ミニ社会実験:リバーカフェ
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社会実験実現へのプロセス

 

森山

 現在の水辺空間は、 物理的には水が近くにあっても、 心理的には水が遠いと感じてしまう空間になってしまっています。 そこで、 今回の社会実験では川の上まで出てしまおうと考えました。

 実際に実行するにあたっての経緯と課題について説明します。

 今回の社会実験には2つの目的がありました。 1つはより多くの人に大阪の水辺の魅力を体験してもらうこと、 もう1つは水辺空間の利用についてのルールや道筋を提案し、 実現することによって、 今後、 民間のアイデアにより公共空間をうまく使っていくための道筋を見せるということです。

 店は「sunset 37」という名前で営業しました。 目の前の番地が37番地であったため「37」としました。

 IKINA水辺グループ7人と川を生かしたまちづくり協議会3人の合計10人で「リバーカフェ実行委員会」を組織して主催しました。 多くの企業などにも協力・後援をいただきました。

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位置図
 場所については、 最も市民に見てもらいやすいのではないかということと、 我々も非常に馴染みがあるということで、 当初、 中之島の東側の対岸、 辻学園の北側にある「ふれあいの岸辺」で計画していました。 しかし、 地元と一緒にやりたいという我々の考えや、 台船の係留場所などの色々な条件から、 最終的には大阪ドーム南公園、 尻無川の北岸で実施することになりました。 スタート時には公園の前には全く何もありませんでした。

 現状の大阪の水辺は必ずしも快適というわけではありません。 夏は川が臭いという専門家の意見もありました。 そこで一番気持ちのよい季節として秋に実施しようということになりました。 また秋にはいくつかのイベントがあり、 そのイベントと共同開催して一緒に盛り上がろうと考えて10月3日から10月19日までの17日間に決定しました。

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水辺が気持ちの良い季節。 イベントと共同開催
 共同開催することができた「リバーツーリング」というイベントです。 今回はリバーカフェから出発することになりました。

 営業時間は、 昼のシーンも夜のシーンも見てもらいたかったので、 12時から21時までにしました。

 許認可については、 河川使用のために河川管理者である大阪府と、 また、 公園使用のために公園管理者である大阪市とそれぞれ協議し、 許認可を得る必要がありました。 また、 岩松橋から川下は港湾区域となっており、 対象地は港湾区域に入っているため、 港湾管理者との協議も行ないました。 さらに、 飲食関係の営業を行なうために保健所の許可を得る必要もありました。

 メニューについては、 業者に頼むという選択肢もあり、 内部でも随分議論しました。 しかし、 最終的にはやっぱり自分たちでやりたいということで、 自分たちでできるメニューを考えました。 ドリンクメニューが13種類、 フードメニューが8種類です。 保健所の許可範囲が厳しく複雑であったため、 試行錯誤しながらメニューをつくりました。 素人の集まりだったので、 運営を簡略化するためにワンコイン制にして、 全てのメニューが500円になるようにしました。

 スタッフは研究会のメンバーを中心としながら、 友人などにお願いして、 最終的には130人のボランティアの方に手伝ってもらえました。

 もともとこの場所に係留施設はありませんでした。 時々、 ロープで河岸の柵にとめている船もありますが、 港湾管理者の方から強度的にそのような方法ではだめだと言われました。 しかし、 係留ビットを規格通りに作ると、 ひとつあたり数十万円かかるため、 我々の手弁当でできるようなものではありませんでした。 そこで、 大潮や台風などの緊急時には、 船で引っ張って避難することを条件に、 独自の係留ビットを製作して設置する許可を得ました。

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係留ビット
 製作してもらった係留ビットです。 ひとつが2〜3万円でできました。 これを4箇所に取り付けました。

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タラップ、 手すり
 公園の手すりを一部撤去した部分です。 手すりの撤去については、 大阪府から了解を得ました。

