フィンランドセミナー
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森と湖に囲まれて

アルパック 堀口浩司

 

サウナに入らずしてフィンランドを語れず

 実に豊かな空間。 湖畔を独り占めしたかのようなロケーションである。

 

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 サウナとシャワー室と台所、 ダイニングルームだけという、 サウナのためだけの施設である。 この周辺に建物は見えず、 サウナを出てそのまま湖に飛び込むというのも、 実に納得できる。 人口が少ない地域では、 こんな贅沢な空間が作れるという見本です。


透明な時間(なぜ港がきれいなのか)

 水も空気も透明な早朝のヘルシンキ南港である。 クルーズ船やタリンへの旅客船が中心の港であるため、 フェリーターミナルのような駐車場がない。

 この港の美しさは、 (1)海からのランドマーク(白い大聖堂)の存在、 (2)港湾背後の市街地の建物ファサード面が揃っており航路に向かって顔を作っている、 (3)コンテナ船など物流系の埠頭が旅客船や市街地から見えない場所に配置されている、 (4)埠頭近くに小規模な飲食や日常品の市が立ちヒューマンスケールな近景要素がある、 いったことが要素となっている。

 極めて当たり前のことであるが、 土地利用と景観計画が一体のものとして配慮されている。

 

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 ちなみにストックホルム市の工業港区も、 同様の配慮がなされており、 物流系の埠頭用地は市街地からあまり見えないようになっている。 都市計画や港湾計画における、 景観・ランドスケープに対する配慮(教養だろうか?)には、 未だ彼我に相当な差があると意識せざるを得ない。


スローワーク(木の文化に感動)

 森の国は模型も木づくりでした。

 ヘルシンキ市都市計画セクションの地下のワークルームには、 ほぼCBD全域の模型がありました。 やはり空間把握を模型でするのは、 万国共通のようです。 でもスチロールではなく、 木で削りだすのはちょっとびっくりでした。

 実に羨ましい仕事の環境です。

 スローフードという言葉が流行っていますが、 スローワークも大事です。


森の中に居るようなアトリエ

 アアルト財団が管理しているアアルトのアトリエです。 閑静な住宅地の中になって、 今も設計事務所として機能しています。 森林資源を生かして魅力的な空間を作っているように思います。

 

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アアルトのアトリエ、ヘルシンキ
 
 フィンランド(終わりの国)というヨーロッパの辺境にあって、 石造とはことなる文化性を発揮しています。

 木の国である点は日本も同じですが、 我々が近代化の中でずいぶんと忘れてきたものを多いと感じられました。


水に親しむ(ストックホルムの印象)

 
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ガムラスタン セーデルマルム
 
 名目だけの親水空間ではない。 どこかの島国とは異なる水際線の処理である。

 さすがバイキングの子孫である。 何とも爽快な水際なのである。


「親水性」の呪縛

 とにかく落下防止柵がない。 水面からの高低差がある場合や階段部などにはあるが、 あっても視線を遮ることが少ない。

 バルト海は大西洋に比べて塩分が薄く、 湖や川と海との境界が曖昧である。 そのせいか潮風のようなべたつく感じがなく爽快である。 我が国の河川管理者のように、 親水性を追求する一方で柵を作って、 水に触れられなくすることはなく、 水に落ちてもはい上がれる高低差ならば、 柵を作らないようである。

 

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 下はストックホルム市郊外に建設中のニュータウンである。 スウェーデンは外国人受け入れ政策により、 人口増加率を0.02%と成長をコントロールし、 都心部のリニューアルと並行して新しい住宅建設を進めていた。 この地区では湖水(川?)を引き込んだビオトープ風の公園と、 湖水の浄化システムを売り物にしている。

 

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 橋のたもとには、 建物と一体化したエレベーターが設置され、 散策路まで降りて行けるようになっている。

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