古の中のアヴァンギャルディズム
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保存地区が抱える問題

 

相続税など

 これらの施策は街を次世代に引き継ぐことを前提にしております。 昭和43年以来、 34年間にわたって営々として守ってきた約20haの美観・伝建地区ですが、 近年はいろんな問題が浮上してきました。

 ひとつには税法上の問題があります。 次世代にこの街を引き継いでもらうためにいろんな条約を制定してきましたが、 現実には世代交代の時期に相続税が重荷になるということがあります。 これに対応するため、 岡山県から国の方へ相続税の減免措置をして欲しいと働きかけをしております。 ただ、 数年来要望しているのですが、 なかなか前進していない状況です。

 もうひとつの問題は、 建物の維持管理についてです。 倉敷市の対応としては、 固定資産税の減額や建物修繕のための助成を行ってはいますが、 「井上家」(1711年頃の建築)のように老朽化が進んでいると、 修繕費が数億円もかかって市だけでは対応しきれなくなることがあります。


修復費用

 井上家の場合は、 国に掛け合いまして、 つい最近国の重文指定を受け、 国から2分の1の補助が出ることになり、 あとは県・市・所有者が負担して修復をすることができました。 所有者は6分の1の負担ですんだとはいえ、 個人としては非常に多額の経費がかかることになります。 助成があるといっても、 個人で歴史的な建物を維持・管理してもらうことは難しい問題です。

 現在行っている倉敷市の助成制度を紹介しますと、 伝建地区の伝統的建造物は800万円を上限とし工事費の10分の8、 その他の建造物は上限500万円で工事費の10分の7の補助をしています。 伝統美観保存地区では、 10分の6の400万円が限度額です。 固定資産税は2分の1の減額をしています。

 毎年、 修復のために7千万円の予算を組んでいますが、 井上家のように歴史的な建物(倉敷市では一番古い建物)だとなかなか予算内に納められないケースもあります。 町並みを守っていくには多額の経費がかかるのです。 ただ井上家は歴史的な価値があるから重文指定を受け、 国から補助が出ましたが、 その他の建物はなかなか国からの補助が出ないので、 大変だということがあります。


空き家対策

 3番目の問題としては「空き家対策」があります。 住んだり商店として利用していただいているうちはいいのですが、 居住者がいなくなって活用されなくなる建物をどうしたらいいのか。 例えば、 美観地区の入り口の「大橋家」は、 長屋門・蔵・塀が伝統的建造物の指定を受けていることもあって市が買い取りました。 しかし、 今後そのような空き家が出てきたときも市が買い取れるとは限りません。 貴重な市民の税金を使うことですから、 市民のコンセンサスが得られるかどうかがポイントになるだろうと思います。

 以上のように、 法的側面からの取り組みだけ見ても町並みを維持していくのは難しいことです。


舗装の美装化や無電柱化

 これ以外に、 景観の問題を別の観点から見たものとして、 伝建地区の無電柱化や舗装を考えて欲しいという要望が毎年多くの人から寄せられています。 舗装については一部のコンクリートの洗い出し舗装以外は全部アスファルト舗装でして、 全部をコンクリートの洗い出し舗装にして欲しいという要望が毎年出ています。

 無電柱化については、 トランスの設置場所が必要になるのですが、 道が狭いこともあってなかなかその場所がとれないという問題があります。 また、 電柱をなくしてしまうと地区に車が入ってきて、 軒先を傷めてしまうという住民の反対もあります。 無電柱化と舗装のコンクリートの洗い出し舗装はなかなか現実化に至らないのが実情です。 せめてトンネルを出たところの中国銀行から商店街に向けての入り口のあたりの広い道路は、 それを実現したいとは思っています。

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