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近代建築物の寿命

 

 

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近代建築物の消滅時期(126件)
 
 今ざっとご覧頂いた近代建築物のうち消滅した126件について消滅時期をグラフにまとめてみました。 こんなにきれいな形になるとは思わなかったのですが、 経済が発展していった高度成長期には徐々に取り壊される建物の数が増えてきて、 ピークでは5年間に30件以上が潰されています。

 その後バブル崩壊で地価が下落し始めると消滅する建物の数が少し減ってきました。

 

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消滅した近代建築物の寿命(126件)
 
 次に建設時期から消滅時期を差し引いた、 いわゆる「近代建築物の寿命」を集計してみますと、 126件についてですが、 よくもって70年という結果になりました。

 これが長いのか短いのか、 他の都市と比較してみないとよくわかりません。 とはいえ大阪大学の環境工学科の建物がすでに40年近いと思いますから、 あと20年くらいで仲間入りができるというわけです。 ですから、 それほど古い建物とも長生きした建物とも言えないのではないかと思います。

 近代建築物の寿命を地区別にみますと、 北浜から高麗橋、 伏見町あたりに古い建物が多く、 南の方に行くと明治時代などに造られた建物は少ない事がわかりました。


長寿命ベスト3

 
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小西平兵衛邸〈現ぎゃらりーほそかわ・登録文化財〉
 
 さてこれらのうち長寿の建築物ベスト3が、 あのボンドのコニシの小西平兵衛邸で築後122年くらい経っています。

 ところで先ほどお断りしていなかったのですが、 近代建築物のリストに欧風の建物ではないものも含まれていました。 ランクインした中にこのような和風の建物が多く存在します。

 
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すし万
 
 一位は同着なのですが、 すし万という建物で明治初期に建てられたということです。 今では129年になっています。

 
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イケマン
 
 ここまで二つとも和風建築ですが、 もう一件の同着一位も同じくです。 イケマンという建物です。 実際の建物の写真を見ても、 看板やビニールの屋根、 自販機が目立つため、 どのあたりが127年なのかよくわかりませんでした。


短寿命ワースト3

 
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大日本紡績(現大阪国際ビル)
 
 さて今度は逆に寿命の短かった建物をご紹介します。 こちらは立派な建物が多いようです。

 ワースト3は、 安土町にある大日本紡績という紡績会社の建物で、 今の大阪国際ビルの建っている所にありました。

 これもいわゆる角地に立派な建物を建て、 エントランスもカドに造るという型式で、 たった38年でつぶされたというのはもったい。

 
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第2野村ビルディング
 
 同着で、 第2野村ビルディングという建物が1935年(昭和10年)頃に造られ、 38年でなくなっています。 こちらの設計は意外なことに安井武雄氏で、 施工は竹中工務店です。

 この平凡な建物が安井氏の設計というのは不思議ですが、 どうも下の辺りに黒い石を貼っているあたりが、 なんとなく大阪ガスビルに似ていなくもないかという気がします。

 なくなったビルは7階建てなのですが、 今は同じく第2ノムラビルという名前で9階建ての建物が建っています。 前の7階建てに建て増したようなデザインで、 私は別の建物だと判断したのですが、 ひょっとしたら改修しただけなのかもしれません。

 
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竹中商店大阪支店
 
 寿命が一番短かったのは28年で、 竹中商店大阪支店という建物です。 非常にきれいなデザインで、 今こういう建物が建ってもおかしくないんじゃないかなというくらい、 美しい建物です。 設計は長谷部竹腰建築事務所、 施工は藤木工務店です。

 これは今の船場中央、 船場センタービルの前に建っていた建物です。 35年頃造られて63年頃になくなっています。

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