さて、 緑条例ですが、 緑条例には「地域レベルの計画」と「地区レベルの計画」の2つの制度があることを憶えておいてください。 最初に、 地域レベルの計画について説明します。
この条例の目的は、 (1)適正な土地利用、 (2)森林等の保全と緑化の推進、 (3)優れた景観の形成を図ることで自然的環境と調和した潤いのある地域社会の実現を目指すこととしています。 制度としては、 開発行為の規制誘導を行っているわけで、 そのためにゾーニング(区域区分)とガイドライン(土地利用指針、 建築指針、 緑化指針)を定めています。
参考:緑条例ガイドライン (PDFファイル)。
歴史的な町の区域、 まちの区域、 さとの区域、 森を生かす区域、 森を守る区域の5つに区分しました。 面積構成は、 歴史的な町0.5%、 まち2.4%、 さと20%、 森は合わせて77%となっています。
実務的には、 この絵を描くのはなかなか骨の折れる作業です。 他の計画との調整もありますし、 関係業界の方や一般の方の反対意見、 賛成意見にも配慮しながら作成することになります。
◆(1)立地制限、 形態制限
この△印であるということが重要なポイントです。
これを都市計画の線引き制度で行うとどうなるでしょうか。 まず、 まちの区域(=市街化区域)がこれよりも狭い範囲に限定されると考えられます。 そのうえで、 さとの区域(=調整区域)の開発や建築は原則的に×になってしまいます。 農村空間を凍結的に保存していくという方向性です。 しかし、 実際に農村空間を保全していくためには、 そこに人が住み、 都市との交流などを通じて活力を持ち続けなければなりませんから、 さとの区域でも一定の開発は必要なのです。
そこで△になる。
昨年、 ゾーニングとガイドラインを見直したのですが、 それまでは、 この△が○に近かった。 見直しまでの8年間に約400件の開発があり、 そのうち約8割がさとの区域の開発でした。 先日、 丹波にいるスタッフが報告してくれたのですが、 見直し後、 さとの区域の開発は全体の35%だということです。 まだ1年足らずでデータ数が少ないことですし、 個別の分析も必要かと思いますが、 35%という数字はよい加減かと思われます。
では、 次に問題となるのは、 一定の開発を認める(△)として、 どのような開発を認めるのか、 どのような制限を設けるのか、 という問題です。 これについてはガイドラインで定めています。 まず、 立地制限と形態制限について説明します。
2 緑条例の概要
地域レベルの計画
丹波では、 地域づくりの理念として、 平成元年に「丹波の森構想」が策定されました。 そして、 この構想を実現するための制度として、 平成7年に緑条例を施行しています。
これが丹波のゾーニング図です。
それぞれの区域には区域の整備方針を定めてあり、 例えば、 まちの区域は「開発を誘導して計画的に市街地を整備」する区域、 さとの区域は「集落と農地が形成する田園環境を保全」する区域といった具合です。 歴史的な町の区域には、 篠山市の福住・安口地区、 八上地区、 篠山城周辺地区、 古市地区、 立杭地区、 柏原町の城下町周辺地区、 青垣町の佐治地区の7地区を指定しています。
しかし旅行をして居るうちには、 別にここという中心も無いような、 村の風景に出逢うことが段々に多くなる。 ………斯ういう茫として取留めの無い美しさが、 仮に昔のままで無いとわかって居ても、 之を作り上げた村の人々の素朴な一致、 たとえば広々した庭の上の子供の遊びのような、 おのづからの調和が窺われて、 この上も無くゆかしいのである。
さて、 今日は『美しき村』がテーマですから、 さとの区域の話ということになります。 まちの区域は開発が可能ということで◎を付けていますが、 さとの区域には一定の制限があり△印になっています。
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先ほど見ていただいた篠山市の高城山を望む風景。 季節が変わりました。
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その反対側を見るとこうなっています。 向こう側の都市的な土地利用と手前の農地としての土地利用が明確に区分されているのが分かります。 こういうメリハリのある土地利用が望ましいと考えます。
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ところが、 場所によっては、 こうした都市型のミニ開発が農地のなかに虫食い状に広がりつつあります。
