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「水と緑の都市づくり」

兵庫県 難波 健

 

水と緑を考える

 日本の都市で、 水と緑のことが取りざたされるようになって久しい。 しかし、 それは河川改修に際してのうたい文句であったり、 砂防工事や斜面緑化、 屋上緑化といった“都市に緑を”“うるおいのある水辺環境の創出”といったフィジカルなものづくり、 施設づくりの工夫といった範疇をなかなか出ることがない。

 都市計画法により策定が義務づけられた都市計画のマスタープランづくりにおいて、 水と緑の都市づくりは、 先進諸国ではどのように取り組まれているのかについて現地を視てみようというのが今回の私テーマであった。

 

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ストックホルム市庁舎からの街並み 緑に包まれた建物
 

北欧における水と緑

 スカンジナビア半島は、 バルト海側と外洋に面するフィヨルドの間に多くの湖と森がある。 私は、 1973年にレニングラードからヘルシンキ、 ストックホルムを旅している。 30年前にはじめて訪れたヨーロッパの落ち着いた街並みに圧倒されたことを記憶している。

 街並みだけではなく、 都市が水と緑の中に浮かんでいるような都市の作り方についても日本が学ぶべき点を多く持っている。


都市計画情報

 ストックホルムで土地利用計画図を求めて市役所に出かけた。 ノーベル賞の授与式典で有名なストックホルム市庁舎から徒歩で10分ほど離れた建物をいくつか尋ね歩いて都市計画セクションを探し出した。 ロビーには縦覧図書や模型が展示されていて、 その一角に都市計画関係の地図や図書を展示販売しているカウンターがあった。

 ヨーロッパの都市ではどこでも都市計画に関する出版物や図面、 地図が整然と 市民に提供されており、 計画情報開示がスマートである。


市民の意識

 北欧のデザインの良さについては、 よく話題となる。 ヘルシンキで見学した1920年代の木造住宅地区は、 その保全の仕方に驚いた。 公営住宅といいながら、 森の中の住宅であり、 一戸ずつの建設に注意が払われていて、 住まう人々も緑に対する高い意識を持っていることがわかる。 建設当時のデザインをかたくななまでに守っている。

 

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プーカピラ住宅地 ヴオサリ海浜の住宅
 
 また、 海辺は良好な住宅地に対する環境形成要素と捉えられている。 臨海工業地帯であったり、 土取り場であった海岸部が住宅地に土地利用転換している地区をいくつか視た。

 森に対し、 水辺も住民に好まれる居住環境なのである。 イギリスのドックランド、 またドイツなどにもそのような地区がある。

 大阪、 堺、 尼崎等の臨海の土地利用転換は、 どういった方向に行くのだろう。 海浜での居住地の創出に我々は自信を持たねばならないと思う。 そのために、 需要の創出、 周辺の土地利用、 居住環境の綿密な計画、 さらにライフスタイルについても、 成り行きにまかせたものでない綿密な調査と検討に裏打ちされた土地利用転換を計画していかなければならない。


土地利用計画

 ストックホルム市役所で入手したOversiktsplan1999 Stockholmは、 残念ながら(当然のことであるが)全くスウェーデン語だけでかかれている。 この冊子を見て感じることは、 都市計画が着実な現状の把握と分析のもとに行われていることである。

 自然、 歴史、 社会的要因による地区の性格を捉えて計画の材料にしていることがわかる。 また、 地区がその分析に耐えるような性格を持っていることも日本とは違う。 一つ一つの地区、 街区が一定の景観、 土地利用の性格を持っており、 性格が明らかだからそれを壊すような利用や外観を排除できるのではないだろうか。

 日本の街は、 どこに何ができても是とされる。 沿道30mの用途地域の巾取りなどは、 街区の性格の明らかな都市ではありえないと思う。


キベンラハティの地区計画

 今回の旅行に先立ち、 丸茂先生の指導でヘルシンキ郊外、 エスポー市の新規開発地キベンラハティの都市計画(地区計画レベル)の都市計画記号凡例の翻訳のワープロ原稿作成をお手伝いした。  この特徴として以下の点をあげることができる。

 詳細設計に基づいて都市計画が定められているように思われるが、 実際はこの計画自体、 時間を経て変化し、 より厳しくなっているようである。 日本の都市計画との緻密さの違いを感じる。

 

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街区のパターン(ストックホルム土地利用計画図から) ランドスケープについて
 

反省と挑戦

 日本の都市計画は、 もうすこししっかりしないとダメだ。 歴史的市街地=ガムラスタン、 緑のテーマパーク=スカンセン、 湖とサウナ=ヘルシンキ、 世界遺産=タリンと、 楽しい海外旅行であったが、 なんだか打ちのめされて帰国したのであった。

 はたしてこのインパクトを新たな都市計画への挑戦の糧とすることができるのであろうか。


キベンラハティの土地利用計画図凡例から

遊び場
駐車場
サービス施設
避難所
エレベーター
住居の騒音遮蔽
住棟間距離
建物の階数距離
18m
216m
3・425m
530m
635m
740m
845m
950m
1060m
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