館のような建築についてもデザインをしています。 入り口の結節点となる場所に配置して、 尾根部や谷地、 湿地など様々な「自然ふれあいの森」の場所に、 この施設を介在してアクセスできるようにしています。 先程述べたネットワークの拠点となります。 展示施設もありますが、 今の森の状況を知ることができるような、 タイムリーな情報が得られる展示計画としています。
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次のレクリエーションゾーンでは、 湿地の中に浮き草が浮いているイメージから、 群柱で支えた草屋根のパーゴラを配置しています。 ウキクサ・フォリーと名づけました。 「自然ふれあいの森」内で展開する小屋はフォリーと称しています。 このウキクサフォリーの周辺は、 休耕田なのですが、 自然観察や水遊びができる湿地として再生する予定です。
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生活文化ゾーンにある「クワスキフォリー」と名付けた建物です。 ここで田畑を作ることになった場合は農機具などを納める小屋になります。 また、 森の館で学習のための展示をすべて完結させるのではなく、 これまでの里山を支えてきた生活文化についての展示もします。 収納された農機具自体を展示物とするようなデザインにしています。
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芸術創造ゾーンには「ノコギリフォリー」があります。 見る方向によって隙間が見えたり消えたりするようにハコを並べたデザインになっていて、 森の工作や発表会、 展示が計画できるようにしています。
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生産加工ゾーンでは「エントツフォリー」と呼んでいる炭焼きの小屋があります。 煙突があって、 色々な薪が並べられた様子も展示します。
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次が環境創造ゾーンで、 植林、 自然回復といった環境再生についても展示しようと考えています。 これらの森に分散配置されたフォリーがすべて展示館としても機能し、 自然環境の中で学習することが可能になり、 展示内容に市民が参加できる可変性の高い展示計画としています。
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森の中には一本だけバリアフリーのルートにもなる木道を計画しています。 基本的に水平な道なのですが、 斜面地の地形を活かしながら、 樹木の足元から高い位置での観察もできるようにしています。 身障者だけではなく小さな子供達も、 ここには安全に入ることができます。 この一本のルートだけが森に関わるきっかけとして作ってあって、 そこから降りて森へさらに入っていくのは、 安全性や林床に対する踏圧等の自然環境への影響について知識を得てからということになります。 森に対してのアクセスを良くすることと、 自然環境に対する負荷を考慮して、 ある程度の利用制限も行える両義的な機能をもつ道です。
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市民参加もテーマになっていることは先程述べましたが、 我々が、 六甲の教育施設でやっている事例です。 自然環境に新たに関わるための広場や、 安全管理上の柵なども参加によって作れるものには関わっています。 子供達も喜びながら、 初めて使う斧などをうまく使い、 森の中に美しい湖があるのですが、 広場からそこまで、 いつか到達することを思い描きつつ道づくりもはじめています。 商店街での活動もそうですが、 こういう活動に興味のある方は連絡いただければと思います。
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このような間伐材を利用したベンチをデザインして森の中に置いたりもしています。
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「自然ふれあいの森」に戻りますが、 この場所が、 多くの人が自然環境と関わるきっかけとなる場所となって、 社会システムの変換によって消滅し続けている里山を、 これからの社会にとって必要で有効な姿へと移行させていき、 その環境を共有することから新しい風景を求めていこうとすることにつながることを望んでいます。
私自身もこの森で今回計画しているきっかけとしてのデザインが、 どのような展開を見せて風景となって定着していくのかに非常に興味がありますので、 色々な立場の人と共に今後も実験的に関わっていきたいと思っています。