道頓堀遊歩道計画のコラボレーション
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

 

4-2 太左衛門橋のデザイン

江川直樹(現代計画研究所)

 

 ではこれから、 実際に検討したことを報告します。


イメージを形にする

画像eg04
JUDI参加以前の橋のイメージ図
 私が見せてもらったパースの絵の中には、 屋根付き、 屋根無しなどいろんな絵があったのですが、 とりあえず屋根付き橋の可能性を探ろうということになり、 その設計作業を始めることになりました。

 そもそもJUDIが参加する前の絵は、 このように真ん中に現況の橋があって両側に観覧席や舞台のようなものが付いている案でした。 それがいろんな検討の結果、 中村さんのお話にあったように、 太鼓橋と屋根が付いた木造の橋というイメージになりました。

画像eg07
構造図
 もともとの橋の橋梁部分は鉄とコンクリートで出来ています。 しかし、 先ほどから話に出てきたように芸能をイメージした橋にするなら職芸も芸のうちですから、 橋梁の上の部分は日本の伝統的な技で日本の木を使って本格的な木組みの橋を作ってみようということになりました。

 その後、 いろいろな構造計算をしてみました。 基本的にはフレームだけで持たせるわけですから、 ラーメン構造としています。

画像eg08
設計イメージ図
 橋のこの部分(支柱、 端の縦断方向)は真っ直ぐではなく、 神社の鳥居にも見られるように少し反った形になっています。 橋梁とその上の取り付けはボルトですが、 その上部は完全に木造です。 太鼓橋部分もウッドデッキの延長で作りました。 実際に板を張っていくと、 太鼓橋から下りる階段と踊り場的なものができて、 遊歩道につながる構造になります。 これはそんなに難しいものではありませんから、 設計もすぐにできました。 プロポーションもいい感じです。

 この時は、 もともとあった橋の桁は真っ直ぐな箱桁の形でしたが、 太鼓の形に合わせた桁にしても問題ないことも検証しました。 細かい部分の納まりなどもこの時に考えています。

画像eg10
全体イメージ図
 最初の絵では両端が道路とつながっていたのですが、 最終的には完全に分けています。 太鼓に合わせて屋根も横断的にも縦断的にもむくった形にしましたが、 物理的にも施工も問題ないことをチェックしています。


設計条件が変わって、 挙げ句、 作らないという話に

画像eg12
模型
 ところが検討していく最中に、 前提条件がどんどん変わっていったのです。

 木造だから鋸で切られたらどうするんだとか、 火事が心配だとか、 隙間があきすぎ、 橋から飛び降りる人がでるんじゃないかなどいろんな事を言われました。 それに対して、 いちいち真面目にこうすればいい、 ああすればいいという対応を担当者レベルではやっていました。

 そのうち、 屋根無しの方がいい、 シンプルな形の方がいいという意見が出たとも聞いています。 (その時は、 検討中の案は見せていないようで、 一般的なイメージの話だけだったようですが。 )ですから、 この模型を見せるかどうかでけっこう揉めていました。 例えば屋根部分を仮設にして、 天神祭りの時だけ付けるようにできないかと言われ、 その検討もしました。 それについては、 伝統的工法の継ぎ手と仕口でつないだ屋根ですから、 取り外し可能なシステムになっているから可能ですよとお答えしました。

 もし市民の皆さんが欲しいなら市民のお金で作ればいいじゃないかという結論になったようで、 当初の橋としては足元のディテールなどはこういう太鼓橋や屋根付きもできるという構造にしておくということになりました。 各地にある屋根付き橋は公共が作ったというより、 周辺の民間企業などがお金を出して作るものだからという考え方が背景にあったように聞いています。

 それはそれとして、 我々は一生懸命この作業をやっていまして、 実際にどんな問題が起こりそうか、 それを解決する手だてはあるかという議論を延々とやっていました。


それでも形をまとめる

画像eg17
イメージ図
 軸組みにはいろんな出っ張りが見えますが、 これが伝統的な継ぎ手と仕口とくさびによる組み方です。 全部木でできています。 こうして絵にしてみると、 プロポーションも高いからじゃまにならないし、 けっこう抜けている(空いていて開放的)感じもするという話が出ました。

画像eg22
照明の見せ方
 照明もどう見せたら奇麗に見えるかという話し合いをしました。 ライトアップして橋の外部を見せるべきか、 橋の内部を見せるべきか、 下部分を明るくした方がいいのかなどいろんな検討をしました。 今この形を作らないにしても、 将来できたときのためにどんな準備をしておけばいいのかの検討はしているわけです。

画像eg25
天神祭りのときのイメージ
 天神祭りなどのイベント時には、 屋根の下の軸組みの間に、 2mぐらいの巨大な提灯が入れば、 最初に中村さんがイメージした絵になるんじゃないかと思います。 実際にはこれ(軸組みも屋根も)がない形で作るそうです。 市民がこの形が面白いと思えば作ることは可能ですが、 今のところ積極的に作る気配はありません。

画像eg27
その他のアイデア
 その他に出た意見としては、 橋の途中に仮設でこういう簡単なお祭りステージを造ればいいという案もあり、 その検討もいたしました。

画像eg28
屋根がない橋の模型
 結局屋根は作らないということになって、 常に流動的な条件の中でそのつど模型を作りました。 そのうち、 太鼓橋の勾配がきつすぎて安全性に問題があると言われて、 段々と太鼓部分がゆるくなるなど形が随分変わってしまいました。

画像eg30
イメージ図
 段差についても警察が危険だとクレームをつけたようで、 いろんな事をさらに言ってきているようです。 一番最初に中村さんが示されたフラットなものになる可能性もあると聞いています。 いずれにしても、 まだこの検討は終わっておらず、 現在も流動的に条件が変わる中でやりとりを続けている最中です。

 最後に、 JUDIのみなさんにお願いしたいのですが、 屋根の有無やデザイン全体についてみなさんの率直な意見をうかがえれば嬉しく思います。

 以上で私の報告を終わります。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