建築レベルのシステム |
そういった街区を構成している個々の建物のあり方を考えてみると、 例えば一つの建物の中に、 昼間の南西からの風を受けるサービスバルコニーがオモテにあって、 ウラには夜間の北側からの風を受けるテラスがあり、 風が抜けていきます。 あるいは中庭を設けてそこに風が抜けていくとか、 建物にスリットが入っていて、 風が抜けていくということが考えられます。 それは機能的にはサービスバルコニーであったり、 サンルームやデッキであったりと、 建物と外部環境との接点空間となっています。 それに対応して緑も、 テラスの緑、 つぼ庭の緑、 あるいは西日を遮る緑化された壁、 屋上の緑などによって、 個々の建築が構成されるわけです。 それが集積して、 さきほどのような街区を構成するというイメージになるんじゃないかと思います。
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これはオモテのイメージですが、 ここでのポイントはオモテを構成するのは二階くらいの建物で、 こういうところに古い建物が同じようなスケールで取り込まれているということです。 オモテを構成する建物は、 庇のような連続した共通要素を持っていて、 オモテ全体に共通したテイストを与えていきます。 またファサードの木質のエレメントを重視しています。 水や緑は点として現れてくるという姿になってくるのではないでしょうか。
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ウラは、 緑化された建物が蛇行するスリットを構成して、 全体としてクールスポットをつくりだしています。 そういうところに高層なり中層なりの建物が組合わさっていく。 そのスリット部分は、 路地である場合もあるし、 専用庭であって外の人が入れないような所もあるかもしれない。 また所々に例えば古い建物が取り込まれていくようなこともあるでしょう。 オモテに対するウラのあり方として、 全体としてコントラストを持った空間を考えていくというコンセプトです。
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これは低層の屋上部分で、 そこに先ほどの高層の建物や中層の建物が顔を出しています。 絵の右側部分と左側部分とでは、 建物も設計も違うという設定になっており、 高さなども違うので段差が出てきます。 右側は草っぱらで子供が遊んでいますし、 左側は畑になっています。 また先ほどの断面図にもありましたように、 手前(オモテ側)は三階建てで奥(ウラ)が四階建てになっていますので、 その間に一階分の段差があり、 階段状の畑になっているという想定です。 屋上では草っぱらであったり、 日陰棚によって日照をさえぎっていく。 あるいは畑をつくったりビニールハウスのようなものつくる人もいるかもしれません。 水が流れていますが、 中庭の地下で溜めた水を手動のポンプで汲み上げているという想定です。 例えばソーラーシステムを使うというようなことが当たり前の時代になるかもしれませんが、 逆にここでは、 人の手によって水を汲み上げるとか、 人の手によって緑の管理をこまごまとやっていくということが、 むしろ大事だと認識されるようになると考えてイメージをつくっています。 これまでの屋上緑化だとか建築緑化の議論は、 いかに管理の手間を省くかということがキーポイントになってきたわけですが、 むしろそうではなく、 そういうことに手間暇をかけるということが、 我々自身の健康を気遣うのと同じように大事に思われる時代になるのではないかと私は思っております。
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全体的に俯瞰してみると、 例えばこのような姿になっていくのかもしれません。 ここでは高層にしろ中層にしろ、 ちょっと変な形をしています。 この形が良いということではなく、 北からの風と南西からの風をいかにスムーズに受け止めて、 じゃまにならないような形で流してやるかということと、 それをどうやって建物の中にうまく取り入れていくかというコンセプトを表したものです。 そのためにどういう形が良いのかは、 これからスタディしていかねばならない問題です。 大事なことは、 京都には年間を通じて北からの風が吹いているわけですが、 それに対して昔からの京都の街区のあり方は、 南北に長くて、 その中に背割りの中庭の連続のスリットがだいたい通っていた。 それによって北からの風をうまくまちの中に取り込んできたわけです。 それに対して今の大型のマンションの多くは、 東西方向に板状の建物を建てているわけです。 それによって、 南からの日照を遮ってしまうと同時に、 北からの風を遮ってしまう。 このように京都のもっている風土的な条件に適合していない形の建物が増えてきている。 ですから今、 京都の市街地の環境はどんどん悪くなっていると思います。 したがって、 これからのあり方として、 そういった風といった風土条件を最大限に活かしていけるような建築形態を考えていくという文化をつくっていかないと、 京都はますます住み難くなっていくのではないかと考えています。
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