古の中のアヴァンギャルディズム
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これからの倉敷

 

 倉敷市の伝建・美観地区についての取り組みを主に話してまいりましたが、 倉敷全体としては都市計画そのものが出来ていないと思うところがあります。 昭和47年に山陽新幹線が岡山まで開通し、 JRのキャンペーンで倉敷の伝建地区が一躍有名になりましたが、 現在のJR倉敷駅前の商店街は近年空き家が大変増えてきている有様です。 最近の地価公示によると、 岡山県下の値下がりナンバー1になってしまいました(前年比マイナス24.5%)。 空き店舗対策もさることながら、 街そのものをどう活性化させるかが目下の大問題になっています。

 先日、 水島のある大企業の社長2人と話す機会があったのですが、 その人達も同じ指摘をしていました。 「今の倉敷のまちではどうしようもない。 なんとか活性化できる方法を一緒に考えようじゃないか」と言われ、 私としては我が意を得たりと勇気の出る思いでした。 と同時になぜこういう声が地元から出ないのだろうとも思ってしまいました。 こんな声がもっと市民の側から出てくると嬉しい限りなのですが。 残念ながら、 今は消極的な街になっているように感じます。

 今、 倉敷駅周辺の鉄道を上に上げる事業の準備をしているところですが、 これは駅周辺を考える最後のチャンスではないかと思っています。

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美観地区案内図(倉敷市観光協会)
 また、 市立美術館から東へ行って市民会館を通って北へ行き、 鉄道に行き当たるエリア全体の中で、 駅周辺をどうするかも考えていく必要があるでしょう。 伝建地区に接する北の通りは、 明治時代の建物がたくさん残っています。 建て直すとしても、 昔の町並みを損なわないようにする必要があります。 それと反対に、 そういった建物がないエリアでは建物を新しく(といっても倉敷のイメージに合うもの)にしていくべきでしょう。

 そう言う風に、 美観・伝建地区を中心にして、 周辺のまちづくりをどうしていくかが今後の倉敷のまちづくりの課題だろうと考えています。

 伝建地区から商店街を通って、 駅の向こう側のチボリ公園までを上手につなげれば、 お互いの相乗効果でもっといい結果になるのではないでしょうか。 そのためにも伝建地区と駅の間の600mを気持ちよく歩ける工夫をしていくべきでしょう。 そうすれば、 駅前商店街の衰退にも歯止めがかかると期待しているわけです。

 これからも対処療法的に出来ることはどんどんやっていくつもりですが、 都市全体の大きな都市計画を考えていくことが倉敷の大きな課題だろうと私はとらえています。 都市計画は生活の場、 経済活動の場を作り出していくものですが、 健康で文化的な都市を作り、 人々が快適な環境の中で住むことを目指すのが都市計画に携わる人たちの使命だと思っています。 これからも住んでみたい街になるためには何が必要かを考えていきますが、 とりわけ倉敷では伝統的な町並みを守りつつ、 それを軸にした新しいまちづくりを考えていこうと思っています。

 以上で、 私の話を終わります。 ありがとうございました。

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