ここからは、 同じく中之島で行ったプロジェクトとそれ以外の日本でのペリ事務所の仕事について紹介していきます。
まずは民間のプロジェクトである中之島三井ビルディングについて。 1998年にコンペが行われ、 私たちはデザインアーキテクトとして日建設計さんと一緒に仕事をしました。 3。 中之島三井ビルディング
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壁面の縦に石の柱を通すことで、 ファサードに表情を作り出しました。 3600ピッチの間隔で間柱がずっと上に上がっています。 低層部の柱は前方にぐっと突き出ています。 それが上に行くほど7段階で後方に下がるようになっていて、 上層階になるとガラス面よりも後方に柱が下がっています。 ガラス面は同じ面にあるのですが、 柱面だけが後方に下がっていくことで上に登ってゆくような軽快さと光進性が出ています。 また、 窓から下の腰の部分(スパンドリル)は、 外から見て下の方は石です。 上層の方はガラスだけで構成しています。 これも下から上に向けて空へ抜ける表情をつくり出しています。 それに加えてステンレスの庇、 ルーバーとタテのロッドが交さくして、 織物を編んだような表情を見せています。 これはメインテナントである東レ大阪本社のビルとしても大変好評だったデザインです。
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基本設計時の1階内部パースです。
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実際に出来上がった様子です。 1階にはスターバックスコーヒーとコンビニが入っています。 このビルが出来たことで、 南北の人の流れが増えずいぶん変わってきたように思います。 これも川と川をつなぐことが出来た一例だと思っています。 なお、 基本設計の時は光天井がもっと南面に出っ張ったもの(南とは写真の奥へですが)だったのですが、 それはさすがにテナントビルとして貸しにくくなるということで光天井は真ん中あたりで終わっています。 しかし、 その趣旨は十分達成できたと思っています。
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ステンレスに光が当たって外装が光る様子です。 下の方から上を見上げると、 柱が後方へ下がっているのが見えるかと思います。 そうすることで、 上の方へ伸びてゆく感じに仕上がりました。 このプロジェクトで一番大きな議論になったのが、 ステンレス外装でした。 民間プロジェクトはコストを厳しく抑えるのが常識で、 外装サッシをオールステンレスで提案したところ、 技術部門から「いい素材だが、 もらい錆と埃が付きやすくメンテナンスが大変だ」と指摘されたんです。 それ以外にも、 アルミに比べたらやはりコストアップになるなど色々な課題がありました。 しかし、 アルミだと30〜40年で劣化してしまうんです。 百年先にも残るビルということを考えると、 ステンレスの方が強い素材だと提案し、 最終的にはクライアントがステンレスでいこうと決断してくれました。 また、 出来上がったものを見ると、 アルミとステンレスでは光り方が違うんです。 百年建築を目指したひとつの回答と言えるでしょう。
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ルーバーは熱負荷を減らすために取り付けた庇なのですが、 シュミレーションでは30%以上負荷熱をカットできると出ました。 このディティールにしたのは、 大阪では滅多にないでしょうが大雪の時積もった雪が下に落ちないようにするためで、 何度も実験して形を決めました。 また、 このロッド(棒)はみんな楕円形をしています。 超高層では風切り音の問題が発生しがちですので、 これも何度も実験した上で楕円形にしました。 楕円形に決定したきっかけが面白いものでした。 誰かが雑談の中で「新幹線のケーブルは楕円形になっている。 それが風切音を防いでいるんじゃないか」と言ったのがヒントになり、 じゃあ次の実験は楕円にしてみようとやってみたら風切り音が出なくなったんです。 もちろん実際の工事は大変なものになりましたが、 こうしてルーバーは楕円形のロッドを組み合わせたものになっています。
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