京都は再生するか〜百年後の水と緑をデザインする
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シナリオ1 少女の物語「夕涼み」

 

 

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朝起きて、 学校にゆく

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朝の裏庭の風景(作画:久光 敢)
 彼女は、 だいたい小学校5、 6年生くらいの元気な少女です。 彼女が学校に通学するところから始まります。

 この風景は少女が朝、 学校へ行く途中に見える風景です。

 京都には背割りと呼ばれる部分があります。 通りと通りの両側から敷地が延びていますね。 その敷地のぶつかった部分を背割りと呼ぶのですが、 その背割りに対して、 両方の敷地に設定された集合住宅をいくらかセットバックをさせて、 その左右部分に空間を生み出そうと考えました。 その部分がポイントとして存在するのではなく、 そういう部分がつながれば、 道のように行ったり来たりできるわけです。 このような場所では車も通りませんし、 ここを通り抜けて、 朝、 お母さんと一緒にのんびりと歩きながら通学できるわけです。

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御池通での朝食(作画:中村伸之)
 御池通です。 彼女が通学する途中で通ります。 御池通りは今は二本の並木が両側に立っていますが、 将来三本にしようと考えました。 今、 車道になっているど真ん中の部分に、 一本並木を入れて、 北側のかたほうの車道を全部歩道にしてしまって、 幅広い歩行空間を生み出しました。 そこにはオープンカフェが出されたり、 サンドイッチのケータリングの店舗が出されたりしていて、 ちょっとした時間で朝御飯を食べられる空間となっています。 ここでお母さんと一緒に朝御飯を食べ、 少女は学校へ向かいます。

 このシーンの背景には、 将来日本の人口も減ることですし、 車も減るだろうという考えがあります。 そこで御池通りの車道の幅を半分にしましたが、 さらに公共交通機関を利用しやすい形にしたいという意図で、 路面電車が通るということを考えました。 京都のまちの中を比較的安い値段で、 子供はただで乗れるくらいの設定で、 自由に行き交いできるものがいいと思います。


城巽の森学校での生活

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城巽の森学校(複合教育施設)(作画:中村伸之)
 少女が通っている学校です。 小学校だけではなくて高校や市民ホールなどもある結構大規模な複合施設を考えました。 奥に見えているのが二条城ですが、 その前にある堀川と、 ちょっと大きめの複合教育施設が一体となって、 京都御所並みのスケールの緑を生み出せるのではないかというものです。 小学校や高校や市民センターを一緒にしたのは、 世代を越えて、 一緒になって活動できる場が現実には数少ないものですから、 そういう場所がほしいと考えたからです。

 高校が例えば音楽高校ならば、 音楽という世代を越えて感覚を共有できる分野をクッションにして世代間の交流が行われたら、 結構スムーズにいくのではないかという感じです。

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パティオの食堂でランチ(作画:久光 敢)
 その学校の中には、 例えばこのようにご飯を食べるところもあります。 ここまで商業的でなくてもいいんですが、 小学生と高校生がご飯を食べたり、 市民の方とちょっとしゃべってみたりできる空間を考えました。 もちろん同級生と食べてもいいんですが、 あまりクラスなどに束縛されることもなく、 学校の中で自由に行動できるというものを考えました。

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休み時間空中庭園でセミ取り(作画:久光 敢)
 ここも学校の一部という設定です。 実はここは一階ではなくて、 二階や三階のレベルになります。 これまでのワークショップで子供たちの冒険心をかき立てる緑が、 キーワードとして出てきました。 防犯や安全の面も考えると、 そういう場所を建物の中に配置することによって、 実現できる可能性があると思います。


放課後の楽しみ

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路地を通り抜けて下校(作画:中村伸之)
 学校が終わると、 少女はこういう道を友達と一緒にしゃべりながら帰ります。 ここは結構緑の多い路地で、 彼女のお気に入りの道です。 あじさいなども咲いていますが、 四季折々の自然にふれることができますし、 昆虫や小動物も住めるのではないかと考えました。

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地蔵盆(作画:石田知紀)
 今日は地蔵盆の日です。 彼女は学校から帰宅して遊びに行きます。 上の方にある旗を見ていただくとちょっと不思議な字が書いてあります。 将来、 京都にも外国人がいろいろ入ってきたり、 人の移動も活発になるでしょうから、 将来、 地蔵盆は地域の交流の場としての役割を持ったイベントになるのではないかと思いました。

 ここはオモテの通から一歩奥に入った場所で、 さきほどの背割りの部分に近い空間になります。 例えば集会所などの地域的なたてものがあるような空間を想定しています。

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堀川で夕涼み(作画:久光 敢)
 地蔵盆が終わって遊んで疲れた時に、 ちょっと一人になれるような空間、 静かに休めるような、 ほっと出来るような空間を都市の中にほしいと思い、 夏場などには涼しい空間を考えました。 やはり水が近くにあると、 ほっとするような空間になります。

 ここは堀川の百年後です。 堀川通と東堀川通の歩道部分が少し拡張されて、 両側からたくさんの木を植えて、 川の真ん中当たりまで木が延びてきて、 緑のトンネルになり、 その下を川が流れています。 単に環境という意味だけではない「風の道」、 つまり涼しげな風を皮膚で感じられる空間として、 北山の方から吹く風が抜ける場所としての機能ももたせています。 平安時代につくられた堀川ですが、 22世紀になっても、 そのような形で新しい役割を果たすというストーリーです。

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