以上のような環境を踏まえた上で、 和歌山県のまちのデザインを考えるためには、 まず、 計画やデザイン、 まちを整備することの良さと必要性が理解され、 支持される必要があると思います。
今日のセミナーのキーワードのひとつは「歴史や自然と向かい合ったまちのデザイン」です。 しかし、 地域の人が歴史や自然と向かい合って、 それらを大切にしているかというと、 一般的にはそうではありません。 歴史や自然を活用していかなければ、 その地域の生活は成り立たないのではないでしょうか。 したがって、 歴史や自然を環境財や地域の大切な財産として活用していくためには、 まず生活財や生産財として考えていく必要があると思います。 生活財・生産財という考え方を提案していき、 それを理解、 支持してもらう必要があると思います。
しかし、 仮に理解され支持されたとしても、 それを実現するだけのエネルギーはなかなか生まれてきません。 天神崎のナショナルトラスト運動は、 バブル期の天神崎付近の別荘地開発構想に対し、 天神崎の景色は田辺のシンボル的な存在なので残していきたいということで始まりました。 しかし、 開発業者は残したいのならこの土地を買い取って欲しいということで、 結局この土地全体を買い取る方向で解決を目指していくことになりました。
非常に苦労しながら募金活動をして、 徐々に買い取っているわけですが、 そのようなエネルギーや買い取るだけの資金がなかなか集まらないのが現状です。 この地域の中で募金活動が十分に広がるよりも先に、 外の地域に募金活動の輪が広がっていきました。 具体的には、 松下幸之助さんにも募金をお願いしています。 本来は天神崎保存のための募金活動のエネルギーは、 地元でもっと広がるべきだったと思います。 このことが、 その後の田辺市のまちづくりに影響を与えているところもあると思います。
デザイン的にも良いと思われる提案は沢山ありますが、 それを実現するのはなかなか難しいわけです。 実現に向けたエネルギーをどのようにつくっていくか、 さらに、 そのエネルギーをどういう方向に働かせるかということが次に考えていかなければならないことだと思います。
理解と支持を得るためには
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