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岡山県北西部の鳥取県境にある新庄村の凱旋桜です。 なぜその名前がついたかというと、 明治39年に日露戦争戦勝記念として村が植えたからです。 この街路は出雲街道です。 江戸時代は出雲の殿様が参勤交代の際に宿をとった宿場町として栄えたところです。 今もその町並みがほとんどそのまま残り、 風情のあるまちです。
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明治39年に植えられた桜ですが、 もう百年近く経っています。 この染井吉野という品種の桜は大体60年が寿命なのですが、 ここは比較的寒いところですから木を腐らす腐朽菌が少なくて長持ちしています。 村の「先祖が残した宝を末永く残したい」との依頼を受けて、 10年ぐらい前から治療を施しています。
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初めて見た10年前は、 こんな空洞が出来ていました。
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木を腐らす腐朽部分にウレタン樹脂を吹き付けて、 腐朽化を止める治療です。
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何年か経つと、 木も成長して治療したあとにこのようなひび割れが出来ました。 治療は一度すれば終了というものではないということです。
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こんな風に中が腐った桜は、 先ほど紹介した阿知の藤のようにピートモスを中に詰める治療を行います。 3年前からこの治療を行っています。
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まず腐った部分を除去し、 生きた形成層を少し削りだし、 その上にピートモスを詰めていきます。 同時に土壌改良も行いますが、 特殊なピートモスを主原料とした堆肥を使います。
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ピートモスを上部まで詰め終わったら、 その上に幹巻きテープを巻いて密閉します。 太陽や雨風から傷口を守り、 治療が行き渡るようにするためです。 木の幹を治療するだけでなく、 根も活性力を取り戻すため特殊な肥料を与えています。
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最近撮った写真です。 並木道には全部で137本の桜がありますが、 一度に全部を治療するのは無理なので、 年に数本ずつピートモス工法による治療を施しています。 治療してやると、 いきも絶え絶えだった花や葉に急に勢いが出てまいります。 村ではこの桜が一番の観光資源なので大切に管理しています。 ただどうしても寿命ですので、 中には治療も限界に来ているものもあります。 ですから、 後継樹を養成する必要があるのですが、 よそから持ってきた桜を植えるのではなく、 今ある木からとって接ぎ木をする方法を薦めています。 暖かい地方で育った苗木はこの地方に合いませんし、 何よりも先祖の遺伝子を持った桜こそ地域の宝と呼ぶにふさわしいと思います。 ですから今は、 学校の情操教育の一環として苗木を百本ほどを育て、 地元の公園に植えています。 今の凱旋桜が枯れると、 その後継樹にする計画です。
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勝山町にあるこの桜も、 町の天然記念物に指定されています。 700年あまりの樹齢を誇る老桜です。
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これは夏の様子です。
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かなり空洞化が進んでおり、 下の方は人間が3人ぐらい入れそうな大きな穴があいています。 このままにしておくと、 台風でも来たら倒壊しかねないので治療を施すことになりました。
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治療はまず、 木の中の腐った部分を上の方まで取り除きます。
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腐ってしまった側にはもう生きた根はありません。 木を持たせるため、 鉄骨を入れて基礎を打ちました。 写真のような大きな鉄骨を入れています。
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鉄骨を入れて木を固定した後、 その周囲には防腐加工した丸太をつめていきます。
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丸太の回りにウレタン樹脂を吹き付けて、 雨風が木の内部に入らないようにします。
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ウレタンを吹き付けた後は、 パテ材で表面を成型して樹皮の代わりをさせました。
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新たに成長した樹皮が治療部分を巻き込んできていますが、 元の空洞部分が大きかったので巻き込んでいくのには時間がかかります。 最終的にはそれを目的にしています。
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治療に取りかかる前はこのように観察スケッチをし、 設計図をつくります。
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まだ2分咲きのころで、 これからの時期ですが、 綺麗な満開を見せてくれそうでした。
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県の天然記念物に指定されています。 今紹介した岩井畝の大桜から2kmほど離れた所にある木です。
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ごらんのように見事な花が咲きます。
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7、 8年前に「木に勢いがなくなって傷んでいるようだ。 治療して欲しい」と依頼を受け、 調べましたところ、 保護柵があまりに木の近くにあることが分かりました。 花見のシーズンになると人々があまりに近くに寄りすぎて、 木の根を踏みつけて固めてしまい、 木が養水分を吸い取ることが出来なくなっていたことが原因だったのです。 ですから、 木の回りを倍に広げて保護柵を設けましたところ、 現在は元気を取り戻しました。
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幹の治療は、 今は故人となられた山野さんが十数年前にされました。 木の根元に小さなお社があるのですが、 それをお参りする人が根をふまないよう桟橋を設けました。
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2分咲きの頃の桜です。
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倉敷の羽島という所に法輪寺というお寺があります。 古いお寺でして、 この境内にあるクロガネモチも400年ぐらい経っています。 この写真は木の左半分をウレタン樹脂で埋めて修復したところです。
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最近では熱帯雨林の伐採まで進んで地球環境の悪化が叫ばれる中、 地元の緑の保護活動を通じて緑の大切さをみんなで意識し、 努力して守っていきたいと思います。 そして、 それが郷土愛の精神を育んでいくのではないかと思います。
これで私の話を終わります。 ご静聴ありがとうございました。
地域の緑が原点
私たちの生活環境の豊かさは緑なくして語ることは出来ません。 今、 地球環境の悪化が社会問題になっておりますが、 その回復のために緑の果たす役割は大変大きいと思います。 歴史的資産である巨樹・老樹の保存活動が地域住民参加のもとで行われることは、 緑の保全・創造の原点として役立つことと期待しています。
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