4月に考案し10月に実施しましたが、 実施するまでには様々な問題点がありました。 その問題点をどのように解決してきたかを記録に残しておくことが必要かと思いまとめました。
大きく3つのポイントがありました。
1つ目は、 河川と公園という公共空間を使用・占用することに対する問題です。
2つ目は、 事業費をどのように捻出するかという問題です。
3つ目は、 台船をどのように係留するかという問題です。
その他にも、 保健所の営業許可をとることやデザインに関することにも多くの時間を要しました。
まず、 河川と公園を使用・占用するにあたって、 今まで河川空間が使われていなかった理由としては、 河川法の解釈の問題があります。 河川法の中に、 河川の敷地は基本的には誰でも自由に使えるべきだということがあります。 しかし、 これは逆に誰も自由に使えない、 占用はできないという解釈となり、 これがネックになっていました。
河川法では、 公共性があると判断されれば使用・占用が可能となります。 これを、 どのようにクリアするかが問題となりました。
また、 行政との協議の中で、 行政側の心配点として挙げられていたのが、 河川法の26条に、 一度工作物を設置してしまうと、 占用期間が満了してもその工作物の耐用年数が残っている場合には、 その移転は河川管理者が保障しなければならないという条文があるため、 安易に設置されて置きっ放しにされたら大変なことになるということでした。
これらの問題の解決方法としては、 まず、 公共性に関しては、 判断の基準を作り、 それを条件に河川の使用・占用を認めてもらえないかということで交渉しました。 実際には、 4つの条件を協議の中で決めました。 1つ目は、 地元団体と共同で実施するということです。 2つ目は、 非営利事業の社会実験であるということです。 3つ目は、 1年や2年という長期ではなく、 約2週間の暫定利用であるということです。 4つ目は、 結果的なものですが、 大阪府と大阪市に後援してもらうということです。 この4つの条件を満たすということで、 河川管理者である大阪府に公共性を認めてもらいました。 実際は、 大阪府も今回の社会実験に非常に協力的で、 基本的にこの社会実験を支援するという方向で考えていただきました。
条件の一つである地元団体と共同でやるということには、 我々も当初からこだわっていました。 最初、 北浜の方で実施しようと思っており、 自治会長さんも大賛成でしたが、 隣接する地権者から使われては困ると言われ、 そこでは実現しませんでした。
地元と一緒にやるということで、 今回の場所に決定した理由は2つあります。 1つは、 今回お世話になった山崎さんが中心となって活動している「川を生かしたまちづくり協議会」があったことです。 この協議会には、 地元の商店街や自治会の方も参加されており、 この地域団体と一緒にやろうと考えたことです。 もう1つは、 隣接する大阪ガスや大阪ドーム、 パドゥーなどの敷地を管理している「大阪ドームシティ開発協議会」が、 今回の社会実験の趣旨に賛同してくれたことです。
地元と一緒にやることにこだわった理由としては、 地元の方にその気があったら、 河川空間をこのように使えるのだという仕組みを伝えたかったからです。 例えば大阪には色々な河川がありますが、 その中で、 地元がやる気を出せば河川空間や地域の魅力を生み出すことができ、 逆に地元にやる気がないところは魅力が生まれないという、 地域間の競争という形で次につながっていくのではないのかと思います。
ビットや工作物の設置に関しては、 イベント終了時にちゃんと取り外すことを条件に認めてもらいました。
一般の人々が自由に通行できるように、 通行を妨害するものは置かないことや、 大阪海上保安監部からは、 ビットで係留することや、 船が通行できるように最低でも河川幅員の半分の幅だけ河川の中央部分をあけておき、 障害物は残りの4分の1内に収めること、 また、 船がぶつからないように夜間も照明をつけることなどを言われました。 それらについては、 デザインも含めてクリアしました。
ひとつ問題となったのは、 せっかくの水上カフェなのに船で乗り付けてはいけないといわれたことです。 理由をお聞きしますと、 メニューにはビールなどのお酒があるため、 飲酒運転をさせないために船で乗り付けさせないようにするためとのことです。 しかし、 船で乗り付けてもらわないとこのカフェの魅力は半減するということで、 もし船で来られたらお酒は出さないこととし、 船のアクセスも対応可能な状態にしました。
河川と公園の使用・占用について、 3つの手続きをとりました。 法的には、 河川の一時使用許可と河川及び港湾の占用及び工事許可の2つの手続きをとりました。 この2つは、 ビットはネジでコンクリートに固定されていて動かないものなので占用許可を、 それ以外の台船やテーブル、 テントなどの動かせるものを河川区域内に置いて使うためには一時使用の許可を受ける必要があるという違いがあります。 また、 法的手続きではありませんが、 港湾区域に入っているため大阪海上保安監部に、 また船運の安全を図る大阪水上安全協会にイベントの実施計画書を提出しました。
事業費の捻出に関しては、 想定していたよりも事業費がかかり、 またスポンサーが確保できなかったため、 非常に苦労しました。 しかし、 色々な方に格安な価格で協力していただいたり、 500円お得な2000円の前売り券を発行したりして、 事業費を最低限に抑えることができ、 始まる前になんとか100万円くらいの売り上げを確保することができました。
台船の係留については、 まず安全性が重要な課題でした。 もともとの台船には柵がありませんでしたので、 単管を溶接した支柱に、 自分達で船舶用のロープでてすりを二重に張りましたが、 万一に備えて警備員を雇って常駐してもらい、 保険にも加入しました。
干満対応については、 毎日2mくらい水面が上下するため、 予想以上に大変でした。 入り口を変えて入ってもらうなどの工夫をしました。
水面清掃については、 これも予想以上に大変で、 水草や木、 魚の死骸、 中には布団や犬の死骸も流れてきました。 清掃船の人の話によると、 人体も毎年20体くらい流れてくるらしく、 その20体のうち15体くらいが春の花見の時期に流れてくるそうです。 色々なものが流れてくるため、 我々が掃除しきれる量ではないということで、 毎日ご好意で清掃船に清掃してもらいました。
実施にあたっての問題点とその解決策
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