道頓堀遊歩道計画のコラボレーション
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2 遊歩道のデザイン提案

堤 肇(鳳コンサルタント環境デザイン研究所)

 

 鳳コンサルタントの堤です。 皆さんの個別提案を受けて遊歩道の最終共同提案をしましたので、 そのお話をさせていただきます。


現況整理

 
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デザイン検討区間
 
 本業務は、 大阪中心部を流れる道頓堀川の遊歩道とそこにかかる橋のデザイン計画です。 場所は皆さんもよくご存じだとは思いますが、 まず簡単にご説明させて頂きます。

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道頓堀
 川のちょうど南側の通りが道頓堀です。 かに道楽やくいだおれ人形でおなじみの飲食店が連なる非常に賑やかな通りです。

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宗右衛門町
 北側の通りは宗右衛門町通りで、 ここも飲食店中心に風俗なども入り込んでいる賑やかな通りです。

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松竹座
 通りには五座の1つの松竹座も残っており、 大阪を代表する文化の場でもあります。

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戎橋の夜景
 夜もグリコなどの大看板が並び、 川面に浮かぶネオンがとても綺麗で有名です。

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太左衛門橋→戎橋
 このように賑やかな所ですが、 川面に目をやりますと、 この写真のような感じです。

 この写真は丁度工事が始まった頃に撮影したものですが、 すべての建築が通り側に面していて、 川側を向いているような建築は一つもありません。 通りから川へ抜ける空間もありませんので、 都市の中に川を意識できるような空間は橋以外には全くない状況でした。

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道頓堀橋→新戎橋
 かつては川辺に緑地帯があったのですが、 この緑地帯には人が入れません。 店から見る風景などポイント的にしか水辺を感じる所がありませんでした。

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3/24の状況・戎橋→太左衛門橋
 これは同じ場所の昨日(2004.3.14)の状況を撮ってきた写真です。 幅員約8mの遊歩道を水辺沿いに整備して、 できるだけ店を川側に向けて賑やかな水辺のプロムナードを創っていこうと計画されています。


基本コンセプト

 
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基本コンセプト
 
 以上の現況を踏まえてコンセプトを考えました。 大黒橋から日本橋間を「賑わいあふれる劇的空間」というイメージで打ち出している上位計画を受けて、 かつての浪速の水辺がそうであったように、 建築と水辺が一体となって水都再生を目指すことを考え、 「なにわの水辺劇場の創出」「よみがえれ、 繁盛の堀」をコンセプトとして提案しました。 堀と建物の連携により、 商売繁盛の空間を再生することをテーマとしています。

 

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よみがえれ、繁盛の堀・ゾーニング図
 
 次にゾーニングですが、 今回の戎橋〜太左衛門間は170mあり、 それを大きく3つのゾーンに分けてそれぞれのテーマを設定しました。

 人通りの多い戎橋側を「にぎわいのゾーン」と設定し、 イベントステージや観覧場所をつくっています。 中央部は木陰で休んだりカフェテラスを設置できるような「休息のゾーン」、 東側の太左衛門橋付近はあまり何も作り込まずに広場的に使えるような「広場のゾーン」としました。

 基礎構造が幅8mの遊歩道の中で2段に分かれているという制約条件がありました。 このため遊歩道を上段と下段の2段とし、 段差の部分に入り隅・出隅の空間を連続的につくりました。 そこに、 ベンチや腰掛けともなる階段・カフェテラスなどの面白い空間を演出していこうと考えています。

 

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イメージプラン
 
 この図がJUDIで最終的に提案したプランです。 図の左下の部分(南西部)は、 段差のない大きな一枚盤のイベントステージとしています。 ここは丁度、 船着き場の横に位置し、 歌舞伎役者の船乗り込み興行にちなんだイベントもしかけることができる設定です。

 上下遊歩道の間に90cmの立ち上がりができるのですが、 コンセプトが堀ということですから、 この上段と立ち上がりの部分を石積みで造って、 重厚な堀のイメージを再現しようとしています。

 下段は軽やかな水辺イメージを出すため、 木製のデッキの遊歩道空間とし、 上段の遊歩道は滞留をメインとした空間ということにしています。

 

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高さ設定
 
 さて二段の遊歩道の高さ設定についてですが、 基礎の形状が決まっており、 その条件が遊歩道の高さ設定に影響しました。

陸側は基礎の高さの制約から、 OP+2.65m以上に設定しなければなりませんでした。 さらに防潮堤として必要な高さは OP+3.25mです。

また水面側は、 船の運航時の波の高さから、 OP+2.35m 以上の高さが必要です。

ですから水面から65cm上がったOP+2.35m が下段遊歩道、 そして防潮堤までの高さがそこから90cmという条件です。

 

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断面図
 
 この条件のもと色々な断面を検討した中、 この図が最終的に提案したものです。

 今回の遊歩道の目的の一つは、 背後の建築をいかに水辺に顔を出させるかということでしたので、 遊歩道高さは背後の建築から使いやすい高さ設定が必要です。

 背後の建築の高さを調べましたところ、 図の左側の道頓堀側と右側の宗右衛門町側で道路の高さが違いましたので、 おのずと地下のレベルが違っています。

 宗右衛門町側の建物は大改修か建て替えをしないと遊歩道には出られないという高さ関係でした。 それなら、 防潮堤としてOP+3.25mの高さが必要なわけですから、 上段遊歩道をOP+3.25mとし、 立て替え時に建築の床レベル3.25から段差なしで遊歩道に出られるように誘導しよと考えました。

 一方道頓堀側は地下のレベルが先述のOP+2.65mと同じレベルでした。 上段遊歩道をOP+2.65m にすれば防潮堤(OP+3.25m)の高さ60cmの壁越しに、 カウンターやテイクアウトのお店を出すことができ、 大規模な改修をしなくても川側に顔を向けることができます。

また遊歩道自体も上下段の段差が小さい計画にしたほうがスロープも短くなり、 平面的にも一体感が得られると考えて、 JUDIとしては上段遊歩道高さを、 OP+3.25m と2.65m の左右非対称の断面を提案しました。

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イメージCG・宗右衛門町側遊歩道
 これが宗右衛門町側の90cmの段差の遊歩道です。 入り隅に階段を設けたり、 ベンチを置いて滞留部分を設ける計画になっています。

 上段の遊歩道は掘をイメージさせるような石張りになっています。

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イメージCG・道頓堀側遊歩道
 こちらが道頓堀側の30cmの段差の方で、 見て頂いた通り高低差が小さいので遊歩道にひろがりが出ていることがわかって頂けると思います。

 このような提案を行ったのですが、 JUDIとしても説明不足もあったかと思いますが、 地元の方にはなかなか非対称の良さは理解されず、 結局両岸ともOP+3.25m を上段遊歩道高さとし、 現在施工が進んでいます。

 今回この断面高さの話を長々とさせて頂いたのは、 この左右非対称断面構成のJUDIの考えをぜひこの機会に発信しておきたかったからです。

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イメージCG・戎橋から太左衛門橋方向を見る
 これが最終プランのイメージです。 これは戎橋から太左衛門橋方向を見た完成予想図です。 戎橋の袂には、 段差のない大きな一枚盤とし、 カフェテラスを設けています。

 今回は戎橋〜太左衛門橋間の170mの計画をしたわけですが、 今後はこのコンセプトをさらに東西両側に広げていくということで遊歩道を計画しています。

 それでは、 引き続きディテールについて長谷川さんからお話頂きます。

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