ヘルシンキ市から7kmのところにあるヴィーキ地区(viikki)は、 持続可能な環境都市づくりが進められている。 本地区の中心部では、 ノキア等に代表される情報通信産業の次世代の主力産業になりうるバイオサイエンス・バイオテクノロジーの戦略的産業育成が、 大学を含めた官民共同により進められている。 一方で、 その周辺では先進的で大規模のエコ都市住宅開発と自然環境の保全・拡充が同時進行している。
我々が見たものは、 広大な緑地に隣接したのエコ都市住宅(全体1700戸)のうち、 完成前後のエコ集合住宅群であり、 低層型のさまざまの形態をしたユニークなものだった。
ここでは、 コンペで選ばれたデベロッパーと建築家の様々のチームが、 それぞれのエコ住宅技術や環境共生に対する考え方を主張する形で、 木造枠組みをベースにした各エコ集合住宅を建築している。 地区として環境負荷の削減基準がCO2、 水、 廃棄物、 消費エネルギー等あり、 建設時及び居住以後をモニタリングし、 しかも地区の削減基準をかるくクリアーしている。 用いられている建築・設備面での環境保全技術は、 日本でもあるがここでは組み合わせ方が多用であり、 さらに庭にビオトープのような池までつくる例がみられ生態系に深く関わり多彩である。
また所有形態においては、 半分を個人所有とし、 残りを短期賃貸や占有期間付居住権のような方法で、 住まい手も多様性を基準としている。
ただし私は訪れる前に勝手にイメージしたため、 ひとつ期待はずれだったことがある。
それは、 エコ都市住宅開発が北欧のデザインセンスにより、 個々の住宅と全体とがバランスよい街並みとなり、 環境デザインを具現化しているのではと…。
当然、 それぞれ実験的要素が強いこと、 ローコスト主義であることを差し引いたとしても、 現実の町並みはデザイン上洗練されているとはまだ言い難いと考えられる。
別の見方をすれば、 持続可能なエコ住宅都市である以上、 環境デザインは住まい手と施設環境との関係のなかで、 生きたデザインとして変化し続けるのかもしれないが。
フィンランドの世界的に先行するレベルでの、 環境共生を持続的にめざす都市住宅を垣間見たが、 翻ってわが国を観るとき、 町屋に代表する世界に冠たる伝統的木造枠組み建築があり、 エコ技術の上からもデザイン的にも優れた様々の蓄積が思い出される。
わが国の場合は、 フィンランドの実験住宅のアプローチーと違う(生態系の復元など新しい技術は取り入れつつも)、 近世から培った様々の環境共生の財産をアップグレイドし、 今以上に住まい手・建築家・都市計画家・エコ研究者・伝統技術継承者・企業・行政など多用な担い手を結集し、 設計企画・生産方法及び維持管理システムの大胆な見直しのもとできるところから持続可能な環境都市づくりを進める必要があるだろう。
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