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この写真は丹波ではありません。 丹波には、 現在、 このような大型のマンション、 背の高いマンションはありませんが、 仮にこのようなサイズの建物が出来たとすると、 それは丹波の財産にはならないのではないか、 といった議論をしました。
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やはり、 丹波の(さとの区域の)基本的な姿はこのようにあるべきでしょう。
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宅地面積250m2以上……これは小規模な宅地分譲を制限しています。
ただ、 このような基準だけで一律に決められないケースも考えられます。 周囲からは目立たない場所なので、 これらの基準を満たす必要がない場合もあるでしょうし、 高さや床面積の基準を満たせないけれど、 どうしても地域に必要な施設もあるでしょう。 伝統的な様式には合致しないけれども芸術性が高く、 空間への収まりがよい建物があるかも知れません。 こうしたケースのために個別審査の道も残しています。 緑化修景を十分に施すことなどについて協議を整えたうえで、 開発を認めていくことになります。
◆(2)緑化
そうすると古い親しみを忘れず、 甲の家でも乙の家でも、 片隅に芽生えたものだけはそっとして、 其成長を見守って居たのが、 やがてはそれぞれに程よい配置に就いて、 斯うした珍しい村の相貌を、 形づくることにもなったかと思われる。 歳月と生活とが暗々裡に、 我々の春の悦びを助けて居たのだということは、 性急な改良論者のもう少し考えて見なければならぬ点であろう。 土地と樹木との因縁は、 我々などよりもずっと深く根強く、 したがって又ゆっくりとして居る。
『美しき村』
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この写真では、 コンクリートブロックと土羽の法面の違いを見てください。 さとの区域のガイドラインでは、 造成面はこちら(土羽)を用いるように定めています。
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地域レベルでは、 用途の基準は設けていません。 建物の高さと床面積、 敷地面積、 緑化に関する基準を設けています。 また建物の意匠等については抽象的な表現の基準となっています。 これに対して、 地区レベルでは用途や建物の意匠などについても具体的に定めることができます。
地域レベルの計画が地域全体の基本的なルールを大雑把に規定しているのに対し、 地区レベルの計画は、 その詳細計画となっています。 地区独自の細かいルールを定める訳です。 そして、 地区レベルの計画が出来ますと、 地域レベルの計画より優先する仕組みになっています。
なお、 神戸市、 穂高町(長野県)、 真鶴町(神奈川県)のまちづくり条例も、 同様に、 2層の計画レベルを持っています。 ただ、 地域レベルの計画において用途の基準を定めているところが緑条例と異なっています。
地区レベルの計画
緑条例には、 集落などを単位として、 住民が主体となって計画づくりを行う制度があります。 例えば、 さとの区域で新たに都市的な土地利用を行いたい場合、 図のように、 周辺を緑で修景しながら開発区域を設定といった計画や独自の基準を作って、 認定を受けることができます。
このように、 地域レベルの計画が行政主導であるのに対し、 地区レベルの計画は住民主体です。 地域レベルでは、 500m2以上の開発行為(建築目的で行う造成行為等)が対象となりますが、 地区レベルでは、 全ての開発行為、 建築行為が対象となります。
これは、 平成9年に篠山市の野中地区で策定された地区レベルの計画(里づくり計画)です。 野中地区は篠山市の中心市街地のすぐ南側に位置する集落で開発圧力が高い地区でした。 商業施設が立地できる特定区域、 住宅開発を認める集落区域、 開発を制限する保全区域、 農業区域を定めています。
この区域ごとに用途別の○×表を作っています。
計画策定前の航空写真と最近の航空写真を見比べると、 計画図どおりの土地利用が実現されつつあることが分かります。
地区の公民館の前には、 計画図が表示してありました。 特定区域にはコンビニなどが立地しました。 集落区域では宅地開発が進んでいます。
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