海外建築家の日本での仕事
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5。 建築と環境の調和について考える
--九州大学新キャンパス

 

 九州大学の移転計画です。 九州大学のメインキャンパスは現在空港に近い箱崎という場所にあるのですが、 福岡市の西の佐賀に近い山の中の220ヘクタールの敷地に、 医学部を除く全学部が移転することになりました。 国立大学はみな地方移転が進んでいますが、 これもその流れのひとつで、 マスタープランを三菱地所設計と、 三島設計事務所そしてペリ事務所の三者JV(MCM設計共同体)が担当することになりました。

 この九州大学のプロジェクトの時考えたことは、 建てること自体が自然環境に負荷を与えることになってしまうことです。 ペリは敷地を見に行ったとき「できれば必要な所のみを造成するが良いのでは」という言い方をしました。 豊かな自然が残されている場所に建てることに対して、 建築家は難しい立場にあると思いました。 ただ予算上の問題やら様々なシステム上の制約もあり造成は一気にしてしまうことになり、 マスタープランを考えるにあたって、 自然環境への負荷をいかに減らすかが一番大きな課題でした。


オーガニックなマスタープラン

 
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マスタープランの全体CG
 
 施設の延床面積全体が50万m2という非常に大きなプロジェクトになります。 最終的には20年以上かけて完成する予定ですが、 まずはそれを220ヘクタールの中にどう置いていくかを考えることからスタートしました。 当初は真っ直ぐなものをクラスターっぽく置いてみたりもしていたのですが、 最終的には山の尾根を復元するようなオーガニックな形のマスタープランになりました。 いろんな先生方の助言もいただいた結果で、 良い形になったと思います。 50万m2の建物を尾根に沿った形で自然の中に埋めていくオーガニックなマスタープランです。

 具体的には、 今まで学部や学科ごとの縦のかたまりごとになった組織を、 横の連続したつながりで行くべきだというアカデミックプランにもとづき形態を決めてゆきました。

 またもうひとつの考え方は、 自然環境や歴史環境をなるべく傷つけないことです。 この山には百何カ所もの古墳がありましたので、 それを避けて建設できるようにしました。 まさに自然や歴史とどう関わるかを考える必要がありました。


キャンパスの主役は学生

 最後に一番大切な考え方として、 この新キャンパスの主役は学生だということをプロジェクトの軸としました。 研究・教育棟はそれぞれ8階から12階の建物ですが、 1階の地上階は出来る限り学生に開放できるよう考えました。

 

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研究・教育棟の構成
 
 研究・教育棟は大学院大学になるのですが、 その構成は北側にラボ・ゾーンとして実験施設を、 真ん中はセミオフィス・ゾーンという呼び方をしていますが日常院生の居場所として使います。 そして南側の日当たりのいい場所(オフィス・ゾーン)に教授たちのゾーンを設定いたしました。 力のある先生ならラボ・ゾーンをひとコマではなく複数取れるような競争の原理も働かせてもらおうと考えました。

 また低層部はキャンパス・モールとして学生達に全面的に開放しています。

 
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北側ファサードの模型
 
 現在は1期工事が進んでいて、 工学部の研究・教育棟が建ち上がっている最中です。 こんな風にうねった形が連続する計画です。

 1棟目は私たちが実施設計したのですが、 もう1棟はPFIといって民間が設計・施工・運営するシステムで進められています。

 
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ファサードのスタディー模型
 
 大学には当然建築学科があり、 その先生方の目から見ると我々は学生に毛が生えたぐらいにしか見えなかったのでしょう。 「お前達、 模型は百個は作れ。 何回もスタディした中から決めてこい」と言われ、 いろいろ先生方に評されながら作業を積み上げていきました。 結果的には、 大学のディグニティー(威厳)をどう出していくかを、 多くの模型でスタディして最終的な形を決めました。

 
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工事中の写真
 
 ちょうど建物が建ち上がってきたところです。 見晴らしはとても良い場所で、 上の方に上がると博多湾が見えますし、 その向こうに百道地区の福岡タワーやシーホークホテルまで見通しがききます。 敷地では、 これからどんどん建っていく状況で、 第1期で来る学生さんはまだ完成してない状況ですから気の毒ですが、 20年後には素晴らしいキャンパスに仕上がっているだろうと思います。

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