 船へのアクセスはタラップを使用し、 手すりは鉄管を台船に溶接してロープをつけるという形のものをつくりました。

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船でのアクセス
 船上のカフェですので、 船で来てもらいたいと考え、 船が着けるように木の桟橋を取り付けました。

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内装
 内装は、 納得できるものをつくるために、 全て自分たちでデザインし、 手作りにこだわりました。 お金がないのでできるだけ安くあげながらも、 工夫して『大人の空間』をめざして仕上げました。

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トイレ、 ゴミ
 トイレは、 知り合いから仮設トイレを安くリースしてもらい、 それと汲み取りで対応しました。 万が一の時のために、 近くの大阪ガスの施設の使用許可をとって運営しました。

 ゴミは隣接する大阪ドームの施設「パドゥー」に協力してもらい、 そちらに毎日捨てに行きました。 水面のゴミは毎朝大阪市の清掃船に取ってもらいました。

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電源
 公園なので電気がありませんでした。 そこで、 ゼネコンの方に趣旨に賛同してもらい、 発電機を借り、 照明、 音響、 厨房等の電力をまかないました。

 昼、 夜など多方面にもっていく配線工事も、 賛同してもらえた企業の方に協力してもらいました。

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照明
 夜のシーンにも力を入れていたので、 照明会社にデザイン協力をしてもらい、 照明機器も貸してもらいました。 手すりの下辺りの照明は、 すだれや裸電球などで自作しました。

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音楽
 空間を楽しんでもらうためには音楽も必要だと考えていました。 音響機器を借りて昼間はCDを流し、 夜間はボランティアでライヴをやってもらっていました。

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ライブ演奏
 スタート時には、 ライヴ演奏の段取りまでは準備できていませんでした。 しかし、 初日に来ていたお客さんの中にライヴ演奏ができる方がいたので、 直接交渉して初日からライヴ演奏をしてもらうことができました。 結果的には、 最終日までほぼ毎日、 様々な方にライヴ演奏をしてもらえました。 その背景には、 とても良い音響機器を借りており、 様々なジャンルの方に演奏してもらえる状態になっていたことがあると考えられます。

 

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パンフレット
 
 PRは万全ではありませんでしたが、 前売り券の発行やチラシの配布を行い、 さらにmeetsなどのいくつかの情報誌や市政だよりにも載せてもらいました。 また、 市政記者クラブにプレスリリースを行いました。 途中からは通りすがりの人たちの口コミでお客さんが増えていきました。

 研究会の中で、 安全対策についての問題も出ていました。 これは徹底しなければならないということで、 プロの警備員を一人雇いました。 また、 水難事故・食中毒に対する保険にも入りました。

 屋外の飲食施設であるため、 夜は交代で泊り込み、 スタッフが24時間常駐しました。

 お金については、 社会実験費用として100万円以内であれば研究会に負担してもらえるのではないかということでスタートしていましたが、 途中で100万円ではできそうにないことが分かってきました。 しかし、 我々も大分熱が入ってきていましたので、 『自分たちで払ってでもやろう』というように気持ちが変わってきました。 話が具体的になるにつれて、 多くのボランティアの方に協力してもらえるようになり、 経費を削減することができました。 またお客さんもどんどん増えていったので、 最終的にはかかった費用のほぼ全部を営業収入でまかなうことができました。 総事業費は三百数十万円でした。

 

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計画図
 
 リバーカフェの計画図です。 図の右側に岩松橋があり、 橋からは図上部の矢印のようにスロープを降りてアクセスできるようになっています。 台船は2隻あり、 大きい台船が8m×21m、 小さい台船が5m×13mとなっています。 大きい台船の真ん中あたりからお客さんが入ってくるようになっています。 歩道上にある店舗ブースで調理をしていました。 小さな台船には、 船で来る人のための桟橋が設置されています。 橋のたもとあたりに、 スタッフ用のテントと仮設トイレを設置していました。

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