船場を読み解く
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

 

これからの船場を考える基本的な考え方

 

空間を紡ぎ直す

 このような経緯で船場の街が形成され、 また変化していったわけですが、 大都市の改造は一挙にはできません。 時代性を反映しつつ、 都市改造や市街地更新が徐々に展開していくわけですが、 その過程においては、 歴史的な背景についてもきちんと考えていかなければなりません。

 そのためには「空間をより適切な形で紡ぎ直す」ということをまちづくりの基本にしておく必要があるのではないかと思います。

 そして、 それができた都市が、 歴史的な都市の魅力を継続させ、 さらに形成できるというわけです。

 そういう点についてはパリでは100年以上前、 19世紀末期に改造を行い、 その後はあまり変化していません。 改造によって変化した部分と、 改造以前の街が、 共存しているのです。 それが現在のパリの魅力になっていると思います。


継続性のデザイン論

 では、 具体的にどうやっていけばいいのでしょうか。

 これはなかなか難しく、 皆さんのお考えをお聞きしたいところでもありますし、 実際の事業の中でも様々な試みが行われていると思いますが、 ここでは参考となる理論として「継続性のデザイン論」をあげておきます。

 これはアメリカ等では「コンテクスチュアリズム(文脈主義)」といわれています。 空間デザインを、 歴史的あるいは都市的なコンテクスト(文脈)のなかで捉え直そうとする試みであり、 環境への愛着や生活感覚を重視したデザイン論です。

 またもう一つの流れとして、 イタリアを始めヨーロッパで広まった「類型学的・形態学的なデザイン論」があります。 こちらは、 一定の敷地パターンをもった市街地には、 一定の類型化ができる空間構成が存在しており、 それを存続させるように建築更新や新たな建築の建設を行うべきであるという考え方です。

 今、 世界中で都市の再生が重要な課題となっていますが、 歴史的な都市の価値をもっと見直さなくてはいけないという論調がヨーロッパ等では強まっているという事をここでご紹介したいと思います。

     
     「イギリスや世界の多くの地域では、 街の伝統性が再び注目されている。 〈中略〉。 何より信頼の基調となるものは、 時間の流れにより濾過され、 より魅力的で、 より機能的な、 伝統的な市街地の形態である」。
     David Rudlin & Nicholas Falk "Building the 21st Century Home: The Sustainable Urban Neighbourhood"。 Architectual Press. 1999。
 
 
     
     「プランナーは〈中略〉、 多様な用途がミックスされ、 文脈を形成すべきだと言っている。 もっとも彼らのいう「ミックス」とは、 現実の土地に時間をかけて自然に成長したものではなくて、 ショッピングモールのつくりかたに似た公式からできあがったものであり、 「文脈」とは蓄積ではなく建替のことなのだ」。
     ロバータ・B・グラッツ著、 林康義監訳『都市再生』、 晶文社、 1993。
 
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